弁護士が教える!「不動産賃貸借契約書」を読むときのポイント

不動産投資を行う上では避けて通れないのが「賃貸借契約書」です。不動産オーナーと賃借人の良好な関係を維持するためにも、基本的な内容の理解はかかせません。本記事では、不動産オーナーのための「不動産賃貸借契約書」の基本的な読み方を解説します。※本連載では、投資用不動産業界の健全化を目指す一般社団法人首都圏小規模住宅協会が、正しい知識と公平な情報を紹介します。

契約期間の終了で、賃貸借契約が終了するわけではない

【今回の執筆者紹介】

竹村鮎子弁護士

練馬・市民と子ども法律事務所

2009年弁護士登録

 

今回は、国土交通省の「賃貸住宅標準契約書(改訂版)」に即した、不動産賃貸借契約書を読み解くためのポイントを説明していきます。

 

【「賃貸借の目的物」とは?】

 

頭書の次に書かれているのは、「賃貸借の目的物」です。「賃貸借の目的物」では、「貸す」「借りる」のはどのような建物であるかについて、特定して記載しています。

 

現実としては想定しがたいことですが、契約とまったく違う建物を貸し借りしていた、ということがないように、物件を詳細に特定しておくのです。まったく物件が違っていたというような極端な例ではなくても、たとえば住戸部分の設備について、契約書上、冷暖房があることになっているのに実際にはなかった場合、オーナー側の契約違反となり、損害賠償責任を負うことがあります。

 

このため、物件についてはきちんと設備まで確認した上で、特定するように注意しましょう。

 

【「契約期間」について】

 

「契約期間」には、賃貸借契約の期間を記載しています。

 

ここで気をつけなければならないのは、契約期間が終了すれば賃貸借契約が終了するわけではないということです。オーナー側が更新せずに、賃借人に出て行ってほしいと思い、いわゆる「更新拒絶」をするには、借地借家法上、正当事由が必要となります(第28条)。

 

正当事由では、通常「立退料を支払った」事実が必要となることが多いといえます。立退料の金額はケースバイケースで決定され、非常に高額になることもあります。

 

このように、更新拒絶ができるのは非常に限られた場合です。賃貸借契約は、賃借人が「出て行く」といわない限り、何度も更新されるのが一般的です。オーナーは一旦賃貸に出したら、オーナー側の都合で賃借人に出て行ってもらうのは、非常に大変だと思ったほうが良いでしょう。

 

ある限定された期間だけ賃貸に出して、どうしても更新をしたくないという事情がある場合には、「定期建物賃貸借(借地借家法第38条)」とする必要があります。定期建物賃貸借契約を締結すると、更新しないことを定めることができます。更新できないことは、賃借人には不利益になるため、その分賃料は低額に抑えられますが、短期間だけ貸したいという賃貸人のニーズにはかなう制度です。

 

【「賃料」や「共益費」など】

 

賃料や共益費などについてのルールを記載しています。支払期限について、前月末までに当月分を支払う前家賃なのか、当月に当月分を支払うのか、などについて定めることが大切です。

 

⺠法の原則からいえば、賃料は当月払いとなります。このため、前家賃にしておきたい場合には、特別に定めておく必要があります。賃料の増減額については、特に賃貸借契約書に定めがなくても借地借家法第32条によって定められているので、賃貸借契約期間中であっても、賃料の増減額を求めることはできます。

 

なお、賃貸住宅標準契約書では4条2項で賃料の増減額について定められています。

「用法違反」は賃貸借契約の解除原因になる

【「賃借人及び管理業者」とは】

 

賃借人と管理業者、及び建物の所有者について記載しています。

 

建物の所有者と賃借人が違う場合は、所有者から賃借人が建物を借りていて、オーナーから借りた建物を賃借人が再度借主に貸す(オーナー→賃借人→借主)、という転貸の形式を取っていることになります。

 

転貸借の場合、オーナーが所有者に対して転貸を行うことについて承諾を得ていないと、「無断転貸」として所有者とオーナーとの間の賃貸借契約が解除できます。転貸をしていた賃借人は、所有者から建物の明け渡しを求められ、借主に出て行ってもらわなくてはならない事態となります。

 

転貸をする場合は、きちんと所有者の承諾を得てからにする必要があります。

 

【「賃借人及び同居人」とは】

 

どのような人が建物を借りるのか、また建物を何人で使うのかは、オーナーにとっては非常に重要な関心事です。

 

契約書の記載と異なる場合には、賃借人側の契約違反になり、契約の解除原因になり得ます。賃借人及び同居人の数は、正確な記載をしましょう。また、賃貸住宅標準契約書の第3条では、使用目的について定められています。建物をどのようにして使うかは、事前に契約で定めておく必要があります。

 

建物をどのように使用するのかによって、建物の傷みの度合いや防犯、賃料支払いの確実性などを判断するのに重要になり、オーナーにとっては非常に大切な問題です。

 

たとえば、賃貸住宅標準契約書では使用目的が「居住のみ」とされているのに事務所として利用すると、居住用とは異なる用法で建物を使用になり、「用法違反」で賃貸借契約の解除原因となります。しかしながら、用法違反を理由に賃貸借契約を解除できるかどうかは、その違反によってオーナーと賃借人との間の信頼関係が破壊されているかどうかを基準に判断されます。

 

毎日事務所として使用していたのではなく、自宅で週1回料理教室を開くような場合では、用法違反として、賃貸借契約が解除できるかどうか判断するのは難しいといえます。「用法違反によって信頼関係が破壊された」となるかどうかは、その行為の程度や賃貸借契約の経緯、原状回復の困難さなどの点から、総合的に判断されます。

練馬・市民と子ども法律事務所 弁護士

2009年に弁護士登録、あだん法律事務所に入所。田島・寺西法律事務所を経て,2019年1月より、練馬・市民と子ども法律事務所に合流。主に扱っている分野は不動産関係全般(不動産売買、賃貸借契約締結、土地境界確定、地代[賃料]増減額請求、不動産明渡、マンション法等)の法務が中心だが、他にも企業法務全般、労働法関連、一般民事事件、家事事件、刑事事件など、幅広い分野を取り扱っている。実地で培った法務知識を、「賃貸経営博士~専門家コラムニスト~」としてコラムを公開しており、人気コンテンツとなっている。

著者紹介

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾」を介し、公平な情報をお送りいたします。

著者紹介

連載初心者から上級者まで…知っておくべき「投資用不動産」の基礎知識

本連載は、「不動産投資塾」の記事を抜粋、一部改変したものです。

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