大学受験「大手予備校の下位クラス」という「魔窟」

大学受験の学習塾・予備校業界は、少子高齢化の波を受け縮小するどころか、その市場規模が拡大しています。つまり受験生や保護者の方は、勉学に適切な「環境選び」が困難になっているといえるのです。「ウチの子はものぐさだから、しっかりサポートしてくれる個人塾」「やっぱり実績のケタが違う大手予備校」など、メリットだけを注視した結果、想定外の結果に陥ってしまわないように、事前の情報収集を徹底しましょう。本記事では、MSAマスタードシードアカデミー主任講師・中澤一氏の書籍『難関大学合格のためのメンタル強化術』(幻冬舎MC)より一部を抜粋して解説します。

親身になって教える個人指導塾は「ぬるま湯」

最近では、少子化にもかかわらず、学習塾と予備校の市場規模は拡大しています。特に、市場の伸張をリードしたとみられているのが個人指導塾。これと似た少人数の指導塾も、補習を望む生徒や親のニーズに応えるかたちで、着実に入塾者を増やしているようですが、必ずしもベストな環境とはいえません。

 

【少人数・マンツーマン指導の落とし穴】

 

受験生のなかには「一人ひとり親身な指導」「個人の特性に合わせた手厚いサポート」といったモットーにひかれて、個人指導塾に通っている人もいるかもしれません。しかし、個別の指導スタイルが受験生のポテンシャルをどれだけ引き出せるのか、かなり疑問です。

 

一方で、個別指導塾は、マンツーマンである以上、わかるまでしっかり教え、決して置いてきぼりにはしません。これが最大のメリットです。個人指導ならば当たり前のことが、皮肉なことにデメリットにもなり、物事に挑戦することを難しくしてしまっていることもあるのです。まさに諸刃の剣です。

 

【他の受験生から刺激を受けにくい】

 

マンツーマンの場合、一般的な予備校に比べて、ほかの受験生との接点が少ないのもデメリットです。最近は「少人数であればあるほどよい」という神話が広まってもいますが、大きな疑問を感じます。大勢がひとつの教室に集まって学習する場合、周りで勉強している姿を常に目の当たりにして「あの人は頑張っているな」とか「同じ年齢なのにこんなにすごい人がいるのだ」と、常に刺激を受けるもの。

 

ライバルの成長ぶりを見て「このままでは間に合わない」と焦ったり、「あの人には負けたくない」と対抗心を燃やしたりすることで、勉強に身が入る受験生もいます。それに比べて個別指導塾は、授業中は講師としか話さず、授業が終わったら帰るだけ。刺激を与え合う仲間もいなければ、勉強が置いてきぼりになる心配もありません。

 

いわば「温室」のような環境に身を置いているようなものです。マンツーマンですから、授業時間のコミュニケーションは多く取ることができるので、その分「勉強した気」にはなれます。しかし結局、マイペースでしか進歩することができず、難関大学が求めるレベルに達する前に受験日がきてしまうこともあるのです。

 

受験も結局はビジネスの世界
受験も結局はビジネスの世界

下位クラス=「経営上必要なお客さん」

多くの受験生が通う大手予備校は、公表している合格実績も魅力的で設備も立派ですから、ベストな勉強環境だと考える受験生も多いでしょう。しかし、その最大の恩恵を受けられるのは、上位クラスに入ることができる生徒だけです。下位クラスは、残念ながら、経営上必要なお客さんと言われている現実があります。

 

【大手予備校による成績別クラスの裏側】

 

ほとんどの大手予備校では、成績順にクラス分けを行います。通常、3ランクほどに分け、さらにそのなかで細かく分けるところもあります。前年度に模擬試験などで好成績をおさめた生徒たちは「特待生」として、授業料が全額あるいは一部免除で最上位クラスに入ります。その予備校の合格実績を上げるためには、不可欠な存在なのです。

 

一方、成績が低かった最下位クラスの場合、講師のランクもそれに見合ったものになりがちです。もちろん、優秀な先生もいらっしゃいますが、それは例外です。通常は、あちこちの予備校や塾を2〜3年ごとに辞めるか、あるいは契約を打ち切られて転々としている講師が、下位クラスを担当する確率が高いのです。

 

ある大手系列の予備校の経営者から直接聞いた話ですが、残念ながら、このような講師の場合、その学校の理念や方針などはお構いなしの授業をしたり、自分に与えられた授業のコマを消化することしか考えていなかったりして、独りよがりの指導になりがちだそうです。

