NY・ロンドンと並ぶ国際競争力を持つ東京…その実力とは?

東京オリンピックの開催が近づき、国民の期待感も日に日に高まる一方で、オリンピック後の東京の景気を懸念する意見も少なくありません。しかし、オリンピックが終わった後も東京はますます発展していくのです。その理由を様々なデータを用いて説明し、「東京」という都市のさらなる魅力を紹介します。※本連載は、『新・東京進化論』(幻冬舎MC)の一部を抜粋したものです。

世界主要都市のトップ3に食い込む、東京の国際競争力

世界の主要都市のなかで、東京は今、どのような位置を占めているのでしょうか。この本記事では、国際競争における東京の立ち位置を確認しておきたいと思います。

 

世界には、さまざまな調査機関が発表している「世界の都市ランキング」があります。例えば、アメリカのトリップ・アドバイザーが公表している「旅行者による世界の都市調査」を見れば、その都市が旅行者にとってどれほど魅力的なのか、都市の「観光力」が分かります(東京は2014年に1位)。

 

また、世界的な経営コンサルティング会社A・T・カーニーが公表している「グローバル都市指標」を見れば、その都市がいかに「ビジネス」に適しているかがわかるでしょう(東京は2019年4位)。

 

そんな中、森記念財団が2008年から公表している「世界の都市総合力ランキング(Global Power City Index)=略称:GPCI」は、6分野70指標という多角的な視点から世界の主要44都市を評価していて、都市の「総合力」を見るのに最適なランキングになっています。

 

このランキング調査の主査は筆者が務めているので、手前ミソになってしまいますが、世界的に見て、きわめて信頼性の高いランキングだと自負しています。なぜなら、他のランキングと違って、評価に用いる70指標の出典をすべて明らかにしており、さらに第三者委員会のチェックを受けているから。そのため、政府(内閣府国土交通省)や東京都の政策立案にも、実際に活用されています。

 

ランキング公表を始めて11年。世界の都市力を見るモノサシとして、国内ではすでに定着しており、海外でも、世界経済フォーラム(ダボス会議)でたびたび取り上げられたり、ロンドンやソウルの刊行物に登場するなど、一定の評価をいただいています。

 

ここではまず、「世界の都市総合力ランキング」のデータから、東京の都市力を見ていきましょう。

 

GPCIでは、都市の総合力を以下の6分野70指標から分析しています。都市を評価するための70指標の内容については、毎年見直しを行っています。なぜなら、「人が都市に求める機能」には時代性があり、人の都市に対する評価基準も年々変化しているから。

 

最新のGPCI(2018年版)では、以前から手に入れたいと思っていたデータを入手できたので、旧版から指標をいくつか差し替えてアップデートしました。

 

さて、最新のGPCIから、世界主要都市のランキングを見てみると、東京は世界第3位。東京は国際競争力にもっと自信を持つべきです。なお、図表1は6分野70の指標、図表2は各分野別スコアの合計順位(値)を表しています。

 

6分野70指標:6分野それぞれにおいて、主要な要素を表す指標グループを設定、さらにそれらを構成する指標を70選定した。 出典:森記念財団都市戦略研究所
[図表1]指標一覧 6分野70指標:6分野それぞれにおいて、主要な要素を表す指標グループを設定、さらにそれらを構成する指標を70選定した。
出典:森記念財団都市戦略研究所

 

出典:森記念財団都市戦略研究所
[図表2]GPCI 全44都市の順位 出典:森記念財団都市戦略研究所

 

トップ10の顔ぶれは前年から変わりませんが、アムステルダムは2015年から毎年順位を上げており、今回は7位から6位へと順位を上げました。逆に、2012年から6位をキープしていたソウルが7位に下がりました。アムステルダムは、以前から評価が高かった「居住」分野に加え、GDPが成長したことで「経済」分野でのスコアを伸ばしました。イギリスのEU離脱(=ブレグジット)に備え、ロンドンから流出した企業や人材が、英語の通じるアムステルダムに流れたことも大きかったと思われます。同じくヨーロッパからは、「環境」分野で全体1位の評価となったストックホルムが、16位から11位へと躍進しました。

 

また、2018年は、北米8都市(ニューヨーク、ロサンゼルス、サンフランシスコ、トロント、シカゴ、ボストン、バンクーバー、ワシントンDC)がそれぞれスコアを伸ばしたのがトピックといえます。アメリカの6都市は、堅調な経済状況やトランプ大統領による法人税率引き下げの影響でスコアがアップ。特にサンフランシスコは、「経済」と「環境」分野で評価を高め、17位から13位へ。カナダの2都市は「経済」「居住」「環境」分野で高評価を得ており、特にトロントは全44都市中最大のスコア増となりました。一方、中国の2都市は大きく後退しました。

