弁護士が解説!不動産投資家のための「区分所有法」の基礎知識

一つの建物(マンション等)をいくつかの部分に分けて所有する場合、その権利関係について規定した法律が「区分所有法」です。 区分所有法の知識は、多くの不動産投資家やオーナーにとって不可欠なものです。今回から、前編・後編に分け、区分所有法の基礎について解説します。※本連載では、投資用不動産業界の健全化を目指す一般社団法人首都圏小規模住宅協会が、正しい知識と公平な情報を紹介します。

マンション一つの中に「複数の所有権」が成立

【今回の執筆者紹介】

竹村鮎子弁護士

練馬・市民と子ども法律事務所

2009年弁護士登録

 

マンションは一つの建物ですが、その中に独立した複数の部屋があり、それぞれ個人が所有しています。そのため、マンション全体の利益と各部屋の所有者の権利を調整する必要があります。

 

法律上、一つの物に対する所有権は一つしか成立しないと考えられています。これを「一物一権主義(いちぶついっけんしゅぎ)」といいます。

 

所有権とは、その目的となる物を自分の物として支配できる権利のことです。所有権を持っている物を、所有者は売ったり、貸したり、改造したりすることを自由に行えます。この権利は一つの物に対して一つしか成立しません。

 

これをりんごで考えてみましょう。

 

りんごは一つしかないのですから、二つ以上の所有権があること、つまり、「りんごはAさんの物でもあり、Bさんの物でもある」ということはありえません。

 

けれども、「りんごをAさんとBさんで共有している」ということはありえるのです。これは一つの所有権をAさんとBさんで共有していると解されます。りんごをどうするかはAさんとBさんの2人で決定するべきであり、AさんはBさんに無断でりんごを食べることはできません。つまり、共有の場合でもりんご一個に対する所有権は一つなのです。

 

一方、マンションのように一つの建物に、住居、店舗、事務所または倉庫、その他建物として、構造上区分された数個の部分があり、用途に供することができるものがあるときは、その独立した部分を所有権の目的とすることができます。

 

この建物の中の独立した部分に対する所有権を、「区分所有権」といいます。

 

建物自体は一つなのに複数の所有権が成立していることから、マンションの区分所有権は「一物一権主義」において、例外とされています。マンションなどは、一つの建物に複数の構造上独立した部分=区分所有権の目的となる部分と、独立していない部分=区分所有権の目的とならない部分があります。

 

また、マンション全体の利益と複数の区分所有権者間の利害を調整する必要があります。 このために定められたのが「建物の区分所有等に関する法律」、すなわち「区分所有法」です。

「専有部分・共用部分・専用部分」の境界線とは?

マンションなどを購入する際によく出てくる言葉に、「専有部分」「共用部分」というものがあります。専有部分や共用部分という用語についても、区分所有法で規定されています。

 

「専有部分」とは「区分所有権の目的たる建物の部分」(区分所有法第2条3項)で、「共用部分」とは「専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物」(区分所有法第2条4項)と定義されています。

 

いわゆる分譲マンションの例でいえば、「専有部分」とはマンション内の居室部分、共用部分とはそれ以外のエントランスや廊下、エレベーターなどが該当します。

 

専有部分は区分所有権の目的となり、専有部分の区分所有権を有する人のことを「区分所有者」といいます。

 

部屋の名義人と考えると、分かりやすいのではないでしょうか。区分所有者は、専有部分を自由に使用することができます。そのため区分所有者は、専有部分については、リフォームなどを自由に行うことができるのです。専有部分とは区分所有権の目的となるものなので、「構造上独立している」必要があります。そのため、すなわち壁やドアで区切られた内側の部分のみを指します。

 

なお、壁やドアそのものは建物と一体となっており、構造上独立しているわけではないので、厳密には「専有部分」には該当しません。ベランダにも同じことがいえます。

 

例えば、マンションの101号室のベランダを101号室の住人が自由にリフォームできるわけではないので注意が必要です。 しかしマンションのベランダは、101号室の住人だけが使うことが予定されています。

 

このため、ベランダなどについては「専用部分(専用使用部分)」として、特定の区分所有者(設例の場合101号室の区分所有者)」のみが使用できるものとされていることが一般的です。

 

