日本のガソリン価格はニューヨークで決まる…需要と供給の関係

「価格は需要と供給で決まる」というのが経済学の考え方ですが、ガソリン価格はどのように決まっているのでしょうか。やはり、ガソリンの価格も「世界の需給」を反映して動いているのです。塚崎公義(久留米大学教授)がお送りする「目からウロコの経済談義」シリーズ。今回はガソリンの価格はどこで決まるのかについて見ていきます。塚崎公義教授の目からウロコの経済談義、連載第37回目です。

ガソリン価格も需要と供給で決まっている?

価格は需要(買い注文)と供給(売り注文)が一致する所に決まります。需要が供給より多ければ価格が上がり、少なければ下がるからです。詳しくは、拙稿『「価格」は需要と供給が自然と決める…神の見えざる手の仕組み』を御参照下さい。

 

では、ガソリンの価格はどのように決まっているのでしょうか。じつはガソリン価格も受給を反映しているのです。需給を反映して動いているようには見えないのですが、それは国内の需給ではなく、世界の需給を反映しているからなのです。

 

原油を売り買いしたい人は世界中にいますが、彼らは皆、ニューヨークで取引をしています。ドルを売り買いしたい人も世界中にいますが、彼らも皆、ニューヨークで取引しています。

 

買い手がニューヨークまで買いに行くのは、売り手が見つかるからです。売り手がニューヨークまで売りに行くのは、買い手が見つかるからです。堂々巡りのようですが、市場というのは、皆が集まると一層多くの人が集まるように出来ているのです。

 

もちろん、東京でも原油やドルの取引は行われていますが、ニューヨークで決まった値段を参考にして取引される場合が多いようですので、実質的にニューヨークで取引されていると考えて良いでしょう。

 

原油やドルを売り買いしている人の中には、色々な人がいるでしょう。実際にドルや原油が欲しい人や売りたい人も多いでしょうし、「ドルや原油が値上がりしそうだから、今のうちに買っておいて、値上がりしたら売って儲けよう」という「バクチ打ち」もいるでしょう。しかし、いずれにしても需要と供給が一致する所に値段が決まる事だけは間違いありません。

 

ニューヨーク市場が日本のガソリン価格を動かす

ガソリンスタンドは、銀行でドルを買い、そのドルで原油を買い、それを日本に運んで精製してガソリンスタンドで従業員を雇って販売しています。

 

ニューヨークで決まっているのはドル建て価格で、アラブ諸国からの輸入価格もドルで決まっていますから、そのドルの値段に銀行で買ったドルの値段を掛けた値が原油の仕入れ価格になります。原油の値段もドルの値段も、結構大幅に上下しますから、これがガソリンの価格を動かしているわけですね。ニューヨーク市場が日本のガソリン価格を動かしている、というわけです。

 

これに日本まで運んで精製するコスト、ガソリンスタンドの従業員の給料、ガソリン税、等々を加え、最後に「適正利潤」を加えて売値を決めているわけですが、こうしたコストはあまり上下しないので、これはガソリン価格を動かしている要因とは言い難いでしょう。

 

日本国内のガソリン価格は、日本国内のガソリンの需要と供給の関係で動くはずですが、そうではないのでしょうか? じつは、見方を変えれば、ガソリン価格は日本国内の需要と供給で動いているとも言えます。ただ、供給が事実上無限に伸縮するのです。ガソリンスタンドは、仕入れ価格にコストと適正利潤を上乗せして売値を決めます。これは、「需要が増えても減っても決めた値段でいくらでも売る」という決め方です。

 

イモの値段であれば、イモが値下がりすれば「それなら売らない」という農家が出てきますが、「それでも売る」という農家も残ります。したがって、「値段が上がれば供給が増え、値段が下がれば供給が減る」わけです。

 

一方で、ガソリンの場合は「決めた値段より少しでも安ければ全く売らないし、決めた値段で在庫を全部売るので、決めた値段より高くなっても売る量は増えない」という事なのですね。

 

もちろん、国内の需給が全く影響しない、というわけではありません。需要が多ければ各社が「適正利潤」を少しだけ高めに設定するかも知れません。値上げをしてライバルに客を奪われても、残る客も多いだろうから、残った客から大きな利益を得られれば良い、と考える店もあるでしょうから。

 

どこかのガソリン精製工場に事故があって供給が減った場合などは、各社とも比較的大きく「適正利潤」を確保するかも知れません。ライバルの売れるガソリンの量に限りがあるならば、国内のガソリンの供給量が限られているわけですから、値上げをしても客をライバルに奪われる可能性が小さいですから。

 

しかし、そうした変動は、ニューヨークでのドルや原油の価格変動と比べれば、はるかに小さいものだと言えるでしょう。

 

今回は、以上です。

 

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塚崎 公義

久留米大学教授

 

久留米大学商学部 教授

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。
著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。
趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載塚崎公義教授の目からウロコの経済談義

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