危ない「共有名義」の不動産…家族でもムリだとわかる事例

不動産の相続の場合、親族間の「共有名義」にしてしまったため、後々トラブルに発展するケースが多発しています。せっかくの相続財産を「負動産」にしてしまわないためにも、トラブルの実例をあらかじめ学んでおきましょう。本記事では、現在までに2000件以上の物件トラブルの解決をサポートしてきた松原昌洙氏が、身近な実例を7つ紹介します。

実家を子が相続し「兄弟の共有名義」にする場合が多い

共有名義不動産となるケースで最も多いのは、相続による場合と夫婦が共同購入する場合の2つであり、このいずれについてもトラブルとなる可能性が非常に大きいといえます。本記事では、相続あるいは夫婦による共同購入の結果、不動産を共有することになった共有者がトラブルや大きな問題に巻き込まれた実例を見ていきましょう。

 

それらの具体的なエピソードを通して、不動産を安易に共有名義にすること、そして共有名義のまま放置しておくことの危険性を深く実感できるはずです。

 

◆家族や親族の〈住まい〉を相続してトラブルになったケース

 

相続で共有名義となった不動産に関するトラブル事例をみていきましょう。相続の場合、共有の対象となる不動産として最も一般的なのは被相続人が暮らしていた家や土地です。なかでも、亡くなった親の住んでいた実家を子どもたちが相続し、兄弟の共有名義で登記する例は非常に多くみられます。以下では、そのように家族や親族の住まいを相続して共有名義とした結果、トラブルや問題になった事例として、次の7つを順に紹介していきましょう。

 

【事例1】共同で相続した空き家の売り値をめぐって揉め事に

【事例2】共有名義不動産に住んでいる共有者の兄が家賃を支払ってくれない

【事例3】共有名義不動産に住んでいる、共有者ではない叔父が家賃を支払ってくれない

【事例4】姉が持分比率以上の権利を要求してきた

【事例5】共有名義不動産を弟たちが勝手に売りに出した

【事例6】土地の持分と区分所有権を兄に売りたい

【事例7】共有者の弟が実家の売却に突然反対した

 

【事例1】共同で相続した空き家の売り値をめぐって揉め事に

 

Aさんは、父親の死去により、埼玉県にある実家の一軒家を兄と相続しました。しかし、Aさん兄弟はともに都内に家を構えているため、実家には住まない予定です。そこで、Aさんは「空き家にしておくのはもったいないので、売却してお金に換えよう」と兄に対して提案しました。

 

しかし、兄の方はいずれ賃貸に出したいと考えており、売ることには消極的です。「下手に人に貸すと、後々、賃料の配分をめぐってトラブルになるのではないか……」と案じているため、Aさんは機会があるごとに売却を促していますが、兄の気持ちを覆すことはできずにいます。

 

このように、共有者の一方は売却したいという意向を持っているのに対して、他方が反対の姿勢を示しているような場合、そのままずるずると共有状態が続くのが一般的です。また、共有者がみな売却に賛成しているものの、売り値をめぐって意見が分かれているようなケースもあります。たとえば、都内の家を相続した人から以下のような相談を受けたことがあります。

 

「5年前に母が亡くなり、遺産分割を経て私と兄の共有名義となった一軒家があります。某不動産会社に依頼し、販売活動をしていただいておりましたが、価格が高いせいなのか、まったく買い手が付く見込みがありません。兄は安く売りたくないとの一点張りですが、私は多少値段が低くなっても早く売りたいと思っています」

 

これらのケースも示すように、共有名義の対象が実家である場合には、兄弟姉妹の中に「思い出があるのでできれば残しておきたい」「親が頑張って建てた家なのだから安く買われたくない」という思いを持つ人がおり、共有名義不動産を売却したいと望んでもそう簡単に運ばないことが多いのです。

 

【事例2】共有名義不動産に住んでいる共有者の兄が家賃を支払ってくれない

 

