田舎の富裕層ほど危ない?税務署員に「狙われやすい人」の特徴

富裕層に忍び寄る「税務調査官」。脱税疑惑のある家へ赴き、タンスやトイレなど、ありとあらゆる場所をチェックする……。「調査される側」である私人としては、税務署員になかなか良い印象を抱けないものですが、実際ところ、どのような業務を行っているのでしょうか? 本記事では、相続税専門税理士の岡野雄志氏が、税務署員の実情を紹介します。

そもそも何故「税務署員」を目指したのか?

国税庁全体もかなりの縦割り社会ですが、税務署内部もかなり上下関係が厳しく、ノリも体育会系寄りのようです。

 

●どんな人が税務職員を目指すのか

 

一般的な感覚からすると、希望の進路として税務職員という仕事がパッと思いつくことはあまり想像できませんが、税務職員を目指す人というのはどのようなきっかけで税務職員という仕事を知り、そして志すのでしょうか。よく聞く話としては、もともと公務員志望の人が、選択肢の1つとして受験を決めるパターンです。

 

税務調査官は実は、その専門性ゆえに、国家公務員の一般職よりも給与が高いのです。公務員はこのご時世にあっても比較的安定した職業ですから、さらに給与も良いとなれば、そういった条件に惹かれて志す人は多いでしょう。また、親が税務職員なので自分も、という人も多いようです。

 

●異動が多いのは癒着を防ぐため

 

国税庁や国税局、そして税務署は、癒着などの不祥事に非常に神経を使っています。同じ地域に同じ調査官が長く勤務していると、そういった癒着の可能性が高まるとして、税務署では頻繁にジョブローテーションを実施しています。

 

一般的に、署長や副署長などの管理職、および国税局勤務の職員の場合には1~2年、普通の調査官であれば3~4年で異動することが多いようです。また税務署では、職員と納税者が必要以上に近づかないよう、とても気を使っています。

 

たとえば、調査官と納税者は一緒に昼休憩をとることができません。国家公務員の倫理規程でもそのように定められています。ときどきお客様から「調査官の分の昼ご飯も用意したほうが良いか」と質問を受けることがありますが、その必要はないということです。また、セクハラや飲酒関連の不祥事にも非常に厳しいそうです。

 

公務員という身分ゆえに、こういった不祥事が明るみになれば、世間から非常に厳しいバッシングを受けることになるからです。世間の反感をかえば課税や徴収にも支障を来す可能性があるので、これら不祥事を防ぐために並々ならぬ努力をしているようです。

税務調査官の「エリートコース」とは?

税務署内の部門としては、やはり法人課税部門が人気も高く、また花形のようです。しかし、そもそもの採用絶対数が多いため(資産課税部門などは希望者も採用数も少ない)、特段倍率が高いなどということはないようです。

 

また、国税局内でいえば、「査察部」(通称マルサ)が人気の部署だそうです。マルサというのは「査」の字を丸で囲った字に由来する通称です。「マルサの女」でご存知の人も多いでしょう。しかし実情としては、査察部よりも、似て非なる「資料調査課」(通称コメ、もしくはリョウチョウ)のほうがエリートコースなのだそうです。

 

コメという通称は、「資料調査課」の「料」の字のなかの「米」からきています。リョウチョウは略称です。査察部を、納税者のもとに防弾チョッキを着て乗り込んで行くイメージの、いわゆる足を使う行動派だとすれば、対する資料調査課は頭脳派の少数精鋭部隊といったところでしょうか。査察部は強制調査(犯罪捜査)担当なので、証拠がなければ乗り込むことはできません(令状が必要なので)。

 

いってしまえば、査察部は相手がクロであることがわかったうえで調査を行うのですが、任意調査担当の資料調査課は証拠をつかむため、グレーな相手に令状なしで挑むのです。ただ、査察部、資料調査課のどちらも国税局の花形部署であり、その一方で、非常に厳しい現場であるという点では共通しています。

 

また、税務署のエリートコースというと、5大税務署への配属もそれにあたります。特に5大税務署の署長ともなると本当に優秀な、一握りの人しかなれません。

各税務署や管轄国税局で調査に差はあるのか?

相続税に限っていえば、田舎ほど調査されやすく、また調査自体も厳しいといわれています。

 

田舎は地価が安く、相続税額が基礎控除額内におさまらないようなケースが少ないため、1件1件の事案にさける時間が多くなり、結果的に調査も厳しくなりがちなのです。一方都会の場合には資産家が多く、また地価も高いため、相続税の納税者自体が非常に多いという事情があります。

 

そもそもの件数が多いため、納税額の少ない相続人は、明らかな誤りがあるとき以外は調査対象にすらならないことが多いようです。なぜなら、納税額の高い人のほうが、結果的に追徴課税額も高くなるからです。相続税は10〜55%の累進課税なので、納税額が多いほど税率が高くなります。

 

たとえば、仮に1000万円の申告漏れが見つかったとして、10%の税率の人だと100万円しか追徴できませんが、55%の税率の人だと550万円追徴できます。同じ額を指摘しても取れる税額が違うのなら、税額の多い、つまり税率が高い人から重点的に調査したほうが税務署にとって効率的だということです。

 

「徴収額」が大きくなる人を調査する
「徴収額」が大きくなる人を調査する

 

つまり、税務署内での納税額ランキングで、上位に位置する納税者ほど調査に入られやすいということです。

税務調査官に課せられた「ノルマ」とは?

国家公務員である税務調査官ですが、実は調査官にもノルマがあります。税務調査を何件行ったかという「調査件数」のノルマです。一般的に、相続税の税務調査を担う資産課税部門の場合、ノルマは15~20件といわれています。

 

ただ、すでに述べたように、調査件数には地域差があるため、実際のノルマは各税務署で違うようです。他の税目に比べると相続税の税務調査のノルマ件数は少ないのですが、それは調査1件あたりにかかる時間が比較的長いためです。

 

年15~20件といわれると少なく感じるかもしれませんが、確定申告時期や年末、年度末は調査が行えないことに加えて、相続税の税務調査には、土地評価などの複雑な要素が多いため、決して楽なノルマではないようです。

 

最近では、経験者不足や人手不足の影響で、ノルマの数はさらに下がっているらしいです。もちろん国税庁が表立って「ノルマ」の存在を公言しているわけではありませんし、別にノルマに達しなかったからといって罰則があるわけでもありません。ただ、出世には大きくかかわってくるようです。

 

また、納税者にいくら追徴課税できたかを、税務署内では「増差」(増減差額の略)といいますが、この増差税額にノルマはありません。なぜ増差税額にノルマがないのかというと、金額にノルマを課してしまうと、調査官がノルマを果たすために「重加算税」のような重い追徴課税を、相続人に無理やり課してしまうリスクがあるからです。

 

ノルマではないものの当然、人事考課の参考にはされるため、出世を望む税務職員のほとんどは、この増差税額を非常に気にしているそうです。

岡野雄志税理士事務所 所長 税理士

相続税専門の税理士。早稲田大学商学部卒業。2005年、横浜市に事務所を設立。開業以来、相続税還付や申告、対策など相続税関連の案件を600件以上手がける。全国各地で332件以上の相続税還付に成功。2014年12月『納めてしまった相続税が驚くほど戻ってくる本』(あさ出版)を出版。2015年2月に新横浜駅の事務所に移転。

著者紹介

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※本記事の情報は、すべて『相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル』刊行当時のものです。最新の内容には対応してない場合がございます。予めご了承ください。

相続税専門税理士が教える 相続税の税務調査完全対応マニュアル

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岡野 雄志

幻冬舎メディアコンサルティング

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