地下に「厚み5mのゴミの層」がある土地…驚きの売却価格は!?

相続税の基礎控除額が引き下げられ、課税対象となる被相続人が増えた結果、「資金が足りずに税金が払えない」という人が急増しています。このような事態を避けるには、生前からの相続対策が必要不可欠です。しかし、資金調達のため不動産を売ろうとしても、そこには思わぬトラブルが……。本記事では、不動産コンサルタントの加瀬義明氏が、「超問題物件」売却の事例を紹介します。

地盤調査で「厚さ5mに及ぶゴミの層」の存在が判明

Aさんは、相続税の資金を事前に用意しておくことを考えて、神奈川県横浜市に所有していた不動産を建て売り業者に売却することを決めました。駐車場として使っていた土地であり、広さは約600平方メートルになります。

 

しかし、売買交渉を進めていく中で、大きな問題が発覚しました。念のため、地盤調査を行ったところ、地面の中から大量のゴミが見つかったのです。具体的には地上から2メートル下の場所に、プラスチックやビニール、木の破片、小さなコンクリート片などが埋まっていました。しかも、その〝ゴミの層〞は厚みが5メートルにも及んでいました。なぜ、これほどの量のゴミが埋められていたのか――。

 

もともと、その一帯は大手私鉄会社によって新興の住宅地として開発されてきた場所であり、造成する際に土地の高低差を解消するために、大量のゴミでかさ上げされていたのです。今では考えられないことですが、昔はこうしたことがごく当たり前のように行われていました。いずれにせよ、そのままの状態では売るのに差し障りがあります。

 

すべてのゴミを取り除くために、どのくらいの費用が必要となるのかを試算したところ、多く見積もって5000万、6000万円はかかることがわかりました。一方、建て売り業者に、「ゴミがない状態でいくらで購入してくれるか」と尋ねたところ、1億5000万円という返事が戻ってきました。

 

まさか「ゴミの層」があるなんて…
まさか「ゴミの層」があるなんて…

 

◆地下水の汚染も発覚!

 

それなら、ゴミを取り除く費用を差し引いたとしても、1億円近い代金が入るはずと思っていたところ、建て売り業者は「念のため土壌汚染の調査もしてほしい」と求めてきました。そこで、調査会社に依頼して土壌汚染の有無についても調べました。すると、ゴミ自体には汚染物質が見当たらなかったものの、ゴミの層から1メートルほど下を流れていた地下水にシアンなどの化学物質が基準値よりも多く含まれていることが判明しました。

 

それを知った建て売り業者は、地下水に関しても何らかの対策をとることを要求してきました。しかし、ゴミを除去してさらに地下水についても対応するとなると、その費用だけでも業者の提示してきた買い値(1億5000万円)と同じくらいの見積もりの提示がありました。Aさんの子どもたちは、「そんなゴミが埋まっている土地を残されても困るからお父さんの代で解決してほしい」と言っています。

 

しかし、建て売り業者の要求に応じて売れば、売買益を得るどころか持ち出しになってしまいます。Aさんは大変に悩みました。大変なことになってしまった、このままでは相続税が払えなくなる……何かよい解決策はないのか――。

 

◆幸運の女神がAさんに微笑む

 

しかし、そこから思わぬ形で、幸運の女神がAさんに微笑み始めました。あるアパート建築業者が現況のままで1億円で買ってもいいと申し出てくれたのです。

 

そのアパート業者は、「地面に基礎を打てるのなら問題ない、大きなコンクリートがあるわけでもなくゴミの上に土が2メートル埋まっているのなら大丈夫、地下水に化学物質が含まれていても表層よりだいぶ深いところであり、井戸を掘るわけではないので関係ない」というスタンスでした。こうして、土地は無事1億円で売ることができ、Aさんは納税資金を確保することができました。

 

この売却案件をサポートしていた私も最終的に話が決まったときには、心から「本当によかった」と喜びました。

 