なお「専用部分」という考え方は、区分所有法に規定はされていない概念で、一般にはマンションの管理規約で定められています。

「大規模修繕の費用」は各区分所有者が負担するが…

マンションのエントランスやエレベーターなどの共用部分は、区分所有者全員の共有となります(区分所有11条)。 区分所有者それぞれの持分の割合は、原則「専有部分の床面積の割合」によります(区分所有法14条)。

 

マンションの場合、およそ10年から20年に一度の割合で大規模修繕を行うことが一般的です。大規模修繕では、マンションの外壁やエントランス・廊下・エレベーターなど、共用部分の修繕を行います。

 

共用部分は各区分所有者の共有ですので、大規模修繕の費用は各区分所有者が負担することになります。通常のマンションの清掃などに関する管理費についても、同様の考え方が採られています。

 

区分所有法の考え方からは、この修繕費用は共用部分の持分割合に応じて各区分所有者が負担することになります。しかし、マンションの管理規約で修繕費や管理費の負担割合について、区分所有者の人数に応じて頭割りをしたり、専有部分の用途に応じて変えたりするなど、区分所有法の原則と異なる定めをすることも可能です。

 

また、例えば土地の「持分」の場合、持分だけを第三者に売却したり、持分だけに抵当権を設定して金融機関から借り入れを行ったりすることが可能です。しかし、共用部分の「持分」は、専有部分と切り離して「持分」だけの売却などをすることはできません。

 

同様に、専有部分は第三者に売却して、共用部分だけの持分だけを持っていることもできません(区分所有法15条)。

敷地利用権が所有権の場合は「分離処分」はできない

各区分所有者は、マンションが建っている土地についても、専有部分を所有する利用権を持っています。これを「敷地利用権」といいます(区分所有法第2条6項)。

 

たいていの場合、敷地利用権は所有権であることが多いです(その他、賃借権(借地権)、地上権である場合もあります)。また共用部分と同じく、専有面積に応じてその割合が決定されます。

 

つまり、各区分所有者はマンションが建っている敷地に対して、その専有面積に応じた割合で共有部分の所有権などの権利を有しており、これによってマンションの敷地を利用することができるのです。

 

敷地利用権が所有権の場合、区分所有者はマンションの敷地である土地についても、共有持分を持っていることになりますが、土地の持分だけを売却したり、抵当権を設定したりすることはできず、常に専有部分と一緒に処分をしなくてはなりません。これを分離処分の禁止といいます(区分所有法第22条)。

 

今回は、区分所有法の基本的な知識についてご説明しました。区分所有法は、マンションなどの一棟の建物の区分された部分を所有権の対象とした場合、それぞれの部分ごとの所有関係と、その建物と敷地などの共同管理の仕方について定めた法律です。そのため、暮らしと密接に関わる法律といえます。

 

一棟の建物の中に共有部分と専有部分が同時に存在しているマンションの一室に投資する場合、定期的に大規模な修繕が発生します。共有部分は各区分所有者の共有のため、それぞれの区分所有者が費用を負担することになります。

 

通常の清掃など、管理費についても同様の考え方が採用されていますから、この区分所有法を理解することは、大家になる上でとても大切なことです。

 

後編では、マンションの管理に関する区分所有法の定めについてご説明します。

練馬・市民と子ども法律事務所 弁護士

2009年に弁護士登録、あだん法律事務所に入所。田島・寺西法律事務所を経て,2019年1月より、練馬・市民と子ども法律事務所に合流。主に扱っている分野は不動産関係全般(不動産売買、賃貸借契約締結、土地境界確定、地代[賃料]増減額請求、不動産明渡、マンション法等)の法務が中心だが、他にも企業法務全般、労働法関連、一般民事事件、家事事件、刑事事件など、幅広い分野を取り扱っている。実地で培った法務知識を、「賃貸経営博士~専門家コラムニスト~」としてコラムを公開しており、人気コンテンツとなっている。

著者紹介

投資への関心が高まる中で、高い安定性から注目を集める不動産投資。しかし不動産業界の現状は残念ながら不透明な部分が多く、様々な場面で個人投資家様の判断と見極めを要します。一人ひとりの個人投資家様が正しい知識を身に付け、今後起こり得るトラブルに対応していくことが肝要です。私たち一般社団法人首都圏小規模住宅協会は、投資用不動産業界の健全化を目指す活動の一環として本サイト「不動産投資塾」を介し、公平な情報をお送りいたします。

著者紹介

連載初心者から上級者まで…知っておくべき「投資用不動産」の基礎知識

本連載は、「不動産投資塾」の記事を抜粋、一部改変したものです。

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