経済学者が教える…「モノの本当の価値」がわかる質問とは?

購入した本が期待はずれだったときに「もったいないから最後まで読む」という行動は決して賢いとはいえません。同様に、会社のプロジェクトがムダだと判明したら、迅速に中止するのが得策です。本記事では、これらの理論について経済学の観点から解説します。塚崎公義教授の目からウロコの経済談義、連載第27回目です。

払った金は戻らないから、払った金のことは忘れよう

買った本がつまらなかったとき「本を読まなかったら買った代金が無駄になる」と考えて、最後まで読む人が大勢いますが、結果は「本を買った金と読んだ時間の両方を損した」だけに終わる場合が多いはずです。

 

本を買って代金を払った時点で、その代金は「戻ってこないもの」になったのです。これを経済学では「サンクコスト」と呼びます。サンキューのサンクではなく、沈んでしまったという意味です。

 

代金は、本を読んでも読まなくても戻ってきません。そうであれば、代金を払った時点で「いまから自分がいちばん幸せになるために何をしようか」を考えるべきです。とりあえず、本を読んでみましょう。楽しければ、そのまま読み続ける事が幸せでしょうから。

 

しかし、本を読み始めて期待外れだった場合には、そうと悟った時点で「このまま本を読み続けるのと、散歩か昼寝をするのと、どちらが幸せだろうか」と考えてみましょう。

 

本の代金が非常に高かったとしても、あっさり捨てる(または古本屋等に売る)べきです。最後まで読んだなら、本を買った代金と読んだ時間の両方を損することになりますから。

「自分がバカだった」とは思いたくないので…

製薬会社が薬の工場を建てているとします。7割完成したときに、ライバルが画期的な薬を発表したとします。このまま工場を完成させても、当社の薬は売れないでしょう。そんな時、工場建設はどうすべきでしょうか。

 

「7割も完成しているのだから、工事を中断してはもったいない。完成させよう」という人もいるでしょうが、中断すべきでしょう。中断すれば7割の損で済みますが、完成させれば工事費全額の損になりますから。

 

買った本が期待外れだったとき、「こんな本を買った自分がバカだった」と思いたくないので、「最後まで読んだら面白いかもしれない」という一縷の望みに賭ける人がいます。つまらない自尊心は捨てて、自分がバカだったと素直に認めるほうが、ずっと幸せになれますよ。

 

工場建設の場合も、同じですね。ただし、気をつけなければいけないのは、社内政治です。社内の実力者が推し進めてきたプロジェクトを中止させようとすると、「こんなプロジェクトを推進してきた実力者がバカだった」ということになりかねないからです。会社の利益と社内での自分の立場のどちらを優先すべきか、サラリーマンとしては悩むところですね(笑)。

株を買ったら「買値は忘れる」

「1000円で買った株が800円に値下がりしてしまいました。どうしたらいいでしょう?」「500円で買った株が800円に値上がりしました。どうしたらいいでしょう?」といった質問を頂戴することがあります。

 

それに対する筆者の答えは「いまから株式投資を始めるとして、その株を800円で買いますか?」です。1000円で買ったか500円で買ったかは、その株を売るか否かの意思決定とは関係のない話ですから。

 

筆者は株式投資の初心者には、「毎朝、全部の持株を売りなさい。それから新たに買いなさい。偶然、先刻売った銘柄と同じものを買うかも知れないが、それでまったく問題ないのだから」とアドバイスしています。

 

もちろん、実際に売り買いすると手数料がかかりますから、「頭の中で全部売ったことにして気持ちを整理するべし」という意味ですが。

大好きなアーティストのコンサート、価値は何円?

さて、質問です。

 

【Q1】 大好きなアーティストのコンサートがあります。1万円でチケットを買いましたが、なくしてしまいました。仕方がないので、もう一枚をチケット屋で買うとして、何円までなら買いますか?

 

【Q2】 大好きなアーティストのコンサートがあります。抽選で当たってチケットを無料でもらいましたが、なくしてしまいました。仕方がないので、もう一枚をチケット屋で買うとして、何円までなら買いますか?

 

【Q3】 大好きなアーティストのコンサートがあります。1万円でチケットを買いましたが、遅刻しそうです。遅刻したら入場できない場合、間に合うためのタクシー代が何円までだったら払ってもいいですか?

 

【Q4】 大好きなアーティストのコンサートがあります。仕事があるから諦めていたところ、仕事がキャンセルになり、コンサートに行けることになりました。いまからチケット屋で買うとして、何円までなら買いますか?

 

4問とも同じ答えでしたか? 違ったとしたら、それはなぜでしょう? 最後の問に対する答えが、あなたにとってのコンサートの価値だと思いますが。

 

以上、本稿が記してきたのは、「死んだ子の歳を数えて暮らすより、今後の自分の人生の幸せを考えて暮らすべきだ」ということですね。言うは易く、行うは難し、ですが。

 

今回は、以上です。

 

 

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塚崎 公義

久留米大学教授

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載塚崎公義教授の目からウロコの経済談義

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