幽霊会社も多い!? 工場・倉庫の「賃料滞納」の実態と予防策

人口減少による影響が薄く、安定した収益を確保できることから、「工場・倉庫」投資に期待が高まっている。とはいえ、「賃料滞納リスク」は、不動産投資をしている以上避けては通れない。そこで本記事では、事業用物件を中心に、管理・顧問契約を取り扱う三浦孝志氏が、工場・倉庫投資における「賃料滞納」の予防策について解説する。

賃料の滞納リスクは裁判になる前の対処が重要

賃料の滞納は直接収入に影響してくるだけに、オーナーにとって大変悩ましい問題といえます。とりわけ、テナントの経営状況が悪化し、資金難に陥ったような場合には滞納リスクが一気に高まります。一般的に、キャッシュが回らなくなった企業は、仕入れ先など取引相手への支払いや従業員の給与払い、銀行への返済を優先させ、賃料の支払いを後回しにする傾向が見られるからです。もちろん、テナントが賃料を支払わなければ、オーナーは契約を解除することが可能です。

 

しかし、そのために訴訟を起こしたとしても、裁判所は賃料不払いを理由とする解約を簡単には認めてくれません。たとえば、「借主が2ヵ月間賃料を支払わない場合、貸主は契約を解除できる」と契約書の中で定めていれば、テナントが2ヵ月間賃料を滞納したような場合、問題なく解除できると思うはずです。

 

しかし、過去の裁判例では、滞納期間が3ヵ月以上に及んでいなければ、裁判所は契約の解除を認めていません。また、訴訟の結果、解除が認められたとしても、テナントが自主的に退去しない場合には、強制執行の手続きも必要となります。そのためにかかる手数料と訴訟費用は、優に100万円を超えることもあります。それらの費用は、オーナーが負担しなければなりません。

支払いが遅れたら迅速に督促し合意書を作成する

このように、訴訟にかかる手間やコストなどを考えると、滞納トラブルを裁判の形で解決することは、必ずしも得策とはいえません。できるだけ訴訟は避け、問題が生じた段階で早期の対策をとることが望ましいでしょう。

 

まず、賃料の支払いが少しでも遅れたら、時間を置かず直ちに督促しましょう。その際に、「遅れてしまって申し訳ない。すぐに払うから」などとテナントが応じてきた場合には、滞納している金額と、支払予定日を合意書の形で残しておきます。

 

このように、テナントが滞納した事実とオーナーが督促した事実を文書化しておけば、支払予定日に結局支払われず、やむを得ず裁判になったとしても、訴訟を有利に進められるでしょう。すなわち、「オーナーの督促に対して○月○日までに支払うことを約束したのに、テナントが約束を守らなかったのは不誠実だ」などと裁判所に判断され、解約が認められる判決を得やすくなるはずです。

 

なお、オーナー自身が督促することをためらわれるのならば、不動産会社に依頼することをお勧めします(その場合には、弁護士法違反になるのを避けるために、賃料の支払いの督促だけでなく、物件の管理を依頼することも必要になります)。

「家賃保証会社」の利用も選択肢の一つ

滞納リスクを軽減するための手段としては、家賃保証会社の利用も有効な選択肢の一つになり得ます。家賃保証会社は、所定の保証料(たとえば家賃1ヵ月分など)を支払えば、滞納された賃料をテナントに代わって支払ってくれます。

 

すでにマンションやアパートに関しては家賃保証会社が数多く存在しますが、工場・倉庫の賃貸に関しても保証サービスを提供する業者が現れ始めており、活用するオーナーも増えています。もっとも、万が一、依頼した保証会社が倒産してしまったら、支払った保証料がムダになってしまうおそれがあります。実際、過去には家賃保証会社が経営破綻し、大きな社会問題となったこともあります。

 

したがって、どの保証会社に依頼するのか、その見極めが大切になります。経営的に問題ない会社かどうかを判断する物差しとしては、資本金の額や営業年数、取引銀行などをチェックするとよいでしょう。また、近年、クレジットカード会社の中には、サービスの一環として家賃の集金代行を行っているところもあります(具体的には、テナントの賃料がカード支払いの形で引き落とされる仕組みになっています)。

幽霊会社ではないか、テナントの事前審査はしっかりと

また、滞納を防ぐためには、毎月確実に賃料を支払ってくれる信頼できる借主を選ぶこと、すなわち賃貸借契約を結ぶ前にテナントをしっかりと吟味することが重要になります。まず入居審査で厳しくチェックして、経営に不安のある会社は避けるよう細心の注意を払います。具体的には、商工リサーチや帝国データバンクなどの信用調査会社によって、借り手企業に関する調査レポートを作成してもらい、それを判断材料として、入居を認めるか否かを検討するのです。

