町中にゴミがあふれ…「日本が財政破綻」するとどうなるのか?

日本経済は深刻な事態に陥っており、財政破綻も決して非現実的なシナリオではありません。特に、資産を円建ての現預金や国債などのペーパー・マネーに集中させていれば、その損害は計り知れません。大切な資産を「防衛」するためには、起こり得るリスクによって、生活がどう変化するのかを想定する必要があるのです。ファイナンシャルプランナー兼認定テクニカルアナリストである田中徹郎氏が解説します。

可能性は低いが、「財政破綻」のリスクはゼロではない

財政破綻というのは、いくつかある「テールリスク」の一つにすぎません。

 

テールリスクとは、発生する確率は低いものの、実際に発生してしまうと、非常に大きな損失をもたらすリスクのことです。財政破綻や金融危機のほか、予測し得ない天変地異や大規模なテロ、暴動なども、テールリスクといえます。

 

発生する可能性は低いとはいえ、過去にはロシア危機やリーマン・ショックのように、テールリスクが現実のものとなった例はいくつもあります。絶対に起こらないわけではない以上、万一日本が財政破綻したとき、私たちの身にどんなことが降りかかってくるかは、ある程度予想しておいたほうがよいでしょう。

 

企業や個人が破産したときは、不動産などの資産を差し押さえられるということが起こりますが、国の場合はたとえ破綻しても、たとえば国土の一部を失うといった規定はありません。しかし、日本国の金庫が空っぽになり、かつ負債(国債)だけは残りますから、国民は計り知れないダメージを受けることになります。どんなことが起こる可能性があるのか、いくつか例を挙げてみましょう。

 

① 金融機関が軒並み破綻する

 

一般的に、銀行や生命保険会社などの金融機関は、多額の日本国債を保有しています。たとえば銀行は、個人から預金を集める一方で、それらの運用先として日本国債に投資します。日本国債は破綻のリスクが極めて小さいと考えられてきたので、安定運用の観点から、日本国債のニーズは高かったのです。

 

このような状況で、日本国債が無価値になるか、あるいはその価値が極端に低くなってしまうと、金融機関の資産は急速に劣化します。結果、個人の預金については返還が難しい状態になると考えてよいでしょう。円預金に限らず、外貨預金も同様です。

 

法律上は、一金融機関につき1000万円まで預金保護される(ペイオフ)ということになっていますが、財政破綻の局面におけるペイオフ実行は期待薄です。

 

ペイオフの担い手は預金保険機構ですが、この組織は政府・日本銀行・民間金融機関がほぼ等分に出資して成立しています。そのため、平常時に一金融機関が破綻した場合には機能するとしても、出資元である国自体が破綻してしまったときに、この仕組みが機能するとは到底思えません。

 

よく富裕層の方から「1000万円の預貯金を10以上の金融機関でしている」というような話を聞きますが、これだけで安心するのは大間違いということです。

 

なお銀行ばかりでなく、生命保険会社も長期の国債を大量に保有していますから、はなはだしい資産の劣化に見舞われるはずです。株式が大暴落するでしょうから、多くの証券会社も経営的に難しい状況に追い込まれると見ておくべきでしょう。

 

このようにして業態を問わず、国内の金融機関は壊滅的な打撃を受けると考えられます。

 

② 物価が急騰する

 

財政破綻した国の通貨は国際的な信認が低下するため、当然ながら為替は極端な円安方向に進みます。その結果としてもたらされるのが、物価の急騰です。

 

日本はエネルギーから食品まで、生活必需品の大部分を輸入に頼っているため、円安が進みすぎると、確実にモノの値段が跳ね上がります。その結果、つい最近まで100円で買えたパンが、いきなり200円まで値上がりした――なんてことが、ザラに起こってくるかもしれません。まさか国民全員が飢えるような事態にはならないでしょうが、経済的な弱者の中には、食糧の確保に苦労するような人も出てくる可能性があります。

 

ハイパーインフレに陥ったジンバブエでは、100兆ジンバブエドル紙幣が発行された
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財政破綻時は「マクロ経済スライド」も意味をなさない

