税務調査官は、ATMの備え付け監視カメラで「脱税を見抜く」

脱税疑惑のある富裕層や企業を調べ、真実を確かめる「税務調査」。遠い他人事のようにも思えますが、普段お世話になっている「クリニック」が調査される例は多いようです。莫大な収入を得る開業医たちの脱税を、調査官たちはどのように見抜いているのでしょうか? 本記事では、みなとみらい税理士法人・髙田一毅税理士の書籍『クリニック税務調査読本』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、クリニックの税務調査の全貌を明かします。

調査官がドクターの関係先を訪ねることもある

税務調査に関しては、クリニックにおける調査とは別に、「反面調査」が行われることがあります。反面調査とは、調査対象者であるドクターと取引関係のある者に対して調査を行うことです。方法は2通りあります。実際に取引関係のある者を訪問するケースと文書により質問するケースです。国税庁のホームページでは次のように記載されています。

 

「税務当局では、取引先など納税者の方以外の方に対する調査を実施しなければ、納税者の方の申告内容に関する正確な事実の把握が困難と認められる場合には、その取引先等に対し、いわゆる反面調査を実施することがあります。反面調査の場合には、事前通知に関する法令上の規定はありませんが、運用上、原則として、あらかじめその対象者の方へ連絡を行うこととしています。」

 

また事務運営指針は以下のようになっています。

 

●反面調査の実施

取引先等に対する反面調査の実施に当たっては、その必要性と反面調査先への事前連絡の適否を十分検討する。

(注)反面調査の実施に当たっては、反面調査である旨を取引先等に明示した上で実施することに留意する。

 

しかしながら調査現場においては、修正申告で決着させたい調査官が、更正処分(面倒な処理がともなうため、一般的に調査官は嫌がります)による決着を回避するために「反面調査をする」ということをちらつかせることもあります。これは一種の脅しともいえ、改善が望まれます。

 

いずれにしても相手に確認をするので、当事者であるドクターに税務調査が入っていることがわかってしまいます。ドクターにとっては好ましくない調査であるといえます。

 

たとえば、税務調査時にチェックが厳しい商品券については、百貨店に確認すれば、購入時期、その金種と金額、のしの記載までがわかります。かつてはドクターが商品券を渡しても3万円、5万円程度では、特段問題視されることはありませんでした。しかしながらいまでは金額がたとえ僅少であっても、相手方に対して反面調査が行われることが実際にあるのです。反面先については、病診連携先や診診連携先のドクターをはじめ、医師会長や歯科医師会長、出入り業者にいたるまで様々です。

 

また、ゴルフプレーフィーについても、今ではメンバー表が電算化されているので、ゴルフ場に確認すれば、プレーをした日時、氏名等が即座に把握できるのです。さらに、家事費の混入として指摘されることが多い家電製品にしても、配送伝票の電算化により、配送先を即座に把握できます。

 

あるドクターは、所有する賃貸アパートに取り付けたエアコンの代金を医療法人の経費として計上していたところ、配送先から発覚し、法人経費として否認されるだけではなく、理事長に対する認定賞与とされてしまいました。往復ビンタとなってしまったのです。

 

このようにIT時代になったことによって、電子記録の形で反面資料を容易にかつ迅速に入手することが可能となりました。そのため、税務署はかつてに比べて反面調査をはるかに行いやすくなったといえるでしょう。

 

歯科医院特有の反面調査としては、次の2つが主なものです。一つは歯科技工所に対するものです。ドクターに対する事業概況の聞き取りの際に、自由診療に関する技工物を外注している技工所の確認があります。調査の過程で、自由診療収入の計上に疑問を持った場合には、歯科技工所へ確認することになります。納品書や技工指示書に不一致が見受けられ、計上漏れが発覚すると重加算税が課せられます。

 

もう一つは、金属屑に関する計上漏れです。歯科医院では治療時に撤去冠が発生します。こうした金属は廃棄物処理業者が回収し、精製したうえで買い取るのです。総勘定元帳を調べて、買取金額の計上が見当たらない場合には、100%廃棄物処理業者に対して確認が入ります。またこの場合、指摘された計上漏れ金額については重加算税が課せられます。

 

最近では、銀行のATMも要注意です。ATM備え付けカメラの録画データから、現金を引き出している人物を特定するのです。地方在住の非常勤理事である義父の口座から、都内ATMにおいて院長夫人がキャッシュカードで現金を引き出していたことが発覚したケースがありました。その結果、義父へ支払っていた役員報酬は否認され、理事長に対する認定賞与とされました。

 

備え付けカメラの録画データでバレた…
備え付けカメラの録画データでバレた…

客を装って「内偵調査」が行われることも…

税務調査着手前に内偵調査が行われることもあります。他業種のケースを例にすると、美容院や飲食店で売り上げ計上に関して不正が行われている疑いがあるような場合には、税務署員が客を装って髪を切りにいったり食事にいったりすることがあります。これは内偵調査の典型例です。

 

もっとも、クリニックに関しては他の業種と比較すると、内偵調査を実施しづらいところがあります。というのも診療を受けなければならないからです。

 

原則として、健康保険証の提示をともなう保険診療については、内偵調査は行われていないといわれております。しかしながら自由診療は別です。健康保険証を提示する必要がないため、婦人科におけるピルの処方や皮膚科におけるピーリング等は内偵調査の対象となっているという話を耳にします。

みなとみらい税理士法人 髙田会計事務所 所長 税理士

1965年生まれ。兵庫県出身。
1984年栄光学園高等学校卒業。
1988年上智大学文学部新聞学科卒業。
2002年税理士登録。
2003年神奈川県鎌倉市に髙田会計事務所を開業。
2011年税理士法人化をして神奈川県横浜市西区へ移転。みなとみらい税理士法人髙田会計事務所(東京地方税理士会横浜中央支部所属)となり現在に至る。2016年4月現在、スタッフ総数63名、顧問先総数837件の医科歯科に特化した会計事務所の所長を務め、これまでのクリニック開院サポート実績は600件を超える。

著者紹介

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髙田 一毅

幻冬舎メディアコンサルティング

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