日本経済にかかる悲観バイアス…情報を正しく読むためには?

「世の中の情報は、現実よりも悲観的なものが多」く、日本経済も実態以上に悪くいわれがちなもののひとつです。今回は「悲観バイアス」について見ていきます。塚崎公義教授の目からウロコの経済談義、連載第34回目です。

儲かっている人の大半は黙っている

自分が金持ちだと自慢したがる人もいますが、少数派でしょう。自慢すれば人々から嫌われる可能性も高いですし、強盗や税務署が寄って来るでしょうから(笑)。

 

企業についても同様です。円安ドル高になると、輸出企業は儲かりますが、黙っています。「儲かった」というと、労働組合が賃上げを要求して来ますし、下請け部品メーカーが値上げを要求して来ますし、悪くすると税務署の調査も来るでしょう。

 

一方で、輸入企業(輸入原材料を多く使う企業、以下同様)は「円安で苦しい。今年はボーナスは諦めてくれ。下請け企業は値下げを頼む。政府には支援をお願いしたい」というわけですね。

 

そこで、聞こえて来る声だけを聞いていると、日本経済は円安で痛んでいるように感じます。しかし、それは真実の姿よりも悲観的な見方です。

 

日本は輸出入が大体同額であって、輸出企業がドルを高く売れて嬉しい分と輸入企業がドルを高く買わされて悲しい分は、大体同じなのですから。

 

翌年円高ドル安になると、今度は輸入企業が黙り、輸出企業が「ボーナスは無しだ」、等々と大声を出します。そこで、やはり日本経済は痛んでいるように感じます。気をつけたいものです。

 

評論家は、明るい話より暗い話をしたがります。「何も問題ありません」というより、「A、Bという問題点があり、C、Dというリスクがある」という方が知的に見えますし、話も面白いですから。

 

「幸せな家庭は一様に幸せであるが、不幸な家庭はそれぞれに不幸である」。これはトルストイの小説の一部ですが、経済も同様です。したがって、「何も問題のない経済」の話は、聞いていてつまらないのに、「多くの問題を抱えた経済」の話は、聞いていて興味が持ってもらえるのです。

 

暗い予測は、外れても批判されません。暗い予測が外れた時は、皆がハッピーだからです。一方で、明るい予測が外れた時は批判されます。皆が不幸だからです(笑)。

 

評論家以外でも、顧客の不安を煽って商品を売りつけようとする人もいます。「年金は破綻するので、老後は年金では暮らせないから、我が社の商品で運用しましょう」といった具合です。誤った情報を信じないように、そして変な商品を売りつけられないように、気をつけたいものです。

 

平成日本の特殊事情もありそうです。30年間も不景気が続くと、「景気が良くなる」といって予想が外れ続けた評論家は呼ばれなくなり、「景気が良くなるから設備投資をしよう」といった経営者は失脚したので、物事を暗く考える人のみが表舞台に残っている、ということもあるかもしれませんね。

受け取った情報より「少しだけ明るい姿」を想像する

上記のように、儲かっていない企業ばかり発言したり、評論家が暗い話をしたがったりするので、それを取材したマスコミ情報も暗い話が多くなります。

 

加えて、そもそもマスコミは暗い話が好きなのです。その一因は、顧客が暗い話を好むからです。「大災害のリスクは小」と書くより「大災害のリスクに備えよ」と書く方が売れますから。

 

今ひとつ、マスコミの使命は政府を監視することですが、政府を批判するのが使命だと勘違いしている社もあるようで、そうした所は政府に都合の悪い話(多くは暗い話)を報道したがるでしょう。

 

ちなみに、政府、正確にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が年金を運用した成果を3ヵ月ごとに発表していますが、運用で損が出ると大きく報道され、利益が出ると小さく報道されます。

 

そこで、読者のなかにも「政府が年金の運用で損ばかり出しているから、自分の老後の年金は期待できない」と考えている人がいるかもしれません。

 

しかし実際には、政府の年金運用は巨額の利益を上げています。株価が好調なのですから、考えてみれば当然のことですね。

 

このように、マスコミが暗い話を取り上げるということは、評論家としても暗い話をする方が、マスコミに登場する機会が増えるでしょう。その方が名前が売れて収入も増えやすいはずです。

 

筆者も時々マスコミの取材を受けますが、「大丈夫です。問題ありません」と答えると、「それだと記事に出来ないので、ひとつくらい問題点を探して指摘して下さい」といわれることがありますから(笑)。

 

上記のように、我々が受け取っている情報には、悲観バイアスがかかっています。サングラスをかけて部屋の明るさを判断しようとしているようなものです。「実際の部屋は、自分に見えているより明るいはずだ」という意識を常に持っておく必要がありそうです。

 

筆者は、自分の得ている情報を総合して見えて来る日本経済の姿よりも、少しだけ明るい姿を頭のなかで想像して、そこを出発点に経済予測をしています。したがって、一般の方からは「楽観的だ」「能天気だ」といわれますが、もしかすると私の見方が現実に最も近いのかもしれませんよ(笑)。

 

今回は、以上です。

 

 

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塚崎 公義

久留米大学教授

 

久留米大学商学部 教授

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。
著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。
趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載塚崎公義教授の目からウロコの経済談義

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