【事例1】では、相続した一軒家に誰も住まず空き家となっていましたが、次に紹介するのは、相続した不動産に共有者の1人が住んでいたことがトラブルの原因となったケースです。Bさんは5年前に父を亡くし、実家の家と土地を兄と持分2分の1ずつの割合で相続しました。

 

この実家には兄とその家族が父の生前から住んでいました。Bさんは、兄が家族とそのまま住み続けることに対しては特に不満を持っていませんでしたが、「自分にも共有者として実家の家と土地を使用する権利があるのだから、いくらかのお金は払ってほしい」という思いを抱いていました。

 

そこで、意を決して「この家を人に貸したら少なくとも20万円の家賃収入が入り、2分の1の持分を持つ自分は10万円を手にできるはず。そこまでとはいわないが、せめて8万円程度は家賃として自分に払ってくれないか」と兄に対して要望を伝えました。

 

しかし、兄の方は、「親の面倒を見たのは俺だ。お前は何をしたというのだ。持分を2分の1も渡してやったのに、そのうえ家賃まで取ろうというのか」と反発し、頑として払おうとしません。Bさんも、弟という立場からそれ以上は強く意見を言うことができずにいます。

 

【事例3】共有名義不動産に住んでいる、共有者ではない叔父が家賃を支払ってくれない

 

【事例2】のように、相続した実家の家に共有者である兄弟の1人、とりわけ家を継いだ長男が住むのはよくあることでしょう。一方で、相続した不動産に共有者ではない親族が住み続ける例も、数はさほど多くありませんが存在します。

 

Cさんは、父親の所有していた福岡県の戸建てを母親と3人姉妹で相続しました。持分は母が2分の1、Cさんと姉、妹それぞれが6分の1ずつです。相続した実家には現在、Cさんの叔父が住んでいます。しかし、叔父は生活保護を受けており、家賃をまったく支払ってくれません(固定資産税だけは支払っています)。

 

Cさんは、かねてより実家の売却の話を家族に持ちかけていましたが、「叔父は高齢なので住み替えさせるのはかわいそう」と母や他の姉妹から反対されています。ちなみに、叔父には家族の持分を買い取るだけの資金力はありません。

 

Cさんは、今後、共有者のうち誰かの相続が発生したときに、叔父との関係が複雑化し面倒な事態になることを懸念しており、「後顧の憂いがないように今のうちに実家の問題を解決しておきたい」と考えています。

相続後「空き家」になっていた物件を弟が勝手に売却!

【事例4】姉が持分比率以上の権利を要求してきた

 

次に紹介するケースは、相続した不動産に関して共有者が持分比率以上の権利を要求してトラブルとなった事例です。Dさんは2年前に父親を亡くし、残された60坪の土地を姉とともに2人で相続しました。それぞれの持分は父の遺言書に従って2分の1ずつとし、相続登記も済ませています。

 

Dさんは昔から強欲な姉とはあまり仲が良くなく、そのまま共有状態を続けることには抵抗があったので、あるとき思いきって土地の売却の話を姉に持ちかけました。すると、姉は「40坪は私のもの!」と言い張り、土地の3分の2を現物分割するよう要求してきたのです。しかし、姉の持分は前述のように2分の1であり、本来、分割を求めることができるのは30坪までのはずです。

 

Dさんは「姉が無茶な要求をしてくる間は土地を売ることができない。どうしたらよいのか……」と悩み続けています。

 

【事例5】共有名義不動産を弟たちが勝手に売りに出した

 

共有していた不動産が、いつの間にか売りに出されていた……そんなショッキングなトラブルもあります。Eさんは、9年前に2人の弟とともに母親が住んでいた一軒家を相続しました。兄弟はみな別に住まいを構えていたので、相続した家は空き家のままとなっていました。

 

ところがEさんは最近、弟たちが地元の不動産屋に依頼してその家を売りに出していることを知りました。売り出し価格の相談はもちろん、「売却する」という事前の連絡もありませんでした。「昔から弟たちはわがままだったが、勝手に売られるのは納得いかない!」とEさんは憤りを覚えました。

