職場関係を乱す「肩書固執おじさん」、どう対応する?

「60歳で定年退職」はもう昔の話。65歳、70歳まで働ける社会になりつつありますが、定年後「再雇用」されたため、今までの役職を失うシニア人材も増えています。元の肩書に固執し、横暴に振る舞う彼らと、どうやって付き合っていくべきでしょうか? 株式会社CN総合コンサルティング代表・中原千明氏が解説します。

「肩書呼び」が不要な上下関係を構築する

過去の肩書にこだわっているシニア人材は、少なくありません。退職したのにもかかわらず、名刺に「元部長」「元校長」という肩書をつけているシニア人材がいるという話を聞いたことがあります。課長、部長、本部長、常務、専務など役職の肩書にこだわるのは一種の大企業病だと、私は考えています。

 

役職をつけるのは責任の所在をはっきりさせたり、昇給の理由としたりするためですが、社内での人間関係を安定させるためでもあります。役職があると、上司には部下を指導監督する責任が生じます。それと同時に、上下関係が固定されることになります。たとえ部下のほうが仕事ができて優秀だったとしても、社会人の常識として上司は上司、部下は部下という立場をわきまえるよう要求されるのです。

 

シニア人材は、前職では役職についていたとしても、転職先では新入社員と同じ立場になる場合もあります。それでもシニア人材の経験や実績を尊重して、「シニアリーダー」「シニアマネジャー」のような肩書をつくるという方法もあるかもしれません。私は、そういう方法は実はなんの解決にもならないのではないかと思います。

 

転職先で経験や実績がないのなら、特別扱いする必要はないでしょう。特別扱いすると、シニア人材は新しい環境でのやり方を学ばなくなるかもしれませんし、周囲もやはり反感を抱きます。ですので、上下関係をなくしてしまうのが、一番の解決策ではないでしょうか。

 

会社を運営するにあたって、役職を設けることが必須かといえば、必ずしもそうではありません。事実、役職が細かく分かれているのは、ほとんどが大企業で中小企業では社長のほかは全員ヒラ社員というところも数多くあります。おそらく社員が20人くらいまでなら、リーダーは社長1人で十分でしょう。それ以上の規模になると、いくつかのグループに分けて、それぞれのリーダーを決めることが必要になります。

 

私の会社では、それぞれの社員の得意分野が違うため、案件によってさまざまな人がリーダーシップを取るというスタイルでやってもらうようにしています。私は、会社の中に不要な上下関係はなるべくないほうがいいと思っていますから、年齢にかかわらず、全員「さん」付けで呼ぶようにしています。私のことも「社長」ではなく「中原さん」と呼んでもらっています。私が皆と話すときは丁寧語で話すようにしていますし、他の社員同士も同じです。

 

皆さんの会社でも、全員を「さん」で呼ぶ習慣をつくってみたらいかがでしょうか。そうすると自然に上下関係がなくなるので、若い社員がベテラン社員に対して意見を言いやすくなるというメリットが生まれます。議論が活発になるので、会議で若手社員がだんまりしているような光景もなくなるでしょう。

 

そもそも、肩書は人に尊敬してもらうためのものではなく、自分の人柄や振る舞いが立派であれば、自然と周りは尊敬してくれるものです。肩書をなくせないのだとしても、「さん」で呼び合う環境にするだけで、フラットな組織になるでしょう。そうすればシニア人材も溶け込みやすくなりますし、誰もがいきいきと働ける職場になるはずです。

 

肩書は人に尊敬してもらうためのものではない
肩書は人に尊敬してもらうためのものではない

力士に陸上競技はできないし陸上選手に相撲はできない

手順人には適性があるので、どんな仕事でも適当にうまくこなせる人もいれば、得意な仕事では能力を発揮するけれど、苦手なこととなるとからきしダメという人もいます。

 

シニア世代になると、若いときよりもストライクゾーンがさらに狭くなって、本当に力を発揮できるゾーンが狭くなる傾向があります。残念ながら、なんでもこなせる人は少なくなるのです。

 

「シニア人材は仕事ができなくて困る」という話を耳にしますが、仕事ができないというわけではなくて、仕事がその人のストライクゾーンから外れている可能性があります。マネジメントを考えるうえでは、できない仕事をできるようにするより、できる仕事を探して与えるほうが簡単です。仕事に人を合わせるのではなく、人に仕事を合わせるのです。

 

