日本人の失明原因、ダントツ1位は「緑内障」…早期発見が鍵

目の病気は誰だって怖いもの。年齢を重ねれば、老眼や白内障なども始まり、視力の衰えをよりいっそう感じることでしょう。「年だから仕方がないか…」と、納得してしまいそうになりますが、思わぬ病気を発症している可能性に、気づいているでしょうか。本連載では、はんがい眼科・板谷正紀院長の書籍『「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋して、眼病の知識をわかりやすく解説します。

視神経が傷つき、脳に情報を送れなくなる「緑内障」

緑内障は日本人の失明原因の第1位です。24.6%、すなわち失明された方の4人に1人は緑内障なのです。緑内障が怖いのは痛くも痒くもなく症状が進行していくからです。

 

網膜にある視神経乳頭と呼ばれる部分が障害を受け、視野の一部に見えない部分(暗点)ができていくのが緑内障です。視野が欠けるのですから、その時点で気付きそうなものです。ところが人間の目はうまくできていて、左右の目で視野を補い合うので、かなり視野が欠けても気付きにくいのです。

 

緑内障の原因のひとつは眼圧が高くなることですが、日本人ではむしろ眼圧は正常(基準値の10~21㎜Hg)なのに緑内障を発症している人の方が多い。こうした人は生まれつき視神経が弱いので、基準値より低い眼圧でも神経が圧迫され緑内障の症状がでるのだと考えられています。

 

その一方で眼圧が基準値をはるかに上回っている人でも、視神経乳頭が傷つかず緑内障を発症しない人もいます。これは高眼圧症とよばれています。ただ高眼圧症の場合も、将来緑内障を発症する恐れが十分にあるので、点眼薬などで眼圧をさげる必要があります。このように、どれくらいの眼圧で緑内障の症状がでるかは、人によって違うので、眼圧が低いからといって安心はできません。

 

◆緑内障は下り坂のレールに乗った電車

 

もうひとつ緑内障の怖い点をあげると、一度傷ついた視神経は二度ともとにはもどらないという点です。

 

最近のカメラはCCDとよばれるイメージセンサで画像をデジタル信号に変換していますが、網膜に分布する神経線維もこれとほぼ同じ働きをしていると考えられています。CCDは画素と呼ばれる光を感じる素子が無数に集まっています。緑内障はこの画素で受けた信号を送る線(神経)が切れ、信号を送れなくなった状態と考えてください。百万個以上もある画素のうち、ひとつや二つが切れても最初は気がつきませんが、何十万個も切れてくると、さすがにまともな画像は結べなくなります。そこでこれは視野が欠けてしまうわけです。

 

しかし、その時点でできることは少しでも眼圧を下げて、残された画素(神経)が、それ以上切れてしまわないようにすることです。私はよく緑内障を「下り坂のレールに乗った電車」にたとえることがあります。一旦視神経が傷ついたら下り坂のレールに乗った電車と同じです。動きはじめたらとまらない。終着駅は失明です。ですから失明という終着駅に着いてしまわないように一生、ブレーキをかけ続けなくてはいけないのです。このブレーキが眼圧を下げる目薬による治療なのです。

 

眼圧を下げる目薬をさしても十分に眼圧が下がらなかったり、下がったけど視野の狭窄が許容範囲を超えて速く進んでいけば、より強いブレーキである緑内障の手術も考えなくてはなりません。緑内障になったら、目薬をさしたり眼圧をはかったり、視野の検査をするなど、一生治療と検査を受け続けなければなりません。それには膨大な治療の時間と費用がかかります。だからこそ、視神経乳頭が傷つく(=緑内障になる)前か早期の障害の間に検査をうけて手を打つことが大切なのです[図表1]。

 

[図表1]眼圧が上がると視神経が圧迫される

 

◆眼球から「水」がでにくくなると眼圧が上がる

 

緑内障には眼圧が上がるタイプとそうでないタイプがあります。以前は眼圧が上がって緑内障が生じると考えられていましたが多治見スタディー(1988~1989年)の結果、日本人は眼圧が正常な緑内障(正常眼圧緑内障)の方が眼圧の高い緑内障よりもはるかに多いことがわかりました。

 

正常眼圧緑内障は進行が緩やかな場合が多く、一方眼圧が高い緑内障は眼圧が高ければ高いほど進行が速くなります。すなわち、眼圧が上がるタイプでは、急いで眼圧を下げることが必要です。

 

