4人世帯、月8万の赤字…節約しても「ローン破綻」は免れない

夢のマイホームを購入する際、多くの人が利用する住宅ローン。通常、専門家のアドバイスを受けながら無理のない返済計画を立てますが、長い人生、何が起こるかわかりません。思わぬトラブルによって返済困難な状況に陥ると、最悪の場合、家を失った上に多額の借金が残ってしまいます。そこで本記事では、不動産の任意売却の専門家である矢田倫基氏の書籍『住宅ローンが払えなくなったら読む本』(幻冬舎MC)より一部を抜粋し、「住宅ローン破綻」の危険性について解説します。

住宅ローン「ボーナス払い併用」で高まる破綻のリスク

住宅ローンの支払いには「ボーナス払い併用」という方法があります。その名のとおり、ボーナス月は多めに支払うことで、通常月の支払いを軽減できるというものです。通常月の負担が小さくなるため、より大きなローンを組みやすくなりますが、この方法には大きな落とし穴が隠れています。

 

従業員の生活に直結する月々の給与については企業も慎重に取り扱い、安易には減額しません。しかしボーナスは業績によって大幅に増減し、会社の収支が悪化すれば支給されないこともあり得ます。

 

「ボーナス払い併用」を採用している人は、大幅に減額されたり支給されなかったりしても、ボーナス月にはローンを多めに支払わねばなりません。好業績が続いているときに「たくさんもらえているから」とボーナスを当てにした返済計画を立てていると、会社の業績が悪化した際には、支払いの負担が重くのしかかることになります。

 

さらに近年は、経済の先行きを不安視して内部留保を増やす企業が少なくありません。財務省の発表によると、2015年度に企業が利益剰余金として社内にためた内部留保は、377兆8689億円で過去最高額となりました。企業経営が困難を極め、財務リスクに慎重になる中で、本来は会社の儲けを社員に還元する意味あいのあるボーナスが適正に支給されないケースが増えているのです。

もはや完全に崩壊した「終身雇用制度」

個人事業主に比べてサラリーマンのほうが融資を受けやすいのは、将来的にも安定して収入を得られると考えられているためです。

 

安定収入の基本となるのは安定的な雇用です。「終身雇用制度」が普及しだした1950年ごろから、日本ではこの制度を掲げる企業が多かったため、一度正社員として就職できれば、大きな問題を起こさない限り定年まで同じ職場で働き続けることができました。

 

ところが近年、経済成長が鈍化し、企業の業績が停滞する中で「終身雇用制度」の維持は企業にとって非常に難しくなりつつあります。業績が右肩下がりになれば、人員コストの削減が求められるようになるため、早期退職や希望退職を募る企業が増えています。

 

2016年春には、不正経理が明らかとなった東芝による1万人規模のリストラが話題になりました。家電の雄とされてきたパナソニックも2010年から2015年の5年間に従業員の3割以上にあたる約13万人(関連会社を含む)を削減しています。その他にもソニーや日立製作所、JT(日本たばこ産業)、電通など、誰もが名前を知る大手企業でも、近年は大規模な人員整理が行われてきました。

 

日本企業の特徴であり、サラリーマンに対する住宅ローン提供のベースとなってきた「終身雇用制度」はもはや完全に崩壊していると考えるべきでしょう。

「家賃と同じ支払い」にのせられると破綻する

住宅販売のチラシにはよく「家賃と同じ支払いで家が買える」といううたい文句が記載されています。たとえば8.5万円の家賃を支払っているのなら、ほぼ同額の住宅ローンの支払いを家計の中から賄えるということです。

 

たしかに3000万円を返済期間35年・金利1%で借りれば、ほぼ同額のローン返済額になりますから、手に残るものがない家賃を払うくらいなら、同額のローン返済で家が買えるほうがいい、というのが住まいを提供するデベロッパーや販売会社のいい分です。

 

一見、正しそうに見えますが、リスクという面では大きな違いがあります。まず、完済するまでは本当の意味ではマイホームではありません。

 

登記簿上、融資元の銀行から「抵当権」が付くことになります。そうすると、住宅ローンの返済がもし途中でできなくなれば、いくら登記簿上所有者であっても、権利上は銀行に絶対的に劣ります。債務超過状態であれば、勝手に売ることもできず、最後は強制的に競売にかけられてしまうのです。

