もはやサラリーマン以下?「勤務医の老後」に立ち込める暗雲

勤務医の平均年収は、1200万円~1400万円ほどといわれてます。一般的なサラリーマンの年収に比べると確かに高額ではありますが、開業資金・子どもの養育費など、「支出」の面も暴額であり、資金繰り悪化の例が散見されています。そこで本記事では、『医師のための新築ワンルーム マンション投資の教科書』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、勤務医の資産形成の現状について紹介します。

開業、子供の養育費…勤務医の出費は計り知れない

◆開業には最低でも5000万円が必要

 

勤務医の中には「将来的には開業したい」と考えている人が少なくありません。「激務にいつまで耐えられるか」という不安や「患者としっかり向き合う治療がしたい」などさまざまな理由があり、自分の医院を持ちたいと考えるようです。

 

ただ、開業に向けては「資金の確保」という大きなハードルがあります。開業に要する資金は診療科によっても開きがありますが、最もコストを抑えやすいとされる精神科をビル内のスペースを借りて開業する場合でも3000万〜4000万円かかります。最も高額とされる整形外科を一戸建ての医院で開業するには2億円近い費用を要することもあるため、資金の確保は容易ではありません。

 

さらに開業後すぐに患者が多数集まって、安定的に経営できるケースはあまり多くありません。ほとんどの場合には地域の人に存在を知ってもらい、信頼を積み上げていく中で少しずつ患者数が増え、持続的に黒字を出せるようになるものです。

 

それまでの期間は赤字に耐える必要があるので、開業時には医院の建物や設備を用意する資金とは別に、一定の運転資金を持っている必要があります。リスクを抑えて開業するためには最低でも5000万円程度の資金が要ると考えておくべきです。

 

◆増える子供の教育費

 

「子供も医師に」と考えて教育に力を入れる方は多く、医師にとっては子供の教育費も大きな負担となります。近年は教育費が急激に高騰しているため、高収入の開業医でも教育費を確保するために生活費を削るケースが少なくありません。

 

文部科学省が発表した2016年度「子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校まですべて私学に通うと約1770万円かかるとされています。2006年度のデータでは約1680万円ですから、わずか8年の間に90万円も値上がりしたことになります。

 

さらに、塾など学校以外での勉強の費用も無視できません。塾への出費には年収によって大きな差がありますが、例えば年収1200万円以上の世帯が小中高と私学に通わせる場合の通塾費の平均は400万円以上となっています。

 

医師になるためにはさらに、大学の医学部に進学しなければなりません。国立大学の場合は6年間の学費が350万円程度ですが、私立大学の医学部では最低でも2000万円、高いところでは4500万円以上という大学も見られます。

 

実家から遠い大学に通う場合には仕送りも必要です。月額15万円の仕送りを6年間続けたら1080万円にのぼります。すべて合計すると7000万〜8000万円かかることも珍しくない教育費の実情が見えてきます。

 

勤務医の出費は計り知れない
勤務医の出費は計り知れない

高給取りの勤務医に「年金暮らし」は難しい?

◆長くなる老後と増える必要な資金

 

日本人の平均寿命は右肩上がりで伸び続けています。2014年にはついに男性も80歳の大台を超えましたが、医学の進歩に伴って今後も伸び続けるものと思われます。

 

勤務医を対象に行ったアンケート調査では、「65歳までに引退したい」という人が4割を占めました。平均寿命との差は15年以上あるので、4割の医師は仕事を辞めた後に、平均するとそれだけの年数を賄うだけの資金を用意する必要があります。

 

さらに、亡くなるまで健康で過ごせるとは限りません。生活に支障なく暮らせる年齢(健康寿命)と平均寿命との差は男性で9年、女性は13年もあります。介護施設などに入所する必要が生じると、場合によっては数千万円単位のお金が必要となります。

 

医師を対象に行われた「老後安心して暮らすには最低いくら資産が必要か」というアンケートでは1億円以上という答えが過半数を占めています。老後が長くなる分、安全かつ快適に暮らすためにより多額の費用が必要になります。

 

◆勤務医の退職金は期待できない

 

勤務医の多くは退職金をもらえないか、もらえる場合でも一般的な水準に比べて低めです。転職することが多い勤務医については「退職金分は給与に含まれている」という考えで報酬が支払われてきたためです。

 

最近では少しずつ退職金を支給する病院も増えてきましたが、サラリーマンの退職金のように勤続年数や貢献度が評価されて増額されるケースはあまり多くありません。大きな企業に勤めるサラリーマンの場合には、平均で2500万円程度の退職金が支給されるので、年金と合わせれば老後の生活資金を十分に賄うことができます。

 

勤務医は勤め先に定年制度があっても、働く意思があれば別の職場を探してその後も医師として仕事をすることもできますが、やはり体力的な限界は避けられません。「身体が動かなくなるまで働かざるを得ない」ということになれば大変ですし、医療事故などの不安も高まります。

 

◆老後の生活費は年金では賄えない

 

退職金が期待できない勤務医にとって、老後の暮らしを支える経済的な柱は年金です。勤務医が受け取る年金にはかつて二つの区分があり、医療法人など民間の病院に勤める医師は「厚生年金」、国公立の病院に勤める医師は「共済年金」と区分されていました。

 

ところが、2015年にこの年金制度が改革され、共済年金を廃して厚生年金一本にまとめられたため、現在では勤務医が老後に受け取るのは国民年金と厚生年金となっています。実際に受給できる額は人によって異なりますが、月額20万〜25万円程度というのが一般的であり、年収にすれば300万円以下です。

 

生活できない額ではありませんが、高収入に慣れている勤務医の世帯にとって年金の範囲で暮らすことは非常に厳しいでしょう。

 

キャリアを積み、勤務年数が長くなれば勤務医の年収は2000万円以上になっていることも少なくありません。年収がいきなり7分の1になるわけですから、それまで馴染んできた暮らしを一変させる必要があります。外食や旅行、ゴルフ、ショッピングなどさまざまな楽しみやゆとりを削り落とさなければ生活が成り立ちません。

 

さらにはその少額の年金すら、現在の水準からどんどん引き下げられていくと予想されています。2019年に行われた政府の「年金財政検証」では、最悪の場合、2043年には年金の積立分がなくなってしまうと報告されました。

 

積立分がなくなれば、現役世代から徴収した年金保険料だけが財源となります。高齢者が圧倒的に増えていく中、2055年には高齢者1人を現役世代1.3人で支える人口構成になると考えられています。つまり1.3人が支払う保険料の分しか年金はもらえないということです。

株式会社For Realize 代表取締役

1974年生まれ。大学卒業後、一部上場不動産会社10年間勤務。 その後、マンションデベロッパーで取締役を務め、2011年株式会社For Realizeを設立して代表取締役に就任。 これまでに扱った不動産取引は数千件以上。 自身でも収益不動産を数多く所有し、マンション経営を行っている。

著者紹介

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岸 洋嗣

幻冬舎メディアコンサルティング

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