 

北京は「交通・アクセス」分野での評価を落として13位から23位に。上海は前年まで好調だった「経済」分野でスコアが伸びず、15位から26位へと大幅に下落。それぞれ、「優秀な人材確保の容易性」「従業員の生活満足度」「環境への取り組み」「水質の良好性」「渋滞の少なさ」などでの評価が低かったことが響きました。

 

トップ5の顔ぶれは、ここ10年間変わっていません。つまり、この10年、世界を牽引し続けているのは、ロンドン、ニューヨーク、東京、パリ、シンガポールの5都市、ということになります。順位が入れ替わったのは、過去に2回だけ。2012年、オリンピック開催を機にロンドンがそれまでの2位から1位にランクアップし、それまで1位だったニューヨークが2位に後退しました。それ以降7年連続で、ロンドンは1位を、ニューヨークは2位をキープしています。

 

東京は、2008年のランキング開始以降ずっと世界4位だったのですが、オリンピック開催が決定した2013年からスコアをじわじわと上げていき、2016年、ついに3位だったパリを抜きました。さらに2017年には2位ニューヨークにかなり肉薄したのですが、最新の2018年では再びスコアを引き離されました。ちなみに、これらトップ5のスコア変動を表しているのが図表3です。

 

トップ都市のスコアの変動を見ると  ・ロンドンはブレグジット投票後も失速することなくトップを独走中。  ・ニューヨークは今年大幅に伸び、ロンドンに追随。世界金融危機からの脱却か。  ・東京は伸びているが、パリも同時多発テロなどによる下落から回復基調。今後、それぞれの五輪開催に向けて都市力をいかに伸ばせるかに3位の座がかかる。 出典:森記念財団都市戦略研究所
[図表3]トップ都市のスコア変動 トップ都市のスコアの変動を見ると
・ロンドンはブレグジット投票後も失速することなくトップを独走中。
・ニューヨークは今年大幅に伸び、ロンドンに追随。世界金融危機からの脱却か。
・東京は伸びているが、パリも同時多発テロなどによる下落から回復基調。今後、それぞれの五輪開催に向けて都市力をいかに伸ばせるかに3位の座がかかる。
出典:森記念財団都市戦略研究所

 

世界トップ3都市の最新の傾向をまとめると、次のようになります。

 

ロンドン……7年連続で総合力1位を維持。オリンピック後の勢いを落とすことなく、さらにスコアを伸ばし、トップを独走している。特に、強みである「文化・交流」分野では、ハイクラス(五ツ星★★★★★)ホテル客室数などを増やし、「文化・交流」の16指標中13指標で上位5位以内に入っている。一方、弱みだった「住宅賃料水準の高さ」「物価水準の高さ」が下がったためにスコアを伸ばし、「居住」分野で17位から11位へとランクアップ。2017~2018年がポンド安だったことも、「経済」分野でプラスに働いた。

 

ニューヨーク……ランキング開始以来のスコアの伸びを見せた。トランプ大統領による法人税率引き下げの好影響で、昨年からトップだった「経済」分野での1位をキープした。「スタートアップ環境」「ワークプレイス充実度」が高評価で、新たな企業形態、新たな働き方への柔軟な対応力を見せた。弱みは、25位に終わった「環境」分野と、28位に終わった「居住」分野だ。特に住宅賃料水準と物価水準が高すぎることがこの都市のネックになっている。

 

東京……トップ2ほどスコアは伸びなかったが、3位の座を堅持した。政府の働き方改革の影響で「総労働時間の短さ」などが評価され、「居住」分野でトップ10入りを果たした。また「GDP成長率」が多少回復し、「ワークプレイス充実度」でも高く評価され、「経済」分野で3位に浮上。「環境」分野では、前年までの「ISO14001取得企業数」での評価は高かったものの、2018年から指標を「環境への取り組み(国連機構変動データポータルNAZCAでの評価)」に切り替えたために評価が一気に下落し、12位から29位へとランクダウンした。

 

「居住」分野で強い一方、「文化・交流」に改善の余地

さて、世界の都市総合力ランキングで現在第3位の東京が、トップ2のロンドン、ニューヨークに追いつき追い越すためには、どうすればいいのでしょうか。図表4は、トップ2のロンドン、ニューヨークと東京の、分野別スコアをレーダーチャートにして重ねたもの。これを見ると、東京はトップ2に対して「居住」分野で強みを持つものの、他の分野ではスコアにまだまだ差があり、特に「文化・交流」で大きく水をあけられているのがわかります。

