子は欲しいけどお金が…という家庭に教えたいフランスの事情

高卒と大卒では初任給が4万円以上変わり、生涯年収ともなれば4,500万円以上の差が開く(厚生省調べ)。それなら大学に行かせてあげたいと思うのが親心だが、日本人の平均年収は毎年減少、「子どもは欲しいけど、育てられるお金がない」と嘆くサラリーマン家庭も多い。国の助けは期待できないのか。フランスの制度に習う。

日本とフランスで異なる「税金の使い道」

平成30年度、日本の社会保障費が「329,732億円(約33兆円)」であると発表された。前年度比4,997億円のプラスだった。

 

出所:平成30年4月11日財務省「社会保障費について」
[図表]社会保障費の内訳 出所:平成30年4月11日財務省「社会保障費について」

 

上記データから見て取れるのは、日本の社会保障費において、「年金」「介護」に3分の1以上の費用が割かれているという事実である。もちろん、高齢者増加が背景にあることは今更語るまでもない。老後資金が底を尽きた高齢者たちが、更なる支援を求めている現実もある。

 

また、同データからわかるのは、児童手当等、子持ち家庭への支援の薄さだ。お金がないから子どもを産まないという話は多い。潤沢な資金さえあればもう1人欲しいんだけど……という声も聴く。

 

お金がないから子どもを産まない。結果、労働人口が増えず、相対的に高齢者の比率が上がっていく。人口減少・少子高齢化は併せて問題視され、その危機感はうんざりするほど語られている。国に蔓延する閉塞感は日ごとに増しているが、このような事態は何も日本に限った話ではない。

 

同じような状況下の例として、本記事ではフランスを紹介する。同国は高齢化社会への移行が最も早い国の1つとして知られているが、その一方で、フランスの出生率は1.92と、日本の1.44よりも大きく上回っている(平成30年版平成30年版内閣府「少子化社会対策白書」)。この背景には、政府主導の手厚い家族政策がある。

 

内閣府の報告によると、家族政策の予算は、フランスGDPの約4%にも相当する。国家を挙げて少子化対策に力を費やしているわけだが、それを下支えしているのは、大量の「手当」ある。特筆すべきものは、詳しく叙述した。

 

●家族手当

扶養すべき子どもが2名以上になった場合に支給される(子どもはどちらも20歳以下)。支給額は、世帯所得や人数によるが、以下のとおり。

 

出所:内閣府データより編集部作成
[図表]家族手当受給額 出所:内閣府データより編集部作成

 

●家族支援手当

20歳未満の子どもを対象に、下記の場合に支給される。片親のみの場合、月100.09ユーロ、両親とも不在の場合は月133.39ユーロが支給される。

・ひとり親世帯のケース

⇒両親のどちらかが死亡した場合

⇒両親のどちらかが認知をしない場合

⇒孤児を受け入れる場合

⇒両親のどちらか、あるいは両方が養育費を支払わない場合

 

●親付き添い日当

20歳未満の子どもが、大病を患ったり、事故に遭ったり、あるいは障害児であるなどして、親の付き添いが必要とされ、仕事を中断する場合に支給される。22日を上限に、カップル世帯で日42.97ユーロ、ひとり親世帯で 51.05ユーロ支給される。

※失業手当や就業自由選択補足手当等をすでに受給済の場合は、受給資格がない。

 

●出生(又は養子受入れ)一時金

●基本手当

●就業自由選択補足手当

●育児分担手当

●保育方法自由選択補足手当

●新学年手当

●家族補足手当

●障害児育成手当

●在宅親老齢保険

●住宅手当

 

「家族手当」の場合、受給のための所得制限ははない。たとえば子どもが2人いて、世帯所得が790万円以下の家庭など、日本では何も珍しくないが、フランスでは、一様にして15,000円ほどの手当を受け取ることができるのだ(1ユーロ=118円換算)。

 

話は少しそれるが、フランスの最低賃金は10.03ユーロと、世界的に見ても最も高い水準にある。同時に、低所得者向けの活動手当も引き上げられている(勤労収入のある18歳以上が対象。世帯、収入によってその額は変わるが、2019年に発表された平均受給額は月額で158ユーロ。日本円で約1万8000円ほど)。労働者・一般家庭への保障の手厚さは世界随一といえる。

「支給開始年齢や保険料納付期間などについて見直す」

もちろん、利点ばかりではない。厚い社会保障は、手当を頼りにし、就職活動をするフリだけでやり過ごす失業者を生んだり(面接に行くポーズだけを見せ、その実まったく働く気がないなど)、極端な話でいえば、夕方ごろになると、物乞いをしていたホームレスを、妻が車で迎えにくるという話すらある。

 

当然のことながら、フランス国民の税負担率は非常に重い。高い税率に反発した中間層・貧困層によるストライキやデモも後を絶たない。黄色いベストを着用して行われた「反マクロン・デモ」は記憶に新しいだろう。

 

また、一度でもフランスに行ったことがあるなら、観光地で物売りをする人を見たことがあるだろう。難民問題は深刻化しており、2017年の難民申請者は、過去最高の10万人を突破した。今までに述べた制度は、「対象者だから手厚い」のであって、その土俵にすら上がれない人間がいることも忘れてはいけない。差別を含め、格差是正の道のりははほど遠い。

 

一方の日本。「出産育児一時金」等、子育て支援をする枠組みはあるが、税金の使い道としてはほんのわずかだ。財務省は、社会保障にかかる費用の相当部分を将来世代につけを回しているという現状を改善するために、「社会保障と税の一体改革」を進めている、と述べる。

 

具体的には、消費税を引き上げて得られる追加財源14.0兆円のうち、2.8兆円を社会保障費にあてるという。子ども・子育てに0.7兆円、医療・介護に1.5兆円、年金0.6兆円といった内訳にする予定としている。子育てに税金を費やすという目標は結構なことだが、記事冒頭に挙げた報告書では、以下の記載が確認された(原文ママ、赤字・太字は筆者)。

 

●「人生100年時代」への対応〜⾼齢期の職業⽣活の多様性に応じた年⾦受給の在り⽅〜

働く意欲と能力のある高齢者の就労を促進し、将来の給付水準を確保するため、中長期的な国庫負担の水準に留意しつつ、支給開始年齢や保険料納付期間などについて見直すべきではないか。

 

子育て支援を頑張ります、だから消費税を上げます、年金受給年齢を上げます、保険料の支払い期間は伸ばします。晩婚化が進み、20歳未満の子を育てる60代サラリーマン家庭も増えたなかで、元も子もない話だ。フランスのような支援制度を施行できる日はくるのだろうか。疑問の余地は多い。

GGOとは、GENTOSHA GOLD ONLINE(幻冬舎ゴールドオンライン)の略称。『あなたの財産を「守る」「増やす」「残す」ための総合情報サイト』を掲げ、企業オーナー・富裕層を主要読者ターゲットとして運営している(写真は編集長の立本正樹)。

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