緊急!家計を支える「父の不動産」の相続税が…2億6千万円!?

会社を辞め、埼玉で賃貸管理業を行っていたCさん。平穏に暮らしていた最中、農家を営む父が余命1カ月であり、「2億6000万円」の相続税が発生することが判明。しかし、Cさん家族が自由に使えるお金はわずか500万円。「もう目の前が真っ暗になってしまいました」と同氏は語るが…。※本記事は、株式会社福田財産コンサルの福田郁雄氏、木村祐司税理士事務所の木村祐司税理士の共著書『余命一カ月の相続税対策』(幻冬舎MC)の一部抜粋です。書籍は2015年刊行であり、現在の税制とは異なる点があります。あくまで過去に起きた相続トラブルの一例としてお読みください。

会社を早期退職し父の賃貸管理業を手伝っていたCさん

埼玉県さいたま市のCさん(53歳)は、近郊農家の長男です。長年、会社勤めをしていましたが、早期退職して、お父さんが農業のかたわら経営している賃貸管理業を手伝っていました。

 

お父さんの資産は、市街化区域内農地が約3000坪、アパートが3棟、そのほか駐車場、貸し農地、資材置き場があり、相続税評価額は10億円に達します。ただし、借入金が2億円あるので、正味の資産額は8億円です。

 

アパートなどからは年間2000万円の賃料収入がありますが、固定資産税と管理費に年間500万円、ローンの支払いに同じく年間500万円、所得税・住民税が年間500万円ほどかかり、生計を一緒にしているCさん家族が自由に使えるのはわずか500万円しかありません。土地資産は多いものの現金が少ない、典型的な都市農家です。

 

私たちが相談を受けたとき、Cさんのお父さんは82歳。長年、農業に携わってこられましたが、数年前からはのんびり隠居生活を送っていらっしゃいました。ところが急に体調を崩して入院。検査の結果、肝臓がんで余命1カ月と言われてしまったのです。

 

「いったい相続税はいくら払うのか? どうやって支払えばよいのか? 今からでも節税する方法はないのか? もう目の前が真っ暗になってしまいました」とCさんは当時言っていました。

 

もう何をどうすべきかわからない…
もう何をどうすべきかわからない…

 

相談を受けた私たちから見た課題は次の三つでした。

 

① とにかく時間がない

② 現状(相続税評価額、相続税額、納税原資の把握)を早急に把握する必要がある

③ 節税が最も緊急度が高く、また重要性もある

 

◆財産診断からのステップ

 

Cさんのお父さんは、意識ははっきりしていらっしゃいました。そこで、私たちが提案したのは、時価と相続税評価額の乖離が大きい収益不動産の取得です。具体的には、次のように進めていきました。

 

① 財産診断

名寄帳(固定資産評価の一覧)や確定申告書、ローン返済表、案内図を預かり、財産診断を3日で行いました。通常は1週間かけて現地確認、財産目録作成、相続税評価額算出、相続財産ごとの収益性分析、不良資産・優良資産の判断を行うのですが、当時は急を要するというので、他の業務をすべてキャンセルし、3日で行いました。

 

② 相続税額の算出

相続税額を概算で算出したところトータルで2億6000万円ほどになりました。配偶者控除を満額使うと1億3000万円です。しかし、現金はほとんどなく、そのままでは土地の一部を売却して納税することになりそうでした。

 

③ 相続財産の収益性分析と不良資産・優良資産の判別

相続財産一つひとつの収益性を分析したところ、アパート、駐車場、貸し農地、資材置き場のすべてにおいて収益性が悪く、総資産利益率(ROA)はわずか2%でした。未利用地というわけではないのですが、いずれもうまく利用できていない土地ばかりだったからです。そこで、特に収益性の悪い貸し農地を売却して納税資金に充てることを基本方針としました。

 

④ 時価と相続税評価額の乖離が大きい収益不動産の取得

時価と相続税評価額の乖離が大きく、かつ収益性があり、資産価値が落ちにくい優良不動産を探すのは大変なことです。不動産市場に売りに出ている物件のうち、条件に合うのはせいぜい100件に1件あるかどうかでしょう。

