年金崩壊…サラリーマンは持家があっても「老後破産」の危機

2019年前半期のトップテーマとなった「老後2,000万円問題」。国主導で資産形成の自助努力を促すような内容に、国民の多くは唖然としたことだろう。政府への反発を恐れてか、麻生金融相は、報告書の作り直しを伝達。しかし、一度は算出されたその数字を撤回したところで、「老後の年金は期待できない」という事実は変わらない。高額所得者でない一般家庭のサラリーマンが、人生100年時代を生きぬくには、あまりにも厳しい現実が待っている。

年金受給者300万人増加、月額20,000円の赤字生活も

7月、厚生省が個人型確定拠出年金(iDeCo=イデコ)への加入基準を拡大したことが日本経済新聞に掲載され、話題となった。「老後2,000万円問題」がひんぱんに取り沙汰されるなかでの公表に、資産形成への注目がさらに高まった。

 

これら一連の動きを端的にまとめるならば、「公的年金だけでは老後の生活費が賄えないから、足らない分をイデコで貯めてください。どうせ貯めるなら、税制優遇があるイデコがいいよ」と国が推進しているということだ(ちなみに、イデコは60歳になるまで受け取ることができない。「緊急時に使えるお金」が十分にある家庭でもない限り、資産形成の手段としては熟慮すべき選択肢ではないか)。

 

「もはや年金は期待できない」というのが、国・国民の総意になってきたともいえるが、改めて現況を把握してみよう。

 

◆増える受給者、減る受給額

 

現在、年金が受け取れるのは原則65歳から(繰上げ受給も可能だが、減額される)。日本人の平均寿命が男女ともに80歳を超えているのだから、15年~20年は年金だよりの生活になる。では、実際の受給額はいくらか。

 

平成30年12月に厚生労働省年金局が発表した「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」では、以下の事実が報告されている。

 

●国民年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、約5万6,000円(新規裁定者は5万円)

●厚生年金受給者の老齢年金の平均年金月額は、約14万7,000円

 

この数字ですら「生活していくには少なすぎる」と感じる人も多いことだろう。しかし、追いうちをかける事実がある。受給者が毎年増加していくなか、受給額はこの5年間で1,000円減少していることが、同報告書から見て取れる。

 

平成30年12月厚生労働省年金局「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
[図表1]厚生年金保険(第1号)受給者数の推移 出所:平成30年12月厚生労働省年金局「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
平成30年12月厚生労働省年金局「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
[図表2]厚生年金保険(第1号) 受給者平均年金月額の推移 出所:平成30年12月厚生労働省年金局「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」

 

第2次ベビーブーム世代にあたる40代のサラリーマンが、60歳で定年退職を迎えたときは、「平均寿命100歳時代」になっていても何らおかしくない。老い先40年間を年金生活で過ごせるだろうか? 労働人口が減少の一途をたどるなか、無理があるのは明らかだ。

 

出所:人口推計(平成29年10月1日現在)
[図表3]我が国の人口ピラミッド 出所:人口推計(平成29年10月1日現在)

 

なお、平成29年度の家計調査報告書によると、2人以上の世帯の支出は、「40歳未満の世帯は1世帯当たり1か月平均256,160円,40~49歳の世帯は315,189円,50~59歳の世帯は343,844円,60~69歳の世帯は290,084円,70歳以上の世帯は234,628円」とされている。

 

単純計算すると、60~69歳の2人世帯の場合、1か月の収支は「14万7千円×2-29万円=4,000円」。たった4,000円しか残らない。受け取る年金が減少していく今ですら、この金額だ。

 

これだけではない。50代における教育費の平均支出は、約24,000円。昨今の晩婚化を踏まえれば、60代で教育費を負担する夫婦も今後さらに増えていくことだろう。つまり、トータルで毎月2万円超えの「赤字暮らし」は、避けられない現実なのである。

マンション?戸建て?老後の支出が少ないのはどちらか

着目すべきことがもう1点。それは、家計調査の平均支出額欄にある「住宅費」が、月々約14,000円~20,000円弱ということだ。家賃やローン返済費がもっとかさんでいる家庭も多いことだろう。

 

「でもローンも返済したし、貯蓄もあるし、今のポートフォリオで大丈夫!」と思っている人も、少し立ち止まって考えてみてほしい。

 

たとえばマンション暮らしの場合、「共益費」が発生し続けることを忘れてはいけない。地域によって金額は異なるが、都心住みなら相場は大体1万円はゆうに超える。さらに、マンションの経年劣化に伴い値上げするケースも多い。サラリーマン時代は賄えるかもしれないが、老後にこの支出はあまりにも痛い。

 

もちろん都会暮らしは利点も多い。インフラの充実は老後生活に何よりも必要な要素だろう。その一方、物価も高く、支出の面ではマイナスが多い。「気づいたら老後破産に陥っていた……」という最悪の事態だけは避けたいものだ。

 

それは、戸建てを購入したサラリーマンでも同様のことだ。もちろん、戸建てなら上記のような共益費や管理費は一切かからないが、不動産を所有しているなら、当然固定資産税が発生する。

 

固定資産税は、「固定資産評価額×税率(基本は1.4%)」で算出された税金が毎年1月1日に徴収される。たとえば、土地1,500万、建物1,000万で購入した場合、単純計算だと2,500万×1.4%=35万円にも上る。

 

ただ、固定資産税は、新築の建物の場合最低でも3年間は税額が半分になる。土地についても、200平方メートル以下のものなら、期限なしでその評価額は6分の1になる。つまり先に挙げた例でいえば、

 

●1,000万(建物の評価額)×1.4%(固定資産税税率)×1/2(新築の減税措置)=7万円

●1,500万(土地の評価額)×1.4%(固定資産税税率)×1/6(小規模住宅用地の特例)=約33,600円

 

となり、年間10万円ほどの税金を納める必要がある。

 

上記の新築の減税措置は、認定長期優良住宅、3階建て以上の耐火・準耐火構造の住宅以外は3年間という期限付きだが、建物評価額は経年とともに下がっていくのが通常だ(なお、固定資産税税率は原則1.4%だが、地区によってはこれより高い税率を課しているところもある。老後に備えて住宅を建てるなら、チェックしておこう)。

お金は「貯めても減る」時代へ

もはや「使わなくても減ってしまう」どころか、「貯めても減る」時代に突入した日本社会。安泰な老後を過ごすためには、長期的、かつ能動的な資産形成が求められる。

 

一生をマンションで暮らすにせよ、戸建てで生活するにせよ、ライフプランに沿った資産形成を心がけたい。そのためには、働いているまさに今から、「終の棲家」の選択をすべきではないか。

 

GGOとは、GENTOSHA GOLD ONLINE(幻冬舎ゴールドオンライン)の略称。『あなたの財産を「守る」「増やす」「残す」ための総合情報サイト』を掲げ、企業オーナー・富裕層を主要読者ターゲットとして運営している(写真は編集長の立本正樹)。

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