もし消費税を廃止したら?経済学の教授が予想する「阿鼻叫喚」

消費税が10%になって、約2ヵ月が経過しました。さまざまな協議を経て実現した今回の消費増税ですが、しかし、税収確保の手段として、本当にこれしか選択肢がなかったのでしょうか? 今回は、消費税増税の問題点と代替案について考察します。塚崎公義教授の目からウロコの経済談義、連載第43回目です。

消費税は「ほかの税より優れている」わけではない

消費税が上がり、約2ヵ月が経過しました。生活が苦しくなったのみならず、軽減税率等々も現場に負担をかけているようです。「いっそのこと、消費税を廃止してほしい」と考えている読者も少なくないでしょう。

 

筆者も、増税というと消費増税を指すような現在の風潮には大いに疑問を感じています。消費税がほかの税より優れている、というわけではないからです。財務省によれば、消費税の利点は、「高齢者も含めて幅広く負担すること」「税収が景気に左右されにくいこと」だそうですが、いずれも疑問です。

 

消費税が上がると、消費者物価指数が上がります。高齢者に支払われる年金は、基本的に物価連動ですから、高齢者が受け取る年金額も増えることになり、実質的に高齢者は増税分をあまり負担しないのです。

 

もうひとつ、「税収が景気に左右されない」というのはデメリットです。所得税は税収が景気に左右されるため、景気が悪化すると税収が落ち込み、人々の手取り額の落ち込みを緩和してくれるのに、消費税にはそれがないからです。

 

景気が過熱してくると、所得税が大幅に増えて人々の手取り額の増加を抑え、景気の過熱を抑制してくれますが、消費税にはそれもないのです。そもそも買い物をするたびに「罰金」のように毎回税金を取られるのでは、消費の意欲が薄れてしまう人もいるでしょう。それは景気を悪化させ、税収を減少させる要因ともなりかねません。

来年消費税を廃止したら、流通・経済は大混乱に!?

しかし筆者は、「だから来年から消費税を廃止すべきだ」とは考えていません。そんなことをしたら経済が大混乱するからです。

 

まず、猛烈な買い控えが発生が予想されます。「来年買えばいいものは、絶対に年内には買わない」という人が多数派でしょうから。そうした需要が一気に年初に吹き出しますから、物流や流通は大混乱でしょうね。とくに、腐りやすいものやサービスなどは、作り置きができないため、生産者は廃止前は失業同然となり、廃止後は徹夜続きになりかねません。

 

もしかすると、仕入れたときには消費税を支払ったのに、売ったときには客から消費税を受け取れずに損をした、という小売店が出てくるかもしれませんね。

 

買い控えの反動だけではありません。給料が減らないのに物価が大幅に値下がりするわけですから、消費が爆発的に増えるでしょう。しかし、労働力不足ですから、当初の混乱が収まったあとも、労働力不足や物不足が続き、物価は上がるでしょう。

 

悪くすると、現在税込1100円のものが、一度は1000円で買えるようになっても、遠からず1100円に値上がりするかもしれません。「人手不足の居酒屋は、来店客数が増やせないから、来店客数が減税前の水準まで減るように値上げをする」といったイメージですね。

 

そうなると、日銀が金融の引き締めをして、景気をわざと悪くしてインフレや物不足を緩和せざるを得なくなるはずです。結果的には、超大型減税をした割には景気もそれほどよくならず、私たちの生活もそれほど改善せず、財政赤字の拡大だけが残る、という可能性もあるでしょう。

 

こうした結果を避けるためには、時間をかけて2%ずつ消費税率を引き下げていく、といったことが必要でしょうね。

 

消費増税より、子どものいない人の相続税率引き上げを

消費税を廃止して、そのまま財政赤字を放置するという選択肢は、MMT(Modern Monetary Theory、現代金融理論)論者なら採用するのでしょうが、さすがの積極財政論者の筆者でも採用したくありません。政府の借金が巨額になると、インフレのリスクが高まりかねないからです。現実的な問題として、財務省も許さないでしょう。代替財源が必要です。筆者は、相続税と固定資産税を考えています。

 

とくに強調したいのが、被相続人に配偶者も子も親もいない場合の相続税増税です。この場合、兄弟姉妹が相続するわけですが、その際の相続税率を100%近くにまで引き上げるのです。

 

兄弟姉妹にとっては「棚からボタ餅」でしょうから、増税されても痛税感は小さいでしょうし、被相続人としても兄弟姉妹に相続させるために遺産を遺す人は少ないでしょうから、ほかの税を増税するより抵抗は少ないでしょう。

 

公平の観点からいっても、子がいない高齢者が受け取っている年金は、他人の子が納めた年金保険料が原資となっていますので、使い残したぶんは次世代のために政府に返すのがよいと思われます。

 

現実を見ても、この案が優れていることがわかります。現在、結婚しない人や結婚しても子どものいない人が増えています。したがって、数十年待てば、そうした人から巨額の相続税が期待できるわけです。

固定資産税を増税すれば、東京一極集中の緩和も実現!

筆者がもうひとつ推奨している代替財源は、固定資産税です。これは、相続税とはまったく違う理由なのですが、東京一極集中を緩和するためです。

 

固定資産税を増税すれば、地価が高い東京都心に住むコストが上がります。したがって、東京都心にいれば大いに稼げる企業や人、都心が大好きな人だけが残り、そうでない人は出て行くでしょう。

 

それにより、都心の混雑が緩和され、首都直下地震の際の混乱も軽減され、一方で、地方の人口減少もひと息つくでしょう。一石数鳥の政策だといえそうです。

 

本稿は、以上です。

 

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塚崎 公義

久留米大学教授

 

久留米大学商学部 教授

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。
著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。
趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載塚崎公義教授の目からウロコの経済談義

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