 

個人のオーナーが所有していて、オーナーチェンジで売り出されている物件は、建物や設備の不具合が隠れているケースが多く、表面利回りのよさだけにひかれて購入すると、失敗することがあります。

 

その点、信頼のできる大手や準大手の不動産会社が商品化したものであれば、一定の品質と利回りが確保されているので、不安は少ないといえます。ただし、中には割高なものも混じっているので、収入と支出を慎重に見なければ、実質利回りの低いものを買ってしまい、あとあとローンの支払いに窮することになりかねません。

他の資産家から不動産を譲ってもらうことに成功

Cさんのケースでも、なかなか優良物件が見つかりませんでした。そこで私たちが考えたのは、過去に相続税対策として収益不動産を購入された資産家の皆さんに協力していただくことでした。すなわち、以前相続税対策で買った収益不動産を時価で譲ってもらえないか相談するということです。

 

コンサルティングを行った私(福田)は皆さんが優良不動産を購入しているのを知っていますし、過去のトラックレコード(実績数値)から実際に入っている家賃と実際にかかっている経費が推測できるので、安心してお勧めできます。問題は、本当にお譲りいただけるかどうかでしたが、取得から5年以上経ち、譲渡所得に対する課税が短期譲渡所得の約39%(所得税、住民税の合計)から長期譲渡所得の約20%(同)に下がるケースを中心にお願いしてみました。

 

また、プライベートカンパニーで所有している場合は、譲渡益に対する課税は所有期間の短期・長期にかかわらず法人税の対象となるので、プライベートカンパニーで所有しているオーナーにもお願いしてみました。

 

私(福田)がサポートした多くのオーナーは過去に、相続対策として優良な収益不動産を購入し、満足していただいているので、話を聞いてくれました。手放すのはもったいないと思いつつ、自分も過去に相続対策で苦労した経験があるので、事情をお話しすると協力していただけることが多いのです。

 

Cさんのケースでも、ある資産家から、「また新しい物件をタイミングを見て購入するから、今回はお譲りしますよ。時間がないのだから、同じ資産家として協力させていただきます」と、ほぼ満室状態の賃貸マンションを譲っていただきました。

評価額は売買契約完了後「すぐに下がる」

こうして、約4億円の賃貸マンションの売買契約を余命宣告の2週間後に完了し、手付金1000万円を振り込みました。残りの代金は、銀行から全額ローンを借り入れることにしました。この賃貸マンションの銀行による担保評価は約2億円だったので、もともと相続時に売却しようと思っていた市街化区域内農地に別件担保を付けて融資を受けることにしたのです。

 

融資の審査にはさらに2週間ほどかかる見込みでしたが、賃貸マンションの売買契約に「ローン特約」を付けることは控えました。「ローン特約」とは、万が一、予定していたローンが借りられなかった場合、白紙解約になるという条項です。

 

買い主にとってはリスクを避けられるというメリットがありますが、相続対策で賃貸マンションを購入する場合、「ローン特約」が付いていると契約がまだ成立していないと税務署から見なされる可能性があります。もし、ローンの承認が下りる前に相続が発生すれば、せっかくの節税対策は無意味になってしまいます。

 

そこでCさんのお父さんには、「ローン特約」を付けず、万が一、融資額が削られたら土地を売って自己資金を出してもらう予定で売買契約を結んでもらいました。その結果、決済が終わっていなくても、契約時点で賃貸マンションの所有権はCさんのお父さんに移り、即、相続税評価額が下がりました。

 

決済と所有権移転登記が終わらないと、相続税評価額が本当に落ちるのか心配される方もいます。決済前に亡くなってしまったらどうしようと心配されるのです。しかし、心配はいりません。契約が完結しているのなら大丈夫です。

 

資産は購入契約の締結時に買い主に移転し、決済の残金は売り主に対する負債となるからです。これはいろいろなケースの判例から見ても支持された考え方です。

 

