東京の不動産市場が曲がり角の様相を見せるなか、大阪の注目度が上がっている。2025年には「万博」という五輪に匹敵するイベント開催を控え、国内外の投資マネーが大阪に向かい始めている。本連載では、大阪ではまだまだ数が少ない投資不動産専門会社である、株式会社ゼストエステート専務取締役の菅氏に、大阪の不動産市場の現状と、投資対象としてのポテンシャルなどを伺った。今回のテーマは、大阪で不動産投資を行う際のエリア選定についてである。

東京よりも「高利回り」が実現する、大阪の不動産投資

株式会社ゼストエステート専務取締役 菅氏
株式会社ゼストエステート専務取締役 菅氏

「日本国内では、キャピタルゲインを得ることが難しくなってきました。これからも国内で不動産投資を続けるなら、インカムゲインを重視すべきです。狙い目はやはり大阪の不動産で、東京に比べて価格が安いうえ、利回りは3~4%高いのですから、注目して損はありません」と話すのは、株式会社ゼストエステート専務取締役の菅氏。

 

東京と大阪で大きな利回りの差が生じる理由は、土地代の差にある。国土交通省が運営する「土地総合情報システム不動産取引価格情報」によると、2019年第2四半期の都区都心部の平均価格は、92万2,105円。対して大阪市内の平均価格は24万9,060円と、実に3分の1以下である。しかし東京・大阪の都心部にあるワンルームマンションの家賃差はわずか1万円程度で、必然的に高利回りが実現しやすくなるのだ。

 

「都内と同じ予算なら、大阪では複数の物件購入が実現します。しかしそんなバーゲンセールの状況がいつまで続くか。時間の猶予は、それほどありません」と菅氏。

 

大阪では2025年の万博開催に向け、さまざまな開発が進行中である。会場となる夢洲(ゆめしま)には、万博後にもIR(統合型リゾート)が誘致される可能性が濃厚だ。このような状況を受けて、海外投資筋からの注目は高まり、投資マネーが流入しつつある。うかうかしていると東京同様、土地代の高騰を傍観するしかなくなってしまうかもしれない。

 

なぜ「1.5等地」が大阪不動産投資で狙い目なのか?

不動産投資で大切なのは、まずエリア選定だ。いま大阪でより良い物件を取得するためには、どのようなポイントに留意するべきなのだろうか。

 

「大阪でも東京でも同じことですが、物件選びで最も重要なのは、立地条件です。万博の開催はもちろん、うめきた再開発などの影響もあり、大阪の1等地価格は高止まりの状態にあります。そこで我々は、1等地の隣、いわゆる『1.5等地』にある物件をおすすめしています。たとえば『難波は高すぎて難しそうだから、その近隣でアクセスも便利な大黒町の物件を考える』といった具合ですね。

 

そうした選択が、まだ大阪では可能なんです。東京の場合『新宿がダメだから高田馬場』と考えたとしても、適正価格の優良物件はなかなか出てこない。板橋区や足立区の物件ですら高騰していて、都外に目を向けるほかなくなっています。大阪でも、再開発のスピードが加速しているため、いずれは同様の状況になるでしょう。たとえば、一般に治安が良くないとされる西成エリアは、実はアクセスが良く、訪日外国人も増加しています。さらに星野リゾートが都市型ホテルを作ると発表しました。それを受けて、すでに物件価格が上昇しています」

 

西成再開発の目玉として星野リゾートの都市型ホテルが誕生する
西成再開発の目玉として星野リゾートの都市型ホテルが誕生する

 

関西圏の「住みたい街ランキング」を見ると、西宮市や吹田市や豊中市など、大阪市近郊の都市が上位を占めている。このような街は、投資対象としてはどう見ればよいのだろうか。

 

「そのようなランキングは、あくまでファミリー層の意見を重視しながら作成されています。住宅ローンの金利が大幅に低下した近年、関西圏では、3人以上の世帯は住居の購入を考える傾向が強くなりました。賃貸物件を扱う投資家にとっては、そもそもターゲットにならない層の意見なので、重視する必要はありません」

 

大阪は都市機能が都心部に集中している。東京に比べて、非常にコンパクトにまとまった都市である。

 

「そもそも大阪には『通勤に1時間以上かける』という感覚がありません。だから単身者層を狙うなら、1等地に隣接する1.5等地がいいのです」

 

家と職場を往復し、休日は繁華街で楽しむというライフスタイルを謳歌する単身者層にとって、住居に求めるのは設備の充実より利便性だ。特に職住の近さが常識となっている大阪では、立地条件こそ勝負の分かれ目になるだろう。

 

また今後の不動産経営において、外国人ニーズも重要だという。

 

「今後、大阪では、万博の開催やIRの誘致で、多くの雇用が生まれることになるでしょう。その経済効果を支えるのは外国人労働者です。コンビニや飲食店に行けば、外国人スタッフが本当に多い。彼らの住居となるワンルームタイプの物件は、今後も有望です」

 

近年の大阪は、安定的な人口増加を示している。国勢調査によると、2018年に大阪市内に転入した人は約20万人、転出した17万5,000人を差し引いても、約2万の人口増となっている。また大阪へ本社機能を移す企業も増加しており、2018年には過去23年で最多となる174社を記録した。さまざまな側面から見て、大阪市内の住宅需要には追い風が吹いている。

 

「日本の人口減少は明らかですが、単身世帯数はむしろ増加しています。そんな国内で今後、勢いがあるエリアのひとつが、大阪なのです」

 

次回は大阪の投資物件の特徴や、リスク管理についての具体的なアドバイスを伺うことにする。

 

取材・文/西本不律 撮影(人物)/有本真大
※本インタビューは、2019年11月8日に収録したものです。