建物の「民泊利用」を禁止したい!区分所有法に基づく手続き

一つの建物(マンション等)をいくつかの部分に分けて所有する場合、その権利関係について規定した法律が「区分所有法」です。 区分所有法の知識は、多くの不動産投資家やオーナーにとって不可欠なものです。今回は前回に引き続いて、「区分所有法」における建物の管理の定め、管理組合の役割等について解説します。※本連載では、投資用不動産業界の健全化を目指す一般社団法人首都圏小規模住宅協会が、正しい知識と公平な情報を紹介します。

区分所有者は「管理組合への参加」が必須である

【今回の執筆者紹介】

竹村鮎子弁護士

練馬・市民と子ども法律事務所

2009年弁護士登録

 

分譲マンションを購入して不動産投資を行う場合、避けて通れない法律が「区分所有法」です。区分所有法は、マンションなど1つの建物の中に構造上独立し、所有権の対象となる部分があるものについて権利関係を定めた法律です。

 

前回のコラムでは、区分所有法の基本的な考え方について解説しました(関連記事『弁護士が解説!不動産投資家のための「区分所有法」の基礎知識』参照)。今回は区分所有法における建物の管理の定めについて見ていきます。

 

区分所有法第3条に「区分所有者は全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律(引用者注:区分所有法のこと)の定めるところにより集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる」という規定があります。

 

この「建物、その敷地、および付属施設の管理を行うための団体」を「管理組合」といいます。区分所有法がいうところの「集会」とは「管理組合の総会」を指します。区分所有法第3条にある「規約」は「マンション管理規約」のことで、「管理者」は「管理組合の理事長」のことを指します。

 

区分所有法では「区分所有者が全員で」団体を構成することを求めており、区分所有者である以上、希望に関わらず管理組合には参加しなくてはなりません。

 

不動産投資家の方は、実際にはマンションには居住しておらず、第三者に貸している場合がほとんどだと思いますが、そのような場合でも組合にはオーナーが参加する必要があります。

管理規約が「マンションの憲法」と呼ばれる理由

区分所有法では建物の管理の方法などについて定めていますが、これは一般的なマンションを想定したものです。

 

しかし、区分所有が可能な建物は、「単身者用のマンション」「ファミリータイプのマンション」「リゾートマンション」「商業ビル」など多様な種類があります。

 

マンションの管理や総会の運営方法などについては、建物のタイプごとに一部の条項を除き区分所有法とは異なるルールとすることを管理規約で定めることができます。管理規約では生活面のルール、例えば駐車場の使用料金やペットの飼育、楽器の演奏の可否なども詳細に決められています。このためマンションの管理規約は「マンションの憲法」などと言われることがあります。

 

通常、マンションの管理規約は、国土交通省が公表している「マンション標準管理規約」に基づいて作成されていることが多いと思われます。しかし、マンションの一室を民泊として利用するという近隣トラブルが増加した問題などもあり、実情に応じた管理規約の改善が必要になってきます。

 

区分所有法では、管理組合による総会によって以下のことが決められるべきとされています。

 

・理事長の選任(第25)

・管理規約の設定や変更,廃止(第31条)

・義務違反者に対する訴えの提起等(第57条)

・共用部分が滅失した場合の復旧(第61条)

・建て替えの決議(62条)

 

また、総会は少なくとも年に1回は開催されるべきとされています(第34条2項)。

「区分所有者の数と議決権の数」は必ずしも一致しない

それでは、実際にマンション管理について管理組合がどのような役割を果たすのか、区分所有法の規定に照らして、具体的なケースで流れを考えてみましょう。

 

[モデルケース]

マンションの101号室の住人であるAさんは、101号室を区分所有しています。隣の102号室はしばらく空室であったようですが、最近、不特定多数の外国人が出入りするようになりました。不審に思ったAさんがネットで調べてみると、どうやら102号室は民泊として利用されているようです。Aさんはマンションの部屋を民泊として利用するのをやめてほしいと思っていますが、マンションの管理規約には民泊についての定めがありません。

 

そこで、Aさんはマンションの管理規約に「民泊利用の禁止」を新たに盛り込みたいと思っています。

 

①総会の招集

管理規約に新しい条項を追加することは、管理規約の「変更」に当たりますので、総会による決定が必要です。このため、まずは各区分所有者に対して総会の招集をしなくてはなりません。

 

総会の招集権者は管理者、すなわち理事長であることが原則です(区分所有法34条1項)。そこでAさんは、まずは管理組合の理事長に対して総会の招集を相談します。管理組合の理事長が総会の招集に賛成してくれれば、理事長名で総会の招集がなされます。

 