Cさんのお父さんの場合、建物については相続税評価額(固定資産税評価額に同じ)が時価より3割ほど低く、土地については路線価による評価からさらに貸家建付地と小規模宅地等の特例により評価額が下がり、計算したところ約1億円の相続税評価となりました。購入価格の4億円と比べ、約3億円評価が落ちたことになります。

 

こうして、8億円の相続税評価額が5億円になりました。相続税額は総額で1億3000万円となり、対策前の半額です。見方を変えれば、4億円の不動産を1億3000万円値引きして買ったのと同じといえます。さらに、配偶者控除をフルに使うと相続税額は6500万円にまで下がります。相続税は累進課税なので、評価額の減額以上に税額が下がるのです。

 

今後、購入した賃貸マンションの価値が下がったとしても、こうした節税効果の分ほど下がることはないでしょう。年間3000万円の家賃収入があり、経費は600万円なので、手取りで2400万円の収入となります。ローンの返済が年間2000万円なので多少の空室リスクにも対応できます。手元にお金はさほど残りませんが、ローンの元金が毎月減っていくので、純資産価格は増えていきます。

 

資産家にとっての本当の利益は、毎年のキャッシュフローを増やすことではなく、あくまでバランスシート上の純資産が増加することです。

安定したキャッシュフローで年2回海外旅行

Cさんのお父さんはその後、半年ほど長生きされました。相続税が半減したので、売却する土地の面積も半分になりましたが、実際には想定分の土地を売却しました。

 

なぜかというと、ローンを減らしておきたかったことと、二次相続対策としてもうひとつ収益不動産を買うことにしたからです。その頭金として土地を余分に売りました。地主が土地を売るとなると世間の目が気になりますが、相続税の支払いのためと説明できるので、この機会にたくさん土地を売ることにしたのです。本音では売りたい地主さんがたくさんいて、都心や中心部のビルやマンションに組み替えたいという方が増えています。早めに行動した人の方が有利になります。

 

なお、依頼者である長男のCさんは、プライベートカンパニーを設立して、会社の社長として自覚を持って賃貸経営に専念するようになりました。時間とお金にゆとりもできて、年2回の海外旅行では、奥さんに好きなだけ買い物をさせてあげ、自分は高級料理に舌鼓を打っています。

 

安定したキャッシュフローを得ることにより、余裕のある生活が実現し、趣味も付き合う人も増え、人生を楽しんでいます。最近では社会に貢献する楽しみを覚え、ボランティア活動にも積極的です。本来の資産の価値に見合った生活を実現した、まさにハッピーエンドといえるでしょう。

株式会社福田財産コンサル 代表取締役

1959年生まれ。ミサワホームの資産活用部門責任者、アパマンショップの不動産投資会社の責任者を経験後、2004 年に独立系資産経営コンサルティング会社として、株式会社福田コンサルを設立。特に不動産を活用した相続税対策のコンサルティングに絶大な強みを持ち、17億円も相続税を減らすなど同業他社の追随を許さない専門力を持つ。コンサルティングしてきた資産は総額1200億円超。ファイナンシャルプランナー、公認不動産コンサルティングマスターおよび相続対策専門士統括講師、相続アドバイザー養成講座講師。相続税対策や不動産投資に関する複数の著書あり。

著者紹介

木村祐司税理士事務所 税理士・アセットコンサルタント

1967年生まれ。中学卒業後、タンカーの甲板員から始まりブルーカラーの仕事にいくつか従事する中で、給料から天引きされる税金に疑問と興味を持ち税理士を志す。1998年12月税理士試験に合格。当初はコンサルティングファームでファイナンシャルディレクターとしての経験を積み、企業会計実務の知見を得た後に木村祐司税理士事務所を開設、現在に至る。
経営者や資産家の財務・税務コンサルティングを強みとし、絶対的な信頼感のもと企業の資金調達、経営管理、節税対策や資産管理、事業承継までを任されている。資産3億円以上を得意とし、相続税・贈与税だけではなく、資産運用の観点からトータル的なTAXプランニングの提案・実行をおこなう。

著者紹介

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福田 郁雄,木村 祐司

幻冬舎メディアコンサルティング

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