大学受験「どうせ自分なんか」が染みついた日本の若者たち

毎年ドラマが生まれる「大学受験」。涙ぐましい努力の末、念願の志望校に合格する子どもがいる一方、MSAマスタードシードアカデミー主任講師・中澤一氏は、昨今の受験生について「メンタル面で弱くなっている」と指摘します。本記事では、同氏の書籍『難関大学合格のためのメンタル強化術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋して解説します。

失敗する受験生は「やらされている」気分でいる

難関大学に合格するためにはなによりも必要なのが学力。しかし、この学力は一朝一夕ではつきません。日々の勉強を、どれだけ忠実にこなせるかにかかっています。そのためには、メンタル面で負けないことが不可欠です。

 

受験生のみなさんは、勉強に取り組む以前の問題として、自分自身のことをどれだけ理解しているでしょうか。20年以上にわたって受験生を見てきた経験からすると、最近の受験生はメンタル面で弱くなっていると痛感させられます。受験が自分自身のためのものであるという意識が低く、どこかで「他人からやらされている」ような姿勢で取り組んだり、ちょっとうまく行かないとすぐにあきらめてしまう受験生が少なくありません。

 

こんなことを言われると、ほとんどの受験生は「自分は大丈夫だ」と思うかもしれませんが、短いようで長い受験までの道程において、つまずきの石はあちこちに転がっています。そこで、失敗する受験生に共通の特徴をご紹介しましょう。

一般入試に背を向け、「楽な入試」を選んでいいのか?

入試も多様化し、学力試験を受ける「一般入試」以外に、「AO入試」や「推薦入試」など、さまざまな選抜方法があります。これらの入学選抜方法のほとんどは、夏から秋にかけて「合格発表」があるため、学力試験の一般入試に比べ半年近く早く「受験生活」にピリオドを打つことになります。また慶應など雀の涙ほどの一部の例外を除き、ほとんどが形式的な「書類審査」で終わりですから、その意味では一般入試よりはるかに楽です。

 

最近、このような楽な道をすぐに選んでしまう受験生が増えています。しかし、これは「今、楽をして、あとで苦労する」道であることに気づかねばなりません。

 

まず、一般入試受験生に比べ、学習時間が遙かに少なくなってしまいます。通常、夏休み頃から、膨大な出願書類の作成にかなりの時間が取られてしまうため、いわゆる「勉強」が後回しになり、ほとんどの場合、そのままで終わります。

 

それでも、これで合格できれば良いのですが、現実問題として、受かるつもりだったAOや推薦入試に落ちた場合、そこから立ち直れなくなる受験生を何人も見てきました。また、なんとか気を取り直して一般入試に取り組もうと思っても、書類作成にかけた膨大な時間をとりもどすことはなかなか難しいのです。

 

AOで失敗した受験生が、一般入試で合格するケースは、私の経験からは数えるほどしかありません。受験生にとっては「この程度の大学でいいや」「一般入試は大変だからAOや推薦を目指そう」と考えるかもしれません。しかしそれが、かえって失敗のリスクを大きくしてしまうことを、真剣に考えた上でこのような受験方法を選択する必要があります。

「やればできるなんて、きれいごと」という言い訳

「やればできるなんて、きれいごとだ。青臭いことをいうな」そう思う受験生もいるかもしれません。しかし私は逆に、まだ10代というのに努力を否定するようになってしまった人生をとても残念に思います。

 

人生観というのは、経験の積み重ねで固まっていくものです。「頑張っても、頑張らなくても、変わらない」「頑張って勉強しても意味がない」そう思う受験生は、頑張れば結果が出る経験をしてこなかったように思います。

 

小さな積み重ねによって結果を出してきた人は、自分の積み重ねてきた努力に意味を見出し、たとえ失敗しても、次にどうつなげるかを考えます。ただし、やり方が悪いとうまく結果に結びつけることはできません。

 

なかには、それを見つけられないために、思うように成績が伸びず、やきもきしている受験生も多いことでしょう。それが長引くことで、努力しても自分はダメな人間なのだ、とか自分のレベルはこの程度だろう、と自分自身をあきらめてしまい、努力を否定するようになってしまうのかもしれません。しかし、それは間違いです。

 

努力は決して無駄にはなりません。必ずしも、自分の思い通りのタイミングで、なにもかもが思い通りの形で手に入ることはないでしょう。しかし、思いがけぬところで、きっと「あのときやっていたことが、ここにつながったんだ」とわかるときが来ます。

 

これまでに、難関大学を目指す受験生を数多く見てきましたが、忍耐強く勉強を続けていれば、本番が近づく11月から2月にかけて、成績がグッと伸びます。誰もがそういった可能性を秘めています。

 

努力は必ずなんらかの実を生み出します。たとえば英語の場合、それまで淡々と頭に詰め込んできた文法や単語などの知識が、あるときパッとつながる瞬間が訪れるのです。それ以降は、自分でもビックリするくらい英語が読めるようになります。そうなると、同じ時間で読める量が一気に増えるし、英文を長時間読んでいても苦になりません。ここまで来ると、加速度的に英語力が高まります。4月には、自動詞と他動詞の区別すら怪しかった生徒達の成長を見ると、「努力は報われる」ということを改めて感じずにはいられません。

