サラリーマンよりキツい!?  勤務医の「自腹を切る出費」の実態

収益不動産を数多く所有し、マンション経営を行う岸洋嗣氏の著書『医師のための新築ワンルームマンション投資の教科書』より一部を抜粋し、医師の「仕事の出費」について解説します。

多くの勤務医が「仕事の出費」を収入から工面している

医師は仕事に伴う出費が多い職種です。勤務医の場合は一般のサラリーマンと同様に、ある程度は勤務先である病院が賄ってくれますが、多くある支出のすべてをカバーしてもらえるケースは少なく、大半の医師は仕事に伴う出費を自分の収入から工面しています。勤務医を含むサラリーマンにはそういった支出をカバーするため、「給与所得控除」が設けられていますが、自腹を切る出費が多い医師は一般のサラリーマンに比べて不利になることが少なくありません。

 

●書籍費

 

一般の書籍に比べて医学書は大変高価です。1冊数万円というものも珍しくありませんし、中には数十万円するものも見られます。勉強熱心な勤務医ほど医学書を多数購入するためコストがかさみます。急速な医学の進歩についていくためには欠かせないコストなので、学会誌なども含め年間数十万円単位で書籍を購入する医師は珍しくありません。

 

●学会費

 

医学は日々進歩しているため「医師は一生勉強」ともいわれます。勉強の場となる学会は最新の知識を得られるメリットが大きいですが、会費などのコスト負担も生じます。複数の学会に加盟している場合には、各学会の会費が加算されるのでトータルでは大きな額になります。

 

●学会参加費用

 

学会への参加費用も勤務医にとっては重い負担です。知識欲の旺盛な医師は国内の学会はもちろん海外の研究発表会にも頻繁に参加されます。海外の学会に足を運べば、1回あたり数十万円の費用がかかるでしょう。たとえ国内の学会でも、回数が多ければ旅費や宿泊費などがかさみます。

 

また、一部の病院では勤務する医師が国内の学会に参加する際、一定の回数までは旅費などを補助していますが、年間1、2回までというケースが多く、それ以上の参加については自費になります。以前は製薬会社が交通費を負担してくれることもありましたが、最近ではそういった付き合いが禁止されるようになったため、負担が増しているという実態もあります。

 

●医師会会費

 

医師は通常、医師会に加入しています。市区町村など地域の医師会、都道府県の医師会、日本医師会と二つもしくは三つの医師会に入り、それぞれの会費を支払っているので、多い人では年間15万円以上の会費を支払うこともあります。勤務医の場合には勤務先の病院が支払ってくれるケースがあるようですが、中には個人で負担しなければならないケースも見られます。

実際には使えない特定支出控除

商店主や中小企業の経営者などの場合は、事業に必要な経費について、特に上限を定められていません。営業に欠かせないコストであれば、青天井で経費として計上できるのです。

 

一方、勤務医を含むサラリーマンに「経費」の代わりとして認められている「給与所得控除」には収入ごとに上限がある上、年々縮小される傾向にあります。高価な医学書を多数購入したり海外の学会に何度も参加したりするような勉強熱心な医師は、本当に必要な経費を税務上認めてもらえないことになり不公平といえるでしょう。

 

この不公平感をカバーする目的で設定されている制度に「特定支出控除」があります。給与所得者であるサラリーマンでも、支出の内容とその目的をしっかり証明するエビデンスがあれば、事業主と同じように「経費」が認められるというものです。特定支出と認められる出費には下記のようなものがあります。

 

●通勤費用

 

通勤に要する交通費を自腹で支払っているケースや、仕事先から支給される金額を超える分を自己負担している場合には特定支出とみなされます。

 

●引っ越し費用

 

転勤に伴う引っ越しの費用のうち、個人が負担した分は特定支出控除の対象になります。

 

●単身赴任者が帰宅するための費用

 

単身赴任者が家族のもとに帰る際の旅費です。大半の会社では一定回数までは負担してくれるので、特定支出となるのはそれを超えた場合です。

 

●研修等の参加費

 

仕事に役立つ技能を身につけるために自腹を切って研修に参加した場合は特定支出とみなされます。勤務医では学会の参加費用がこれに該当します。

 

●資格を取得するための費用

 

仕事に必要な資格を取るための費用を個人が賄った場合には特定支出として控除されます。自動車免許、英検、簿記などのほか、弁護士や公認会計士、医師の資格も対象となります。

 

●業務に必要な図書を購入する費用

 

職務上必要な書籍、雑誌、新聞などを購入する費用です。勤務医の場合には医学書や学会誌がこれに該当します。

 

●業務に関連する衣類の購入費用

 

制服や事務服のほか、スーツなどの購入費も対象となります。医師の場合は白衣を自前で購入した場合がこれに該当します。

 

●業務に関連する交際の費用

 

情報交換を目的とする飲食や接待、取引先へのお歳暮などを自費で賄った場合、特定支出とみなされます。勤務医の場合には同僚や後輩医師、看護師などと良好な関係を築く目的で飲食する際の費用などが該当すると思われます。

 

このように特定支出控除は勤務医にとって強い味方になりそうな制度ですが、現実には「とても使いにくい制度」とされています。税務署がなかなか認めてくれないため、2011年分の利用者は4人、2012年分の利用者は6人です。税制改革があり、使いやすくなったとされる2013年分は1600人、2014年分は2000人となりましたが、給与所得者は全国におよそ5500万人います。急増したとはいえ2万8000人に1人程度という非常にまれな割合でしか利用されていないのです。

 

2013年分以降に増加した利用者の大半は、新しく対象となった「資格取得費用」を特定支出として申告した人たちであり、勤務医にとっては該当しにくい支出です。

 

 

岸 洋嗣

株式会社For Realize 代表取締役

 

株式会社For Realize 代表取締役

1974年生まれ。大学卒業後、一部上場不動産会社10年間勤務。 その後、マンションデベロッパーで取締役を務め、2011年株式会社For Realizeを設立して代表取締役に就任。 これまでに扱った不動産取引は数千件以上。 自身でも収益不動産を数多く所有し、マンション経営を行っている。

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