 

そこから東京の、ロンドン、ニューヨークに対する強みと弱みをまとめたものが図表5になります。

 

レーダーチャート最外辺が80% 出典:森記念財団都市戦略研究所
[図表4]東京の課題と可能性 レーダーチャート最外辺が80%
出典:森記念財団都市戦略研究所

 

出典:森記念財団都市戦略研究所
[図表5]指標別[トップ2都市に対する]東京の強みと弱み 出典:森記念財団都市戦略研究所

 

東京の強みは主に、「経済」分野です。「世界トップ500企業」と「従業者数」、「研究・開発」分野の「特許登録件数」が多いこと。また「文化・交流」の「食事の魅力」は世界トップクラス。東京にあるミシュランガイド星付き飲食店は、三ツ星飲食店が13軒、二ツ星が52軒、一ツ星が165軒。合わせて星付き飲食店230軒は、パリの118軒を上回り、世界一です(2019年版)。

 

また、「居住」の「住宅賃料水準の低さ」も、ロンドン、ニューヨークに比べると驚くほど低く、東京が住みやすい街であることが分かります。「交通・アクセス」では、「公共交通の充実・正確さ」「通勤・通学の利便性」は、高度に発達した鉄道システムを考えれば当然のこと。また、2018年から新たな指標となった「渋滞の少なさ」も、東京の大きな強みになりました。これだけ規模の大きな都市圏でありながら、日常的に深刻な渋滞が発生していないことは奇跡に近いと思われます。

 

逆に東京の弱みは、「経済」の「GDP成長率」が低いこと。日本経済はいまだデフレ脱却を果たしたとはいえず、実質GDP成長率も1%台と低迷しています。また、「優秀な人材確保の容易性」が低いのは、それだけ英語ができる人材が少ないということです。

 

「居住」分野の「社会の自由度・平等さ」のスコアが低いのは、女性の社会進出がまだまだ少ないことの現れ。「環境」分野では、「環境への取り組み」が少ないことに加え、「再生エネルギー比率」「リサイクル率」「CO2排出量の少なさ」が低評価。そして「交通・アクセス」分野では、「国際線直行便就航都市数」の少なさが長年にわたる東京の課題。国際空港でいえば、東京に近い羽田空港は発着数が制限されているし、成田空港は都心から遠すぎるからです。こうした国際空港の使い勝手の悪さは、これまでもずっと、東京の弱みになっています。

 

明治大学
帝京大学
一般社団法人 大都市政策研究機構
特定非営利活動法人 日本危機管理士機構
一般財団法人 森記念財団 明治大学 名誉教授
帝京大学 特任教授
一般社団法人 大都市政策研究機構 理事長
特定非営利活動法人 日本危機管理士機構 理事長
一般財団法人 森記念財団 業務理事
一級建築士

東京の本郷に1947年に生まれ育つ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院修士課程、博士課程(都市計画)を経て、カナダ政府留学生として、カナダ都市計画の権威であるウォータールー大学大学院博士課程(都市地域計画)を修了(Ph.D.)。一級建築士でもある。ODAのシンクタンク(財)国際開発センターなどを経て、富士総合研究所(現、みずほ情報総研)主席研究員の後、現職。現在、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向かう日本と東京のこれからについて語るために国内、海外で幅広く活動。また、東京都の競技施設の基本計画審会の委員も務めた。東京の研究をライフワークとして30年以上にわたり継続してきている。著書多数。テレビ出演多数

著者紹介

株式会社ボルテックス 取締役 CMO
100年企業戦略研究所 所長 

1960年東京都渋谷区生まれ。学習院大学卒業後、大手食品メーカーの経営企画、外資系保険会社での海外ビジネスを経て、2014年にボルテックス入社。マーケティング戦略の責任者(CMO)として国内外の企業、金融機関、コンサルティング会社とのパートナーシップ、チームコンサルティングを推進。「1社でも多くの100年企業を創出する」というボルテックスのミッションを推進し体現していくための社内シンクタンクとして2018年に設置された100年企業戦略研究所の所長を兼務する。趣味はクラシックの演奏と鑑賞。

著者紹介

連載データは語る…「東京」がさらに強い都市になる理由

新・東京進化論

新・東京進化論

市川 宏雄 天崎 日出雄

幻冬舎

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