そのためには、会社に利益を生むことであれば問題ないはずですから、新たにシニア人材向けの仕事をつくってもいいと思います。力士にわざわざ100メートル走を走らせても、いい記録が出るわけがありません。反対に陸上選手に相撲を取らせてもダメです。その人はどんなことができるのか、何が得意なのか、経営者や上司はシニア人材とのコミュニケーションを取りながら探していかなければなりません。

 

歳をとると話が長くなるので、シニア人材の話を聞きながら時間をかけて仕事を進めるのは大変なことですが、せっかくの人材の能力を活かすには止むを得ないところでしょう。

 

私の会社では、いろいろな案件の中から「これ、私がやります」と手を上げてもらって、自分に合った仕事を選んでいただくようにしています。バッターがピッチャーの投げるボールを見極めるように、ストライクゾーンに来たら打ってもらうわけです。

 

ただ、それだけでは手が回らないこともあるので、経営者の裁量で仕事をやってもらう場合もあります。

 

ある社員に、「あなたには不動産の仕事をやっていただきたい」と伝えたら、資格はあるがやったことがないからできないと言われました。資格はあっても経験がない、いわゆるペーパードライバーです。

 

それなら名前だけでもいいからということで、「私と一緒に不動産の仲介、売買契約を進めてみましょう」と提案して、一緒に取り組みました。実務は経験が重要なので、一度経験してもらえれば、二度目、三度目はできるようになっていきます。その後しばらくは、ずっと私に帯同して一緒にやってもらうことにしました。そしていくつか成功を重ねると、あとは一人で担当するようになったのです。

 

そのように、相手の話を聞きながら、業務の進め方を一緒に考えるのが、シニア人材には適しています。そして、できるようになるまでは併走すること。いきなり一人で走らせるのではなく、「私がついているから大丈夫」と声をかけながら走れば、いずれ一人の力で走れるようになります。

 

ただし、私の会社では、多くの仕事は2人1組で任せるようにしています。その理由の一つはリスクの分散です。万が一、片方が投げ出してしまったとしても、もう一人にフォローしてもらえば、仕事は回ります。一人の責任が重くなり過ぎないようにすることで、仕事のハードルを下げられるのです。

 

もう一つは、透明性を確保するためです。一人で抱え込んでしまうと、何をやっているのかが見えにくくなってしまいます。信用していないわけではありませんが、何かトラブルが起きてから事後報告されても困るので、2人に担当してもらうことで予防しています。その分コストはかかりますが、会社としてはメリットがあるのです。

 

経験のない仕事に対して尻込みをするシニア人材でも、「慌てなくても必ずできるようになるから」と声をかけながら並走すれば、できるようになるでしょう。方法次第では、シニア人材でもストライクゾーンを広げることはできると思います。もともとポテンシャルの高い人材であれば、マネジメント一つで可能性が広がるものです。その場合も、人柄や性格、謙虚な姿勢が重要になります。

 

無礼で傲慢、自己中心的な人物はどこへ行っても活躍できませんから、「実るほどにこうべを垂れる稲穂」のような人材を探すことが大事なのです。

基金運営研究所株式会社 代表
一般社団法人年金基金運営相談センター 理事長
株式会社CN総合コンサルティング 代表
 

1973年に慶應義塾大学を卒業後、都市銀行に入行。不動産や企業年金等幅広い業務に従事し、業績向上に貢献する。54歳で関連会社に転籍、定年退職まで勤め上げる。2008年、61歳で起業。基金運営研究所株式会社を設立する。2012年には一般社団法人年金基金運営相談センター理事長に就任。企業年金のコンサルティングを行うかたわら、不動産や保険代理、投資家に対する運用商品の紹介、相続対策、M&A等へと事業を拡大し、2013年に株式会社CN総合コンサルティングを設立。各分野の専門知識をもった22名の定年後シニア人材を雇用、戦力化し、黒字経営を続けている。義理人形を重視した誠実な仕事が支持されており、数十年来の取引先も多い。モットーは「生涯現役」。

著者紹介

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シニア人材という希望

シニア人材という希望

中原 千明

幻冬舎メディアコンサルティング

超高齢社会の到来とともに、日本人の働き方は大きく変わる――。 都市銀行でマネジメント職を歴任。定年後に起業し、多数のシニア人材を雇用する経営者が語る“新しい労働の在り方"とは? 2013年4月1日、高年齢者雇用安定…

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