巨額の財政赤字を抱えても、日本政府が破産しないといえる理由

多くの評論家や識者たちが、巨額な財政赤字を理由に日本の将来を憂い、いたるところで悲観論を展開しています。彼らがいうように、日本政府はいずれ破産してしまうのでしょうか? 経済学の観点から検証するとともに、日本政府が破産しない理由を解説します。将来の経済不安には、正しい経済学の知識で対抗を。塚崎公義教授の目からウロコの経済談義、連載第23回目です。

政府も企業も「赤字だから破産する」わけではない

政府であれ企業であれ、赤字だから破産するというわけではありません。資金繰りがつかなくなったときに破産するのです。その意味では、政府は日銀に紙幣を印刷させればいいので、定義上破産することはありません。もっとも、それではハイパーインフレになりかねませんから、本稿ではそれは禁じ手としましょう。

 

政府が家計金融資産1800兆円に目をつけ、「財産税」として家計金融資産の60%を税金として召し上げる、という選択肢もあります。それが過激過ぎて革命を招くというのであれば、「60年間にわたり、家計金融資産の1%を毎年課税する」というのはいかがでしょうか。

 

人々が「預貯金が毎年1%目ずつ減するなら、その前に使ってしまえ」と考えて消費を増やせば、景気がよくなるので、そちらからも税収が増えるかもしれませんね。しかし、本稿ではこれも「政治家は資産家だから資産課税には反対する」と考えて、選択肢から外しましょう。

 

それでも政府は破産しない、ということを以下に示して行くこととします。

みんなが日本国債を買えば、資金繰りに困らないので…

本連載の第16回『日本の財政破綻が危惧される一方で「国債」が売れ続ける理由』に示したように、投資家たちは「ほかの選択肢よりマシ」だという理由で、喜んで日本国債を買っています。

 

みんなが買えば日本政府は破産しないので、それを知っている投資家たちは一層喜んで日本国債を買っているわけです。みんなが日本国債を買っていれば、日本政府は資金繰りに困らないでしょうから、倒産することもないでしょう。

 

つまり、「投資家たちが、お互いに励ましあって日本国債を買っている」という状況なわけです。

極論すれば、数千年あれば財政赤字の問題は解決する

頭の整理をするために、極端な例を考えてみましょう。少子化で人口が減り続けると、数千年後には日本人が一人となります。その子は、家計金融資産1800兆円を相続します。

 

その子が他界すると、資産は国庫に入りますから、日本政府の借金である1100兆円は一気に返済できることになります。つまり、数千年待てば、日本政府の財政赤字問題は何の問題もなく解決するのです。

 

もちろん、これは極端な話で、頭の体操に過ぎませんが、「日本の財政赤字は巨額だから、いつか必ず破産する」という論者が誤っていることは間違いないわけです。むしろ、彼らは「財政が破綻するとしたら、その瞬間に何が起きるのか」を示さなければならないといえるでしょう。

 

ちなみに、「投資家たちが一斉に日本政府の破産を懸念して国債を売却したら、日本政府は破産するはずだ」というのは誤りです。その理由は本連載の第22回『超ドル高で大逆転!? 日本の財政が破綻する瞬間、何が起きるか?』に示した通りです。

 

余談ですが、財政赤字は後世に借金を残すので世代間不公平だ、という人がいます。狭い視野で見ればその通りですが、遺産相続の話まで考えれば、世代間不公平など存在していないわけです。

 

存在しているのは、遺産が相続できる人とできない人の世代内不公平なのです。そこで筆者は、相続税の増税を主張しています。とくに、配偶者も子も親もいない被相続人の財産は、兄弟姉妹が相続するわけですが、これには非常に高い税率を課してもよいでしょう。そうすれば、数十年以内に莫大な相続税が入るはずです。

 

もっとも、本稿ではこれも選択肢から外しておきましょう。政治家は裕福な人が多いですから、政治的には難しいでしょう。

10年後、日本は失業者が減少して増税が容易な状況に

いくら筆者でも、数千年間何もしなくていいとは思っていません。財政赤字は何とかしたほうがいいと思っています。しかし、それは性急に緊縮財政を焦ることではありません。

 

10年待てば、少子高齢化による労働力不足が本格化し、「増税で景気が悪化しても失業者が増えない時代」になるでしょう。そうなれば、いまよりはるかに「気楽に」増税ができるようになります。

 

もしかすると、10年後には少子高齢化による労働力不足で賃金が上がり、マイルドなインフレに悩むようになるかもしれません。そうなれば、インフレ抑制のために増税で景気を冷やす必要が出てくるかもしれません。だとすると、増税はインフレ対策と財政再建の一石二鳥となるわけです。

 

増税は、そのときまで待ってからでも遅くないと思いますよ。10年待っても、財政赤字が数十兆円余分に増えるだけです。1100兆円の借金があることを考えれば、「誤差の範囲」でしょう。

増税は、少なくとも1年待つべき!

10年待てないとしても、少なくとも1年は待ちましょう。国内の景気も欧米の景気も米中関係も、1年前とは比べものにならないほど心配な状況です。こうした状況で増税を断行するリスクは決して小さくありません。

 

一方で、増税を1年待っても追加的なリスクは非常に小さいでしょう。増税自体は待てなくても、増税分をそっくり景気対策に使って「実質的に増税を先送りする」ことなら十分可能な筈はずです。政府の賢明な判断を期待しています。

 

今回は、以上です。

 

 

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塚崎 公義

久留米大学教授

 

経済評論家

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。現在は久留米大学商学部教授であるが、当サイトへの寄稿は勤務先と無関係に個人として行なっているものであるため、現職欄には経済評論家と記すものである。

著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。

趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載塚崎公義教授の目からウロコの経済談義

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