 

もともとEさんは、いずれ弟2人から持分を買い取り、家を自分の単独所有としたうえで娘夫婦に住ませたいとの意向を持っていました。Eさんは、今後自分がとるべき選択肢としては、次の4つがあると考えています。

 

① やむを得ず弟たち主導の売却に応じる。

② 断固、売却に応じない。

③ 適正価格にて弟2人の持分を買い受ける。

④ 自分の持分だけを売却する。

 

しかし、兄弟間の複雑な感情などが邪魔をして、話はまとまりそうにない状況です。Eさんは、「このようなトラブルが起こった場合、他の人たちはどのように解決しているのだろうか。できれば誰かに良いアドバイスをもらいたい」と思っています。

 

【事例6】土地の持分と区分所有権を兄に売りたい

 

次に紹介するのは、相続した不動産の権利の中に、持分だけでなく区分所有権が含まれていた例です。1棟の建物の中に独立した複数の住居や店舗、事務所などがある場合、それぞれの独立した部分の所有権を区分所有権といいます。

 

Fさんは、兄とともに親から3階建てのビルを相続しました。それぞれの持分の割合や、あるいは相続した建物区分所有権は次のような形になっています。

 

●Fさん土地3分の1と建物2階・3階部分の区分所有権

●兄土地3分の2と建物1階部分の区分所有権

 

Fさんの兄は、現在、1階で居酒屋を営んでいます。1階部分については兄が区分所有権を持っているので、居酒屋を営業すること自体にはもちろん何の問題もありません。しかし、本来、Fさんが区分所有権を持つ2階と3階も、兄は勝手に利用していました。

 

しかも、賃料は支払われていません。そのため、Fさんは「このまま自分で使えないのなら持っていても仕方がない。いっそのことすべての権利を買い取ってもらいたい」と土地の持分と区分所有権の購入を兄に促していますが、話は一向に前に進みません。第三者に売ることも選択肢の1つとして検討したものの、Fさんは兄が親の面倒を長年見てきたことには感謝の気持ちを持っていたので、できれば2人の間で穏便に解決したいと望んでいます。

 

【事例7】共有者の弟が実家の売却に突然反対した

 

Gさんは母親の死により、大阪にある築30年の物件を弟とともに相続しました。遺産分割協議書の作成も済ませ、持分2分の1ずつで各自の登記も完了しています。この物件は誰も住まない空き家となったため、Gさんと弟の間では母の三回忌が済んだら売却することで話がまとまっていました。

 

ところがその後、弟はどういうわけか突然「売却には反対だ」と言い出し、Gさんの持分の買い取りも提案してきました。Gさんは「そこまで言うのなら」と持分を売ることを決めましたが、弟はいつまで経っても買い取る様子を見せません。

 

弟に不信感を抱き始めたGさんは当事者同士での解決は難しいと考え、調停、もしくは裁判を起こすことを検討しています。もっとも、裁判所の手続きを利用するとなると、費用や時間がかかることは避けられません。そのためGさんは「より負担の少ない方法はないだろうか」と別の解決策も探っているところです。

株式会社中央プロパティー 代表取締役社長
住宅ローンアドバイザー(社団法人全日本不動産協会認定)
相続アドバイザー(NPO 法人相続アドバイザー協議会認定) 

1970年生まれ。
2011年に、業界で唯一共有名義不動産の仲介を扱う株式会社中央プロパティーを創業。弁護士、司法書士、不動産鑑定士などの専門家とともに問題解決に取り組む体制を確立。現在までに2000件以上のトラブル解決をサポート。その実績から、共有名義不動産問題の第一人者として知られる。

著書に『あぶない!! 共有名義不動産』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。

著者紹介

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あぶない!! 共有名義不動産

あぶない!! 共有名義不動産

松原 昌洙

幻冬舎メディアコンサルティング

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