
別荘やセカンドハウスをリノベーションして宿泊施設として運用する「ゲストハウス事業投資」が注目されています。維持管理の負担が軽く、コンセプトによっては高い人気も得られる、不動産投資の新たな選択肢です。今回は、築100年の古い民家をリノベーションし、人気のゲストハウスにしたオーナーのインタビューから、ゲストハウス事業投資の可能性を探ります。
両親が暮らしていた「築100年の家」をリノベーション
今回は、ゲストハウス開業・運営に関する実際の声を、インタビュー形式でご紹介します。
お話をうかがったのは、埼玉県秩父市でゲストハウスを運営しているAさん(64歳)です。開業の経緯から、運営の実状や留意点のほか、リノベーション費用・実際の収益、ゲストハウスの仕事のやりがいなど、いろいろな質問にお答えいただきました。
ゲストハウス:「Big Log House」(埼玉県秩父市)
基本情報
●最大収容人数:18名
●延べ床面積:226.4㎡
●築年数:100年程度
●アクセス:西武秩父駅より車で20分
主な特長
★大人数グループ受け入れ可能。社員旅行やファミリー旅行もOK
★吹き抜け構造による風通しのよさを実現
★近くで温泉やラフティングが楽しめる
――ゲストハウス運営をスタートした経緯を教えてください。
娘に勧められて運営を開始しました。ここはもともと私の実家だったのですが、改装してゲストハウスにすることにしました。両親が住んでいたこの家を、何かに役立てたいという想いがありました。
――ゲストハウス運営をされるまでは、どのようなお仕事をされていたのですか?
本業は不動産管理の仕事で、いまもゲストハウスの運営と並行して行っています。
――リノベーションにかかった費用はどのくらいでしたか?
ゲストハウスの開業には、建物の改修だけでなく許可取得やインフラ整備など、さまざまな手続きが伴います。それらをすべて業者に代行してもらいました。リノベ費用に加え、そのような許可取得等のコンサルティング費用などを加味すると、都内のマンションのフルリノベーション費用よりは多くかかっています。

ネットの口コミを通じて、年々利用者が増加
――開業当初から、運営はうまくいっていたのでしょうか?
開始から半年間は、あまり集客がありませんでした。昨年の4月頃からお客さまが増えはじめ、いまでは20代の方々を中心にご利用いただいています。
――始めた当初はあまり集客がなかったとのことでしたが、集客アップのために何か対策をされたのですか?
それが、特別な宣伝は何もしていないのです。集客方法はAirbnbのサイト掲載のみです。ご利用いただいたお客さまが、ブログやSNSでご紹介下さったおかげだと思っています。
――20代の方々がメインユーザーとのことですが、もう少し具体的にお聞きしてもよろしいですか?
20代の学生・社会人2~3年目の方が8割ほどです。8名前後のグループで宿泊されるケースが多く、残りの2割はファミリーで利用される方ですね。外国人観光客の方も多少いらっしゃいますが、ここは公共交通機関での移動が多少不便で、車移動が基本ですので、そのような理由から、海外の方の利用が多くないのではと考えています。皆さん、埼玉県内や東京・千葉など近隣県からいらっしゃるようで、手軽な旅行としてご利用いただいています。
――いらっしゃったお客さまはどのように過ごされるのですか?
時期によりますが、多くの方が長瀞(ながとろ)のラフティングを楽しんでいます。ですから、暖かい時期はとくにたくさんのお客さまがお見えになりますね。また、冬は秩父夜祭にいらっしゃる方も多いです。
――運営するに当たり、工夫されている点はありますか?
「お客さまが何を求めているか」を常に考えることでしょうか。たとえば、うちのゲストハウスにはもともとBBQ用の設備が整っていなかったのですが、BBQ需要が多いことに気づき、テントやコンロなどを買い足して設備を充実させました。
交流や地域活性の貢献に「やりがい」も
――正直なところ、どのくらいの収益に繋がるのでしょうか?
純利回り率※1で表しますと、去年~今年は8%※2を超えてきています。毎年レビューが増え、実績が増えるごとに上がってきているかたちです。来年はオリンピックもあるため期待しています。また、今年スーパーホストになってから稼働率も上がってきたため、より多くの収益が見込めると期待しています。費用の内訳は、定期清掃や消耗品、固定資産税などです。
※1 純利回り率=(売上-費用)/投資額
※2 一般的な不動産投資の標準は3~5%程度と言われている
――ゲストハウス運営のやりがいはありますか?
年代の違う方々や、初めてお会いする方々と接するのは、とても刺激的でやりがいを感じます。また、経済的に大きな影響を与えているとは思っていませんが、自分が生まれ育った地域で活動できるのは嬉しいことです。宿泊されるお客さまに、地元の人しか知らない名店や温泉などをご紹介すると、とても喜んでいただけます。
――ズバリ、今後の課題はなんでしょう?
いまの物件の近くにも所有地があるのですが、将来的にはそこにもゲストハウスを設けて、よりたくさんの人を迎えられるようにしたいですね。
――最後に、ゲストハウス事業をはじめようとしている人にひと言お願いします。
私が開業から運営まで一貫して気にかけているのは「いかに非日常を演出するか」ということです。お客さまに魅力的な非日常を提供することが、われわれの最も大切な仕事のひとつだと思うからです。
<終わりに>
古民家リノベーションによるゲストハウス運営には、収益や節税などの金銭的な利点だけでなく、新たな交流の機会の拡大や地域活性への貢献などのメリットもあります。貰い手がつかず、処分に困っている空き家をお持ちの方に、売却でも賃貸でもない「ゲストハウス事業投資」という新たな選択があることを知っていただけたらと思います。
浅見清夏
ハウスバード株式会社 代表取締役
鈴木結人
マーケティングチームリーダー
竹内康浩
建築デザインチームマネージャー