弁護士が解説…所有する「不動産」を相続するときのポイント

少子高齢化が進む日本において、「終活」すなわち「人生の終わりのための活動」は、もはや社会現象といえます。所有する不動産を使って賃貸経営をしているオーナーの「終活」は、どのような点に留意すべきなのでしょうか? 本記事では、不動産オーナーの相続対策の進め方を具体的に見ていきます。※本連載では、投資用不動産業界の健全化を目指す一般社団法人首都圏小規模住宅協会が、正しい知識と公平な情報を紹介します。

不動産を「誰に相続させるのか」家族間で話しておく

【今回の執筆者紹介】

竹村鮎子弁護士

練馬・市民と子ども法律事務所

2009年弁護士登録

 

まず、所有している不動産を誰に相続させるのかという問題について掘り下げていきましょう。

 

不動産賃貸借契約において、貸主が死亡しても賃貸借契約自体は当然終了しません。賃貸借契約の貸主としての地位も、相続人である配偶者や子どもに引き継がれます。例えば貸主が亡くなり、相続人がその妻と子が2人である場合、相続人の地位は遺産分割協議が終了するまでは、法定相続分に応じて相続することになります。すなわち、妻が2分の1、子がそれぞれ4分の1の割合です。

 

お金や土地ではなく、「貸主の地位」を相続するというのは目に見えるものではないので、イメージがしにくいかもしれませんが、貸主の地位という状態を相続人が共有することになるのです。

 

同様に、オーナーが所有している物件についても遺産分割協議が終了するまでは、それぞれの法定相続分に応じて共有することになります。したがって、賃貸契約している不動産は、誰に相続させるかを生前にはっきり決めておく必要があります。

 

賃料の支払先が亡くなった貸主名義の銀行口座である場合は、支払先の変更手続きなどを行わなくてはならないという点以外は、賃借人との間で困ることは特にありません。面倒なのは、不動産が共有である場合、賃貸借契約を解除したり、賃料の増減額を行ったりするときは、逐一共有者である相続人間で協議を行わなくてはなりません。

 

また、家賃の受け取り、物件の管理を誰が行うのかを、相続人の間で決めなくてはなりません。これもまたトラブルの火種になります。そうでなくとも、相続は「争続」という字があてられるように、相続によって家族の関係が悪化するケースが多いものです。

 

このような事態を回避するためにも、オーナーとしては生前から賃貸物件は誰に引き継がせるかを、家族間で話してから遺言書を作成するという「終活」を行うべきでしょう。

 

遺言書の内容については、基本的にはオーナーの自由です。しかしながら配偶者、息子、娘といるような場合、「全財産を息子に相続させる」という遺言書を作成してしまうと、配偶者と娘の遺産に対する最低限の権利である「遺留分(いりゅうぶん)」を侵害していると法的にみなされます。

 

息子が相続する不動産に対しては、配偶者と娘それぞれが不動産の遺留分に応じた割合の持分を取得することがあるので、不動産を相続する息子以外の相続人それぞれの遺留分に配慮する必要があります。

 

遺言書の書き方は複雑で、法律が求める要件を満たしていないと無効になってしまいます。このため、専門家に相談し、相続人それぞれの合意のもと公証役場で公正証書の方式で作成することをおすすめします。

 

一方、相続対策として、賃貸経営の事業を法人化するという方法もあります。賃貸経営の事業を法人化すると、所得税や相続税の節税が期待できるといわれています。しかし、法人設立や運営にコストがかかるというデメリットもあります。

 

法人化のメリット・デメリットについては、実際の賃貸経営の規模によっても異なってきます。税理士の先生などに相談した上で検討するべきでしょう。

相続前には必ず「不動産契約書の確認」を

遺言書を作成した後、オーナーは現在の賃貸借契約書がきちんとそろっているかを確認しましょう。特に契約期間が長い借地契約でよく見られることですが、そもそもの賃貸借契約が古い場合、契約書がきちんと保管されていないこともあります。

 

また、当時の賃貸借契約書と違い、いつの間にか賃料額が変わっているということがあると、その経緯を知らない相続人は、何がどうなっているのか分からないという例が多くあります。

 

例えば、契約書上の賃料と比べ、明らかに少ない額しか入金されていないという場合、相続人がそれを賃借人に指摘すると「先代と賃料を減額することで話がついている」などと説明されれば、トラブルのもとになりかねません。長い賃貸借契約の期間中に、賃貸人と賃借人との間で、口約束のみで賃料額を変更して、特に覚書などを交わさなかったために起こる事態です。

 

賃料額以外にも、賃借人が土地や建物を転貸しているといったこともあります。相続を考えているオーナーは、賃貸借契約書で定められたことと実際の状態が異なるような場合、現状について確認する内容や、なぜこのような事態になったのかを説明する覚書を賃借人との間で作成し、相続人が混乱しないようにしておくべきでしょう。

練馬・市民と子ども法律事務所 弁護士

2009年に弁護士登録、あだん法律事務所に入所。田島・寺西法律事務所を経て,2019年1月より、練馬・市民と子ども法律事務所に合流。主に扱っている分野は不動産関係全般(不動産売買、賃貸借契約締結、土地境界確定、地代[賃料]増減額請求、不動産明渡、マンション法等)の法務が中心だが、他にも企業法務全般、労働法関連、一般民事事件、家事事件、刑事事件など、幅広い分野を取り扱っている。実地で培った法務知識を、「賃貸経営博士~専門家コラムニスト~」としてコラムを公開しており、人気コンテンツとなっている。

著者紹介

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾」を介し、公平な情報をお送りいたします。

著者紹介

連載初心者から上級者まで…知っておくべき「投資用不動産」の基礎知識

本連載は、「不動産投資塾」の記事を抜粋、一部改変したものです。

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