 

また、信用調査会社でも経営状況を把握していないような小規模の会社については"現地調査"を行います。「本社と称されているオフィスにその会社の看板が掲げられているのか」「(オフィスに出入りする人の数や様子などから)本当に事業が営まれているのか、幽霊会社ではないか」などを確認して、十分に信用できる会社か否かを判断・分析するのです。このような現地調査等は、個人のオーナーでも行うことが可能ですが、管理会社に委託してもよいでしょう。

保証金が支払われないうちは絶対にカギを渡さない

さらに、テナントの信頼性を判断するもう一つのポイントとして、契約締結時に保証金の支払いを求めた際の相手の態度にも注意を向けるとよいでしょう。まず、経営に何の問題もない会社であれば、契約で定めた通り保証金を一括ですんなりと払ってくれるはずです。

 

しかし、資金力の乏しい会社は十中八九保証金を値切ってくるか、もしくは分割払いを認めるよう求めてきます。中には、「保証金のために用意しておいた現金を、商品の仕入れのために使ってしまった。必ず○月○日には支払うから、先にカギをもらえないか」などと言ってくる会社もあるかもしれません。

 

しかし、そこで絶対にカギを渡してはいけません。相手は端から保証金を払うつもりがなく、カギを手に入れたら延々と居座るつもりでいる可能性があるからです。万が一、そんな詐欺的な借主に入居されてしまったら、保証金はおろか、賃料も得られない悲惨な状況に陥ることになるかもしれません。

カギは渡せないと伝えると罵声を浴びせられ……

不用意にカギを渡してしまった場合に、どのようなことが起こり得るのか――実際にあったトラブルの例を紹介しましょう。500坪にもなる巨大な倉庫で、月額の家賃が300万円ほどの物件の例です。長く借りていたテナントとの契約がちょうど終わった直後、タイミングよく「借りたい」という人が現れました。仮にその人をA氏と呼びましょう。

 

A氏は「陶芸教室を開くことを考えている。倉庫の中に、材料置き場や焼き窯を設けるつもりだ」と話していました。とんとん拍子に話が進み、さあ契約を結ぼう、契約書にはんこを押そうという段階になった時です。突然、A氏が「保証金は分割払いにしてほしい。新規開業の助成金が入る予定なので、間違いなく払うから」と言い出したのです。

 

これは危ない――と感じ「それではカギを渡せません」と伝えると、A氏は顔を真っ赤にして怒り、「失礼な男だな。お前の顔は見たくない。帰れ!」と罵声を浴びせてきたのです。結局A氏は、他の不動産会社を通じて、倉庫のオーナーと契約を結びました。それから半年後の話です。A氏に倉庫を貸したオーナーから私のもとに電話があり、相談したいことがあると告げられました。「いったい何だろう?」と足を運んでみると、オーナーは、「いやー、A氏は保証金も家賃も一銭も払おうとしないんだ。どうしたらいいんだろう」と困り顔を浮かべました。

 

しかし、私にはもはや何もできることはありませんでした。この例のような最悪の事態に陥らないためにも、カギの取り扱いについては十分な用心が必要です。くれぐれも気を付けてください。

株式会社タープ不動産情報 代表取締役

1965年生まれ。アウトドアスポーツの企画運営に携わったのち、26歳で不動産事業に魅了され、1999年に株式会社タープ不動産情報を創業、代表取締役に就任。居住用から事業用まであらゆる不動産の仲介、取引、トラブル解決に従事し、独自のノウハウを構築した。現在は工場・倉庫など事業用物件を中心に、管理・顧問契約を600件以上取り扱っている。不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、相続対策専門士、IRIA国際不動産投資アドバイザー、賃貸不動産経営管理士、マンション管理業務主任者、文京区役所「不動産相談」相談員、東京都宅地建物取引業協会文京区支部常任理事。

著者紹介

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「工場・倉庫」投資のススメ

「工場・倉庫」投資のススメ

三浦 孝志

幻冬舎メディアコンサルティング

高齢化と人口減少により、空室率が上昇し続けているアパート・マンション。都心部の一等地にあるような立地条件のよい物件か、付加価値の高い築浅物件でもないかぎり、もはやアパート・マンション投資で儲けることはできません…

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