しかし、例えば102号室のオーナーが理事長であるような場合、自らが行っている民泊を民泊禁止する条項を管理規約に組み込むことを望まないでしょう。このような場合に備え、区分所有法34条3項では、区分所有者の5分の1以上で、議決権の5分の1以上を有する者は、理事長に対して総会の目的を示した上で、総会を招集するよう求めることができます。

 

議決権は、区分所有法38条により専有面積の割合に応じるものとされています。したがって、区分所有者の数と議決権の数は必ずしも一致しません。

 

例えば、CさんとDさんが同じマンションに専有部分を持っているとしても、専有部分の面積がCさんは50平方メートル、Dさんが100平方メートルである場合、Dさんの議決権はCさんの2倍ということになります。つまり、区分所有者の人数では2人でも、議決権は3つ(Cさん1つ、Dさん2つ)と計算することになります。

 

したがって例えばマンションの部屋部分が5室しかなく、また専有面積も全て同じである場合、Aさんは理事長に対して「民泊禁止の条項を管理規約に追加する」という内容の総会を開催する要求ができます。

 

それにも関わらず、2週間以内に請求の日から4週間以内の日を会日とする内容の総会が招集されない場合(Aさんが4月1日に理事長に総会の招集を請求した場合、2週間後の4月14日までに4月1日の請求から4週間後である4月28日までに、総会を開催するための招集がない場合)には、Aさん自身で総会を招集することができます。

 

なお、国土交通省のマンション標準管理規約では、区分所有法34条3項の規定は若干緩和され、各組合員が組合員総数の5分の1以上、総議決権の5分の1以上に当たる同意を得た場合にも、理事長に総会の開催を求めることができるとされています。

 

したがって、Aさんが総会の招集を求める場合、まずはマンション内である程度の賛同者を募ることから始めなくてはなりません。また、専有部分を数人で共有している場合は、総会の招集通知はそのうちの1人に対して行えばよいものとされています(区分所有法35条2項)。

「管理規約の変更」は4分の3以上の決議が必要

②総会の開催

それでは、無事に総会の開催が決定した後、総会の流れはどのようなものになるのでしょうか。

 

このモデルケースの場合は、「管理規約の変更」を行うことになりますので、決議については「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による決議によってする」と区分所有法で定められています(区分所有法第31条1項)。区分所有者の数と議決権の数は、すでに述べたとおり必ずしも一致しませんので注意が必要です。なお、専有部分を共有している場合には、議決権を行使する人を1人定めなくてはなりません(区分所有法第40条)。

 

また、モデルケースは「すでに102号室が民泊として利用されている」という前提があります。したがって、102号室の区分所有者にとっては、民泊禁止の管理規約が成立すると大きな影響があります。区分所有法では「規約の設定、変更または廃止が一部の区分所有者の権利に特別な影響を及ぼすときには、その承諾を得なければならない」と規定されています(区分所有法31条1項)。

 

つまり、Aさんのマンションで民泊禁止を管理規約に組み込もうとする場合、すでに専有部分を民泊として利用している102号室の区分所有者にとって与える影響が大きいため、102号室の区分所有者の承諾を得なければならないのです。これでは事実上、民泊禁止を管理規約に組み込むことはできないといえるでしょう。

 

また、102号室が賃貸に出されていて、賃借人が部屋を民泊として利用している場合には、賃借人は総会に出席して意見を述べることができますが、(区分所有法第44条)賃借人には議決権はありません。

 

区分所有法第3条で規定された「建物、その敷地、および付属施設の管理を行うための団体」が、「管理組合」です。

 

上記のケースのように、区分所有者間でのトラブルや、それに伴う「管理規約の変更」も区分所有者が全員で総会に参加し、変更に関わります。区分所有者である以上、管理組合には必ず参加せねばならず、組合にもオーナーの参加が求められます。

 

マンションの維持と管理を区分所有者は共同で行うため、オーナーとして区分所有法への理解は必要不可欠といえるでしょう。

練馬・市民と子ども法律事務所 弁護士

2009年に弁護士登録、あだん法律事務所に入所。田島・寺西法律事務所を経て,2019年1月より、練馬・市民と子ども法律事務所に合流。主に扱っている分野は不動産関係全般(不動産売買、賃貸借契約締結、土地境界確定、地代[賃料]増減額請求、不動産明渡、マンション法等)の法務が中心だが、他にも企業法務全般、労働法関連、一般民事事件、家事事件、刑事事件など、幅広い分野を取り扱っている。実地で培った法務知識を、「賃貸経営博士~専門家コラムニスト~」としてコラムを公開しており、人気コンテンツとなっている。

著者紹介

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾」を介し、公平な情報をお送りいたします。

著者紹介

連載初心者から上級者まで…知っておくべき「投資用不動産」の基礎知識

本連載は、「不動産投資塾」の記事を抜粋、一部改変したものです。

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