緑内障治療の原則は、眼圧上昇の原因が明らかな場合は、治療の第1選択としてその原因を解除することです。原因不明の緑内障を原発開放隅角緑内障といいますが、この場合は緑内障点眼が第1選択になります。原因があるのに原因を解除せず緑内障点眼治療だけを行うとどんどん悪化するリスクが高いのです。

 

ではそもそも、なぜ眼圧は上がるのでしょうか。

 

眼球は房水と呼ばれる水分で満たされています。房水は虹彩の付け根の裏側にある毛様体という組織でつくられます。眼球の中を循環した房水は、水晶体と虹彩の間をとおって角膜と虹彩の間(前房)にたまります。そして前房の隅(隅角)にある線維柱帯を通過してシュレム管という器官に入って排出されます。この線維柱帯から房水が排出されなかったり、排出されにくくなると眼圧が上がるのです。線維柱帯から房水が排出されにくくなる理由としては、つぎのようなことが考えられます。

 

① 前房の隅(隅角)にある線維柱帯が、さまざまな原因で房水を通しにくくなる。

この場合、隅角は開放されています。 ⇒ 開放隅角

 

② 虹彩が線維柱帯と接触、さらには癒着してふたをするようなかたちになってしまい、房水が流れにくくなっている。

この場合、隅角はふさがっていると ⇒ 閉塞隅角、狭まっていると ⇒ 狭隅角といいます。

 

こうした原因によって緑内障が起きている場合、「① 開放隅角緑内障」「② 閉塞隅角緑内障」と呼びます。狭隅角や閉塞隅角になる理由はいろいろですが、ひとつの原因として加齢によって水晶体が大きくなることがあげられます。また白内障が進行すると水晶体は大きくなるので、それが原因でこれらの症状がおこることもあります[図表2]。

 

[図表2]開放隅角と閉塞隅角

一晩で失明することもある「急性緑内障発作」

眼圧が上がるタイプの緑内障で、もっとも怖いのは、急激に眼圧があがる急性緑内障発作です。

 

急性緑内障発作は通常10~21㎜Hgの眼圧が、ときには70㎜Hgまで上昇することで激しい眼痛と頭痛がおこる病気です。かすんで見えるようになりますし、吐き気もともなうことが多いです。頭痛や吐き気が顕著だと風邪や胃腸障害、脳障害と誤診されることもあります。

 

このような高い眼圧に視神経は長くは耐えられません。数日、早い場合は一晩で見えなくなります。たとえ処置が奏効して失明を免れたとしても視神経が傷ついて、生涯の間緑内障の治療を受けることが必要になります。自分が緑内障発作を起こすリスクがあるかどうかを知っておくことが大切です。

 

高齢の方の急性緑内障発作は以下のような瞳孔ブロックとよばれる一連の症状によって引き起こされると考えられています。

 

① 加齢とともに水晶体が大きくなったり、チン小帯(水晶体を正常な位置に固定しておく役割をもつ)が緩む。

② その結果水晶体が前にでてくる。

③ 水晶体と虹彩の間の房水の流れがせき止められる(=瞳孔ブロック)。

④ 虹彩の後ろに房水が溜まって虹彩が前に押し出され隅角を塞ぐ。

⑤ 眼圧が上がり眼痛や頭痛や吐き気などの症状がおきる。

 

急性緑内障発作の前駆症状として軽い目の痛みが繰り返しでる場合もあります。

 

◆自分が狭隅角かどうかを知ることが必要

 

では、どのような人が急性緑内障発作を起こすのでしょうか? 実は、若い頃目が良かった人に多いのです。若い頃メガネいらずだった人は、近視の無い人で、すなわち遠視か正視の人です。こういう人は概して目のつくりが小さいのが特徴です。

 

目が小さくても水晶体は大きいので、水晶体が虹彩を後ろから押して隅角が狭くなっているのです。そして、そのリスクは水晶体が大きくなる50歳以降高まってきます。狭隅角の方は、生活のいろいろな場面で急性緑内障発作を起こすリスクがあるため自分が狭隅角かどうかを知っておくことは必要でしょう。しかし、ご存じない方がほとんどなのが現状です。

 

 

板谷正紀

医療法人クラルス はんがい眼科 理事長

 

板谷アイクリニック銀座 院長

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

▼はんがい眼科の公式ブログ「目のブログ」▼
https://eyeblog-hangai.com/

著者紹介

連載眼科院長が教える!ライフスタイルに合わせた「白内障手術」ガイド

「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術

「自分だけ」のオーダーメイド白内障手術

板谷 正紀

幻冬舎

白内障を治せば人生が変わる!ずっと忘れていた「見える喜び」を取り戻せば、人生は、もっともっと楽しくなる。