 

大学院を出て修士号、なかには博士号まで持っているのに、大学での研究職や教職の空きがなかったり、企業への就職ができず、生活のために仕方なく予備校や塾の非常勤講師をしていたりする人も少なくありません。

 

【教えることに不慣れな下位クラスの講師】

 

話を聞いた予備校経営者は「学歴は立派かもしれないが、教えることが下手だったり、社会常識がなかったり、遅刻や休講をしたり、長続きしない人が多い。自分でも予備校で教えることを本業と思っていないせいか、生徒もそういう先生にはついていかなくなる。授業の雰囲気も良くなく、欠席者が増え始め、秋には出席率が3割に満たないこともある。そういう講師には一番下位クラスを担当してもらわざるをえないし、翌年の契約はお断りする」とのことでした。

 

首都圏の別の予備校でも同じようなことを聞き、そして実際に見たことがあります。成績順に何段階にも分けたコースが自慢の学校でしたが、10月のある日、教室の前を通って教室のなかがちらっと見えたときのことです。

 

講師が、生徒が誰もいない教室の中に、ひとりで座っていました。あとで教務担当のスタッフに聞いてみたら、ほとほと困ったような顔で「そうなのですよ。生徒にそっぽを向かれてしまいました。優秀な人なのでしょうが、大学受験の予備校で、受験生が求めていることに応えるということがどういうことがわかっていないみたいで……」とこぼしたのです。

 

実際、私も小さいながら予備校を自分で経営するようになり、何人もの講師採用を経験してきましたが、応募してくる人のなかには「授業がきちんとできるのだろうか?」と疑問に思う人が少なくありません。

 

【下位クラスに漂う「あきらめ感」】

 

残念ながら下位クラスには「あきらめ感」が漂っています。講師にもあまり緊張感がないため、生徒に見事に伝染してしまいます。テキストもモチベーションが上がらない内容のものになりがちです。

 

たとえば、ある受験生は英語は苦手でも、国語は得意かもしれません。ところが、英語のテキストときたら中学生が読んでも飽きてしまいそうな内容だったりします。

 

ある大手予備校の下位クラスが使っている、英語のテキストを見て驚いたことがあります。「アメリカでは車のハンドルが左側についています」といった、受験生をバカにしているような幼稚な内容なのです。

 

これから大学に行こうとしている若者の知的好奇心をくすぐるようなものでもなければ、チャレンジするようなものではありません。英語は苦手かもしれませんが、英文の内容までつまらないもので構成されたテキストでは、なかなかやる気が起きないはずです。

 

受験生にとって「自分はこんなものだ」「頑張っても意味がない」という思い込みは、受験の準備時期に入ることで、より強固に形成されてしまう場合もあります。周りは大体同じレベルですし、予備校が用意する講師も「それなり」です。つまり、そういう扱いを受けることで、受験生は「自分はその程度なのだ」と思い込んでしまいかねません。

 

キチンと教えられない講師と、あきらめ感が漂う教室で、やる気を出すほうが難しいと思います。周囲の受験生と交流していても、勉強のプラスになる刺激は受けられないでしょう。

 

このように、受験生を取り巻く環境は、余程の強い精神力がなければ、難関大学を目指しにくい状況だと、感じてもらえたのではないでしょうか。これらの障害に負けないためにも、受験に対する心構えをしっかり持ってほしいと思います。

MSAマスタードシードアカデミー 主任講師

単なる「英語」の授業を超え、「前向きな姿勢」「不屈の精神力」「起業家マインド」を養成することに力を注ぎ、受験生から高い評価を得ている。全国各地の高校や予備校での特別授業、講演に加え、保護者会、教員研修、チャペルサービスなどの依頼を数多く受ける。著者には、全国各地の高校で採用されている『単語王2202』の他に『フラッシュ!速攻英文法1』『フラッシュ!速攻英文法2』『徹底英語長文読解講義』『本当にやりたかった英語長文読解』など多数ある。

著者紹介

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難関大学合格のためのメンタル強化術

難関大学合格のためのメンタル強化術

中澤 一

幻冬舎メディアコンサルティング

少子化などの影響により、大学に進学しやすい時代になったといわれています。しかしながら、慶應や早稲田をはじめとする難関大学の一般入試は、志願者数の増加や推薦入試枠の拡大で、より一層「狭き門」となっているのです。 …

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