最悪の場合、土地が売れても一銭にもならず、それどころか諸費用を入れたらマイナスになってしまうおそれがあったのです。それが、1億円を得ることができたのですから、Aさんはまさに「地獄から天国」へ駆け上がるような気持ちだったでしょう。このような理想的な結果となったのも、Aさんが相続を意識して早くから余裕をもって不動産の売却を進めていたからなのです。

 

もし、相続が発生してから土地の処分に動いていたら、他に選択肢はなく建て売り業者に不承不承売らざるを得なかったかもしれません。そのような意味で、このAさんのケースは「相続税対策は早め早めの準備が何よりも大事である」ことを雄弁に伝えてくれる格好の例といえるかもしれません。

私道の所有者である会社がすでに解散していた事例

Bさんは、相続税の納税資金を工面するために、所有していた不動産を処分することを計画しました。売却する予定の家と土地は現在は人に貸しており、[図表]のように道路を挟んで向こう両隣に家が立ち並んでいました。売却に関する相談を受けて、私が公図等で確認したところ、道路は公道ではなく私道でした。

 

[図表]Bさんの不動産と周囲の状況

 

私道の場合、上下水道を敷き直すことが必要になったときに、その持ち主の承諾が必要になります。そこで、Bさんの土地をスムーズに売却できるよう、事前に私道の所有者から承諾書を得ておくことにしました。まず不動産登記簿で「誰が私道の持ち主なのだろう」と調べてみたところ、そこには意外な事実が――何と、私道の所有者はすでに存在しない会社だったのです。

 

もともとその私道に面した住宅地(図の甲の部分)は不動産会社のa社によって開発された場所でした。a社は、当初、甲だけではなく乙地の部分も含めて開発することを考えていたのですが、乙地の所有者から売却の許可を得られなかったために断念しました。それでも、「いつかチャンスがあれば乙地を手がけたい」と思い、乙地に通じる道を自社の所有としておいたのです。

 

◆代表清算人を探し出す

 

こうしてa社が私道を持ち続けたまま年月が過ぎ去っていったのですが、その間に、同社は不動産事業をやめて会社を解散してしまいました。しかし、自社の商業登記簿を閉鎖した後も、a社は私道を処分しなかったので、実質的にもまた不動産登記簿上も同社が私道を保有する状態が続いていたのです。

 

そこで、a社から私道の使用に関して承諾を得るために、私は同社の代表清算人を探しました。代表清算人とは、会社が解散したあとに残された資産の処分や管理等を行うために置かれる役職であり、解散した会社の元役員などが就任します。私道等の権利関係についても代表清算人が承諾を与えることが可能です。

 

したがって、代表清算人を見つけることができれば、私道の承諾書を得ることも期待できるわけです。逆にいえば、代表清算人を見つけることができなければ、承諾書を入手できず、Bさんの不動産を売却できなくなる危険がありました。さまざまなルートをたどった結果、最終的にはa社の代表清算人を見つけ、承諾書を得ることに成功しました。そしてその後、その私道の持ち分を安価で売ってもらうこともできました。

 

その代表清算人の方はすでにご高齢だったので、もし探し出すのに手間取っていたら承諾書すら手に入らない可能性もあったでしょう。こうして、無事、持ち分を確保できた結果、Bさんは何の問題もなく不動産を売却し納税資金を確保することができたのです。

株式会社湘南財産パートナーズ 代表取締役

不動産相続関連のセミナーを頻繁に行うなど相続に強い不動産コンサルタントとして精力的に活動中。宅地建物取引士はもちろん、公認不動産コンサルティングマスター相続対策専門士、1級ファイナンシャルプランニング技能士、ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、米国公認不動産経営管理士(CPM®)、米国公認商業用不動産投資顧問(CCIM®)、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士など数々の資格を持つ不動産・相続のプロフェッショナル。

著者紹介

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加瀬 義明

幻冬舎メディアコンサルティング

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