③ 倒産する民間企業が増え、失業率が跳ね上がる

 

金融機関以外にも、経営的に厳しくなる企業が出てくるでしょう。たとえば、グローバル化が進んでおらず、製品の大半を国内で販売しているなど、「国内依存度」が高い企業は危険です。倒産が相次いだ結果、町に失業者があふれる――といった、悲惨な事態に陥ることも考えられます。

 

ギリシャの例を思い出してみてください。2010年からIMFの支援を受けていましたが、破綻寸前だった2013年5月時点の失業率は27.5%、若年層にいたっては、約65%が無職という状況でした。今なお財政再建中です。

 

途方もない数字のようですが、日本でも同じことが起こるかもしれないのです。

 

④ 年金制度が崩壊する

 

国民年金は、その半分が国庫から支払われているので、国庫が空っぽになってしまえば、予定通りの支給は事実上不可能になります。1円ももらえなくなることはないかもしれませんが、半減、あるいはそれ以下に減らされる可能性も、十分にありえます。

 

また、税制が破綻した場合、世の中は激しいインフレになっているはずですが、年金には「マクロ経済スライド」という、給付額がインフレ率に合わせて調整される仕組みがあります。ただ、だからといって安心はできません。その調整による年金の上昇率は、一定に抑えられているため、激しいインフレ時だとほとんど意味をもたないからです。年金の実質的な価値は、インフレ分だけ減少すると考えておくべきでしょう。

 

退職世代には、生活費の大部分を年金に頼っている人も多いので、財政破綻時の生活は、ずいぶん厳しいものになると予想されます。

 

⑤ あらゆる行政サービスが滞る

 

国から給料を受け取っていた公務員も、窮地に追い込まれます。人員削減がすすめられ、何とか首の皮がつながっても、給料の大幅ダウンは必至です。

 

ギリシャでもイタリアでも、財政難によって役所が閉まった時期がありました。運営のための資金が途切れて役所が閉まれば、あらゆる行政サービスが滞ります。不便になるばかりでなく、ゴミ収集車が回ってこなくなって、町中にゴミがあふれ、異臭が漂う事態になるかもしれません。一時、イタリアのナポリでは、町の至るところにゴミがうずたかく積み上げられ、せっかくの名勝が台無しになったことを、ご記憶の方も多いのではないでしょうか?

 

そのほかには、「教育の質が下がる」「医療費の負担が何倍にも膨れ上がる」といった状況も想定されます。

 

国が財政破綻すると、今挙げたような恐ろしい事態が十分に起こり得ます。が、最悪な状況は未来永劫続くわけではありません。速やかにIMFに支援を要請し、その管理の下で財政を再建していくことになるからです。したがって、その後の経済再建さえうまく進めば、せいぜい2~3年のうちに最悪期は脱することができると考えられます。

 

しかし、個人レベルでは、問題はより深刻です。もし、財政破綻の時点で資産の大半を失っていたとしたら、その人が人生を元通りの水準まで軌道修正するには、相当の時間を要することでしょう。

株式会社銀座なみきF P事務所 代表

ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。神戸市出身。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。おもにマーケティング畑を歩む。2004年に退社後、ソニー生命を経て独立。現在に至る。 現職では、会社員時代から独自に積み上げてきた豊富な金融・経済の知識を武器として、資産運用アドバイスを展開する。その理論の明確さで幅広い支持を集め、 数多くの富裕層の顧客を抱えるようになる。自身も株式投資歴は長く、不動産投資も行う。また趣味として クラシック・コイン、紙幣などの収集を手掛けており、 経験に裏打ちされたわかりやすい助言には定評がある。 著書に『50歳からの30年‼ ゆうゆう生きるお金学 あなた!年率7%で資産運用できますか?』(こう書房)がある。

著者紹介

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※本記事は、『日本が財政破綻しても資産を奪われない10の投資』(幻冬舎MC)の一部を抜粋、及び再編集したものです。最新の内容には対応してない場合がございます。予めご了承ください。

日本が財政破綻しても 資産を奪われない10の投資

日本が財政破綻しても 資産を奪われない10の投資

田中 徹郎

幻冬舎メディアコンサルティング

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