「どうせ自分なんか」と卑下してリスクを回避する

自分に対して自信を持てていない受験生も少なくありません。そのため、将来について明るい未来を描けず、ふた言目には「どうせ自分なんか」と口にするのです。

 

受験生と話していると、あまりの自信のなさに、驚かされることがあります。「自分のやりたいと思うことは何を目指したって構わない」「誰もやったことがないことを目指しなさい」「そのために一番になりなさい」そのような話をすると「え、いいのですか?」という反応を示す受験生が、何人もいるのです。自分が、例えば弁護士や研究者や起業家などになることは想像もしていないのです。パイロットやエンジニア、政治家や、国連で活躍することなど、自分とは全く無縁だと最初から決め込んでいるのです。

 

話を聞いてみると、これまでに成功といえる体験を一切してこなかったことから、親や先生から褒められたことがなく、自分はそういう職業の人間になれないものだと思い込んでいたのです。

 

ひょっとしたらあなたの周りにもいるかもしれませんが、難関大学に挑戦しようとしても「お前には無理だ」と否定する大人も少なくありません。その人たちもきっと、自分に自信がないのでしょう。「自己否定」のスパイラルです。

 

こういうことが続くと「自分はすごいものを目指してはいけない存在だ」と思い込んでしまうのでしょうが、それではあまりにもったいないことです。自分を低く設定する必要は、全くありません。なりたいものを目指しても構わないと、自分に許可を与えてほしいのです。

 

初めから自信満々の人なんて、そうはいません。表面的には強気でも、心の中では不安を抱えているのです。変われるかどうかはあなた次第なのです。あとは、「自分のなりたい自分になる」という選択をするかどうか。これはすべてあなたの決断にかかっているのです。

 

「自己否定」のスパイラルに陥っている
「自己否定」のスパイラルに陥っている

夢だけ見て「お膳立て」してもらうことを期待している

大きな目標を掲げていながら、同時に常に受け身でいる受験生も少なくありません。自分が困った状況に陥っても、いつでも周りが力を貸してくれると思っているのです。それを当然とすら思っている人もちらほら見受けます。

 

「私はどこを受験したらいいの?」「どれから勉強したらいいの?」「単語はどれを覚えればいいの?」「この時期はどんな勉強をすればいいの?」そのように、受験のことを矢継ぎ早に質問してくる受験生もいます。一見、受験に対して積極的になっているように思えますが、要は手取り足取り教えてもらいたいというにすぎません。自分で考えずに、最初から「お膳立て」してもらうことを期待しているのです。

 

もちろん、受験勉強を指導するプロは、一人ひとりの状況に合ったアドバイスをできます。しかし、それに対して「先生に言われたからやる」というような受験生は、結果に対して何も責任を負いません。ちょっとうまくいかなくなると「だって、あの人がこうやれと言ったんだ。自分のせいじゃないんだ」と言い始めます。

 

あるときこんな生徒がいました。体調不良で授業を欠席しました。その分、当然、遅れてしまっているわけです。ところが、それをいつまでもそのまま放置しているのです。それだけではありません。復習テストや模試で、自分が休んだ分が出題されたり、あとの授業で「あのときやりましたよね」と言われたりすると、「自分はその日は授業に出ていなかったからわかりません」と、他人事のような言い方をするのです。

 

もっと驚いたのは、10年ほど前、来週まで覚えてくるように、と伝えてあった英単語を全く覚えていない生徒がいたので、「どうして覚えてこなかったの? なにか勉強できないことでもあったの?」と聞くと、信じられない言葉が彼女の口をついて出てきたのです。「えっ? 単語って私が覚えるんですか? この学校に入ったら、すんなり覚えさせてくれると思っていました」と。

すぐに答えを求めたがる「効率重視」派

要領よく結果を出すことが賢い生き方である……。そんなふうに考えている受験生も最近では増えてきました。

 

最も少ない労力で、最大の成果を目指す。そういう効率重視の考え方をする傾向は、ビジネスの世界でも勉強の世界でも、年々強くなってきているように感じます。「コスト・パフォーマンス」ばかりを気にする人が増えました。目の前に落ちている10円を拾うために、その先にある1万円分の宝に気づいていないように思えてなりません。

 

でも人生は、一見、ムダに思えるような積み重ねがあってこそ、後々実力差となって表れてくるものです。難関大学を目指して受験勉強に打ち込み、結果を勝ち取る受験生は、そういう事実を自然と学んでいきます。

 

得てして、多大な努力の末に結果を出す人は、自分の努力を自慢げに語ったりせず、謙虚に「いやぁ、大したことしてないですよ」と言うものですが、それを聞いて「なんだ、大した努力をしなくてもなんとかなるのか」と考える人がいることは、もう喜劇としか言いようがありません。

 

