9割超のデータで水増しか…「偽装売買」が蔓延る暗号資産市場

※本連載では、KRAKEN日本法人代表取締役社長であり、FinTech(金融×情報テクノロジー)専門家として各種金融・事業法人の顧問/アドバイザーもつとめる渡邊竜士氏が、暗号資産の最新動向や基礎知識について解説する。本記事は、インターネット上に流れる「暗号資産市場の売買データ」の信憑性や正しいデータの見極め方等について説明する。

暗号資産業界ではデータ計算手法が統一されていない

世界最大の投資会社の筆頭株主であり、投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏は「本当のリスクはあなたが理解せずにとっている行動(判断)にある」といい、自分が理解している範疇での投資を推奨しています。

 

新興技術であるブロックチェーンで運営される暗号資産市場やその銘柄(トークン)についての正しい知識は必要不可欠です。本記事では、市場規模のデータについて勘案すべきことを説明します。

 

インターネットで閲覧可能なデータとして一般的によく参照されるCoin Market Cap社サイト(https://coinmarketcap.com/)によると、暗号資産銘柄すべての時価総額合計は約2千8百億米ドル(約30兆円)※1 なので、東証一部市場(約583兆円、6月末)の約5%相当、または最も大きなトヨタ自動車(22兆円)を3割強上回る規模です。そのうちビットコイン(BTC)1銘柄だけで上記時価総額の約65%を占めています。

※1 暗号資産価格は7月15日時点

 

同サイトによると1日あたり(暗号資産銘柄すべての)売買代金はおおよそ600〜800億米ドル(約6.5〜8.6兆円)、その3割程度がビットコイン(BTC)になりますが、これらの数値はその集計についての前提条件がその他の金融資産と大きく異なります。

 

売買数量・代金については各取引業社が自己申告したデータを用いるのが通例ですが、売買双方の金額を合計するのか、それとも約定代金として計算するのか、信用取引や差金決済取引を含むのか等、暗号資産業界では計算手法の統一がまだ整理されていません。

 

前回、「販売所」と「取引所」の違いについて説明しましたが、これも一緒くたに集計されています(関連記事『暗号資産の売買…「販売所」と「取引所」の明確な違いとは?』参照)。取引業者(または仲介業者)による自己資金の取引なのか、それとも最終需要者である個人や事業法人による投資なのか、区別がつきません。

 

そもそも、日本や世界数ヵ国を除けば、暗号資産を取引する業者を対象とした規制はまだ整備が進んでいません。FATF※2の勧告もあり、向こう1〜2年で業者に対する法整備がグローバルに進捗する模様ですが、まだこれからです。つまり、「販売所」や「取引所」が賑わっていることを装い、偽りの数字を公表しても(ごく一握りの地域を除けば)罰則がほとんどないのが現状なのです。

※2 FATF…資金洗浄防止に関する国際的な金融作業部会

売買代金上位30業者のデータ95.5%が水増し⁉

暗号資産の調査をするビットワイズ社(米国)が今年3月SEC(米国証券取引委員会)へ提出した資料(https://www.sec.gov/comments/sr-nysearca-2019-01/srnysearca201901-5164833-183434.pdf)では、前述の参照サイトにおける売買代金上位30業者のデータ(2019年3月4日〜8日分)はその95.5%が水増しされたものであり、世界上位81業者のうち正しいデータ申告をしているのはわずか10業者だと説明しています(ちなみに弊社Krakenはこの10業者へ含まれています)。

 

徐々に海外では警察による捜査や逮捕(詐欺容疑等)も始まっていますが、新規顧客獲得のために売買高を多く見せる偽装売買(ウォッシュトレード、水増し売買)等がいまだ横行しています。不正データを完璧に排除することは難しいものの、Coin Gecko(https://www.coingecko.com/ja/)やBTI(Blockchain Transparency Institute)(https://www.bti.live/exchanges/)等のいくつかのサイトでは不自然(偽装売買が推測される)な売買を察知し、計測しています。こういったサイトを利用し、できる限りどういった売買が行われているのかしっかりと把握しましょう。

 

市場が賑わっているのか? 誰が、どういった銘柄に、どのようなタイミングで売買しているのか? 有価証券市場(株や債券等)では、今後の相場を想定する上で、取引所や仲介業者が発表しているデータを頼りにしてきました。

 

日本取引所グループが毎週公表している投資部門別売買状況(https://www.jpx.co.jp/markets/statistics-equities/investor-type/index.html)では、こうした有価証券の売買データを投資主体別(個人、証券会社、海外機関投資家、事業法人、生損保、都銀・地銀、信託銀行等)に提供しています。同様の公表データは世界中にあります。

 

近い将来、暗号資産についても同じような構図が想定されるのでしょうか?

 

前述のとおり、さまざまな呼称の仲介業者(取引所、販売所、ブローカー、機関投資家等々)が明確な基準のないなかでデータを勝手に公表しています。それぞれのデータ特性をしっかりと把握した上での利用が必要となります。

 

ブロックチェーン技術で運営される暗号資産はもともと、所有権の移転データをインターネット上で管理・保存する仕組みです。このデータ抽出と分析を行う企業や組織が日々増えており、インターネットから抽出可能な所有権の移転データのほうが、誤解や間違えが少ないといえるでしょう。株式にたとえると、取引所や証券会社の売買データを見るのではなく、株主名簿や株式の名義書換えそのもの(所有権の移転)を参照する手法に近いでしょう。

 

以上のように市場を正しく把握するためにデータは欠かせません。しかしその過程で、暗号資産をとりまくデータの正しい理解と工夫が重要であることはいうまでもありません。

 

次回は少し基本に戻って、暗号資産の土台となっているブロックチェーン技術について、投資家として最低限必要な知識をお伝えします。

 

 

渡邊竜士

KRAKEN/日本法人代表取締役社長

 

KRAKEN アジア太平洋地域統括マネージングディレクター兼日本法人代表取締役社長/CEO

慶應義塾大学総合政策学部卒。野村證券グローバルマーケッツ部門マネージングディレクター、トムソン・ロイター執行役員を経て、2018年1月より現職。FinTech(金融×情報テクノロジー)専門家として各種金融・事業法人の顧問/アドバイザーを兼任。

KRAKEN(クラーケン)
デジタル資産(通称:仮想通貨)取引所として世界200ヶ国以上・24時間無休でサービスを展開。「特別で信頼できるデジタル資産取引」を提供し、高いセキュリティー(顧客資産の保全及びITセキュリティー)が定評。各種調査会社による安全度ランキング及びユーロ建て取引で業界トップ。

著者紹介

連載FinTech専門家が解説~新たな金融インフラとしての「暗号資産」

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