 

借り手の経済事情が変わっても住宅ローンの返済額は同じままですが、一方、賃貸住宅の家賃はより安価な物件に住み替えることで、引き下げることができます。もしリストラに遭っても、賃貸居住者は引っ越しにより「住」の負担を収入に見合ったものに変えることができるのです。

 

また、持ち家にはローンの支払い以外の出費があります。固定資産税や都市計画税といった税金に加え、マンションの場合には管理費や修繕積立金なども負担しなければなりません。場合によっては月額数万円になることもあり、購入前にしっかり確認しておかないと、思わぬコスト負担に苦しめられることもあり得ます。

 

3000万円の住宅ローンを利用して、月額8.5万円を支払うつもりだったのに、月額2.5万円の管理費・修繕積立金が課されると、4000万円のローンを返済するのとほぼ同じ負担額になってしまいます。

「突然の離婚」がローン返済を直撃する

厚生労働省が発表している資料を見ると、2015年の離婚件数は22万5000組となっています。

 

離婚および離婚率は1960年代から2002年までほぼ一貫して増加してきました。特に離婚率は1970年には10.1%だったのが2015年には35.4%にまで上昇しています。1970年には10組に1組だったのが、2015年には3組に1組が離婚しているのです。

 

離婚件数は2002年の29万件をピークに減少傾向が続いていますが、結婚の件数も減少しているため、離婚率はほぼ横ばいとなっています。3組に1組という高い割合で「高止まりしている」というのが正しい見方でしょう。

 

特に最近の傾向として「熟年離婚」の増加が指摘されています。25~34歳の離婚率が低下しているのに対し、35~55歳の層では離婚率が上昇しており、住宅ローンを支払っている真っ最中といえる世代の離婚に歯止めがかからない状態です。

 

離婚時にはお金のことが大きな問題になります。財産分与するにあたっても、マイホームを持っている世帯では最大の財産は家の場合が多いので、お互いが納得するように分けるのは困難です。売却して分けようにも残債が多い状態では、売却代金がローン返済に消えてしまいなにも残りません。家をなくした上、借金だけが残るケースも多いため、結局は売らずに「母子が住み続ける」などの選択をすることになります。

 

マイホームに住み続ける母子に対し、夫の側は慰謝料や養育費などの負担に加え、自身の住まいを確保し、生活していくためのお金も必要です。ギリギリだった住宅ローンの支払いができなくなり、破綻にいたるケースが後を絶たないのです。

 

共働きの場合には返済原資となっていた収入が大幅に減ってしまうという問題も発生します。共働き世帯では一般的に、夫婦2人分の収入をもとにローンの支払額を設定しているため、収入が1人分になってしまうと返済は非常に難しくなります。

 

所有権や連帯保証など複雑な問題が絡むため、本来は夫婦が協力し合って解決する必要がありますが、離婚した夫婦が同じ方向を向いて解決を図ることは簡単ではありません。離婚にいたる過程でしばしば感情的なもつれが生じるため、冷静な判断ができず有効な対策をとれないケースが少なくないのです。

烏丸リアルマネジメント株式会社 代表取締役

1974年生まれ。大阪府出身。
大学を卒業後、大手ゼネコンで技術者として従事。その後、不動産コンサルティング会社に転向し、実績が認められ代表取締役に就任。そこでの経験を生かし、日本で初となる法律業務も扱う任意売却専門会社「烏丸リアルマネジメント」を設立し、現在に至る。金融機関や士業者からの信頼も厚く、任意売却の専門家として各地で講師も務める。多くのローン困窮者を救ってきた面談は「心のカウンセリング」と呼ばれ、関西圏だけでなく全国からも相談者が後を絶たない。
任意売却コンサルタント、宅地建物取引士、日本アドラー心理学会会員。

著者紹介

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本記事は、書籍『住宅ローンが払えなくなったら読む本』(幻冬舎MC)の一部抜粋、及び再編集したものです。最新の情報には対応していない場合もございますので、予めご了承ください。

住宅ローンが払えなくなったら読む本

住宅ローンが払えなくなったら読む本

著者 矢田 倫基   監修 矢田 明日香

幻冬舎メディアコンサルティング

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