たとえば、慶應の合格を目指すとすれば、それはとても高いハードルです。英語であれば、カバーすべきことは膨大にあります。そこで効率を求めてしまうのでしょうが、実際には「小手先のテクニック」程度のことに振り回されてしまい、結局はゴールにたどり着けない受験生がたくさんいます。

 

英単語なら、最低限の意味だけ覚えようとする。または「この1000語で難関大学に受かる」のような売り文句の単語帳を買ってきて、それにしがみついて、それだけをマスターしようとする。

 

ところが、こうした受験生は、応用が利きません。範囲付きの定期試験くらいならなんとか乗り越えられるでしょうが、本番で少し傾向を変えられたり、長文が苦手なテーマだったりするだけで、大きく崩れてしまうのです。

 

受験勉強において、一見「ムダ」に見えるようなことが、実は全くムダではなく、大きな力となるのです。新聞なんて読んでいる暇がない……と思うかもしれません。しかし、新聞のちょっとしたコラム記事で読んだことが、英語の読解問題で扱われていたり、小論文の資料に出てきたりということはよくあることです。

 

背景知識があれば難なく読みこなせる文章でも、そうでない場合はとてつもなく取っつきにくく感じたりします。効率や要領のよさを重視して勉強をする受験生は、一般的な模試の偏差値はそこそこ出せるでしょうが、深い語彙力がありません。

 

効率重視の受験生は、「合格ラインが60点なら、61点取れればいい」と考えます。あるいは、「早稲田の政経に受かるには、単語は最低何個覚えればいいのですか?」と聞いてくる受験生もいます。また「慶應に受かるテクニックだけを手っ取り早く教えてほしい」と言って子供を連れてくる保護者もいます。

 

ギリギリラインで、目を水平にきょろきょろさせてしか見えないことと、もっと上から俯瞰するのでは、全く異なります。「受験勉強が社会に出て役に立たない」という人がいますが、それは、61点を狙った効率重視の勉強をしてきたからです。そのときそのときをギリギリで抜けきることが目標であって、「あとで役に立つ」ような勉強はしていないからです。

 

「受験を突破するため」だけを考えたらムダのように思える勉強の積み重ねが「後の人生で役に立たなかった」ということは、決してありません。

他人に甘え続け、「人のせい」にしてしまう癖がつく

親や予備校が「受験生のために」と、入学しやすい大学を「自分のことのように」親切に選んで勧めることから、最近は、お膳立てをしてもらうのが当たり前と考える受験生が増えてきたように感じます。

 

小さなときから塾に通い慣れ、効率重視で「ハウツー」や「テクニック」ばかり教え込まれてきたせいか、大学を受験する年齢になっても「すべてお膳立てしてもらって当然」であり「やり方を教えてもらわないとどうやったらよいかわからない」と悩む受験生がいます。

 

これは大学受験生に限らず、社会人の間でも見られます。こういった受験生の多くは、ゴールにたどり着くはるか前に折れてしまいます。自分の弱点をどうしたいのか、そのために何をすればよいのかなどを自分で決められず、他人の力をすぐに期待してしまうのです。

 

あるいは、たとえアドバイスを受けても、それが自分の望む以上の努力を要求したり、大変なものだったりすると、今の自分を変えずに済む楽なアドバイスがもらえるまで、何人にも相談します。そうこうしているうちにどんどん時間だけが過ぎてしまい、結局、何もできずに終わってしまうのです。

 

それにもかかわらず、テストの結果が悪ければ、「教え方が悪いからだ」と教師のせいにし、勉強時間が取れなければ「遊びに誘う友達のせいだ」と仲間のせいにする。「教科書がわかりにくい」「学校が忙しい」と、やらなかった原因やできなかった理由を、他人や環境のせいにして、自分をなだめるのです。

 

「自分で志望校を決めたわけじゃない」「時代が悪かった」「運が悪かった」「得意なところが出なかった」「体調が万全じゃなかった」「うちの家系がダメなんだ」というように、受験の結果が悪ければ、他人や環境のせいにします。それでは、どんどん惨めになっていくだけです。最初はつきあいで話を聞いてくれている人も、そのうち、どんどん離れていくことでしょう。

MSAマスタードシードアカデミー 主任講師

単なる「英語」の授業を超え、「前向きな姿勢」「不屈の精神力」「起業家マインド」を養成することに力を注ぎ、受験生から高い評価を得ている。全国各地の高校や予備校での特別授業、講演に加え、保護者会、教員研修、チャペルサービスなどの依頼を数多く受ける。著者には、全国各地の高校で採用されている『単語王2202』の他に『フラッシュ!速攻英文法1』『フラッシュ!速攻英文法2』『徹底英語長文読解講義』『本当にやりたかった英語長文読解』など多数ある。

著者紹介

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難関大学合格のためのメンタル強化術

難関大学合格のためのメンタル強化術

中澤 一

幻冬舎メディアコンサルティング

少子化などの影響により、大学に進学しやすい時代になったといわれています。しかしながら、慶應や早稲田をはじめとする難関大学の一般入試は、志願者数の増加や推薦入試枠の拡大で、より一層「狭き門」となっているのです。 …

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