昨今、様々な業界で技術の応用が模索されている人工知能。投資の世界でも、AI技術を活用したサービスが次々と誕生し、関心が高まっています。本連載では、AI技術を用いた株価予測ソフトを開発する株式会社ソーシャルインベストメントの山本弘史代表取締役が、AIによって大きく変わる資産運用の未来について説明していきます。今回は、筆者が自身のことを「投資スキル0点」というに至ったエピソードを紹介します。

すべての始まりは「サラリーマン投資家」との出会い

筆者は大学卒業後、テレビ放送関係の会社に入社した。仕事は忙しかったが、とにかくおもしろかった。ある日、会社での仕事のパフォーマンスを上げるために「朝活」を主催することになった。毎週1回、朝の7時に都内の喫茶店に集合し、参加者が事前に読んだ本の内容を3分以内にプレゼンをするというもので、プレゼン能力を高めたいと思っていた筆者が考えた朝の活動である。参加者はブログやSNSで集め、朝活は100回以上にも及んだ。そして、その朝活の参加者のなかにいた複数名のサラリーマン投資家の存在が、筆者の人生を変えるきっかけとなる。

 

筆者は、投資を行っている人間が身近に存在しなかったこともあり、何となく「投資は怖いものであり、やってはいけないものだ」と敬遠していた。しかし、朝活に参加している投資家と接してみると、彼らは勝っても負けても楽しそうに投資の話をしてくれた。そのうち、リスクをしっかりコントロールできれば、コツコツと収益を上げることができることもわかり、自分も実際に投資をすれば仕事にも役に立つような気もしてきた。

 

こうして筆者は投資を始めた。

損切りできずにFXで400万円の損失

最初に取り組んだのはFXであった。結論からいうと、いきなり甚大な敗北を喫した。当時の年収が600万円だったが、短期間で400万円を失った。

 

なぜか。答えはありがちであるが、「損切り」ができなかったからである。

 

あろうことか筆者は、何の知識もなく、とりあえずFX会社に資金を入れ、インターネットで「稼げる!」と記されていた情報を鵜呑みにし、ポンド円の取引を行った。

 

エントリー直後はよかった。300円、500円、1,000円と、あっという間に含み益が増えていった。その翌日、緊張をしながら口座を見てみると、何と含み益が1万円を超えていた。何の知識もないにもかかわらず、だ。そのとき「自分は間違っていない」と確信し、さらに取引枚数を増やした。

 

さらに次の日、含み益は3万円を超え、さらに取引枚数を増やした。4日目には含み益が10万円にまで達していた。「自分は天才だ」と思った。当然ながら調子に乗って、さらに取引枚数を増やした。

 

しかし、忘れもしない取引開始から5日目の朝。いつもとは様子が違った。昨日まで10万円以上あった含み益が、半分以下の5万円にまで減っていた。その翌日はさらに含み益が減って2万円に。そしてその翌日には含み益がなくなり、マイナス域に突入していた。

 

なんだか様子がおかしい。しかし自分は一時10万円の含み益を持っていた男である。そんな栄光が冷静さを失わせ、マイナス分を一気に取り戻そうと、さらに取引枚数を増やして勝負に出た。

 

その翌日から地獄の日々が始まった。

 

筆者の祈るような気持ちとは裏腹に、含み損はどんどん拡大していく。いつも心は緊張しっぱなし。含み損が気になって夜もまともに寝られない。常に寝不足。あれだけ好きだった仕事が手につかない。仕事中にもかかわらず、数分おきに携帯から口座を確認する。通勤の電車のなかでも携帯とにらめっこ。マージンコールが届いたら、会社のトイレに駆け込み、資金を十万円単位で追加投入したこと数知れず。

 

必死だった。

 

自分の理解の範疇を超えた含み損となり、損を確定するのが怖くて怖くて仕方がなかった。朝活に参加している投資家から、リスクコントロールの重要性を聞いていたが、いざ自分が極限状態に置かれると、冷静な判断などできようがなかった。

 

しかし、含み損が400万円を超えたある日、筆者は損切りをした。その時、損切りできた理由はわからないが、自分のなかで何かのスイッチが入り、損切りする勇気が沸いたのだと思う。

 

損切りしたら世界が変わった。つきものが落ちたように身も心もスッキリし、400万円もの損切りをしたにもかかわらず、なぜこれを早くやらなかったのかと後悔した。

「お金を知ること」よりも「お金儲け」が先行

筆者は父を早くに亡くし、母子家庭だったため、高校は奨学金をもらい通っていた。奨学金をもらうために月に1回、先生にピンク色の書類を提出するのだが、このピンク色の紙を握りしめて職員室に行くのが、周囲と比べて自分だけがお金に困っているようでとても恥ずかしかった。このような経験により、お金に執着し、お金を失う怖さに敏感になったのかもしれない。お金を求め、お金を失いたくないあまりに損切りをせずにズルズルと損を拡大させてしまった。

 

表現が適切かはわからないが、当時の自分を振り返ると「お金儲け」が先だったのだと思う。でも、それは違った。「お金を知ること」が先だったのだ。筆者はお金のことを知らずに投資にチャレンジし、当たり前のようにはじき返された。「お金儲け」が先だったからだ。

 

このような経験から筆者は、「朝活」を「投資の勉強会」に変更し、参加者と共に「お金を知ること」に切磋琢磨し、お金を扱う力を身に着けていった。そして、かつて調子に乗って大きな資産を失った自分を戒めるために、今でも自らを「投資スキル0点」だといい聞かせている。その後、この勉強会を通じた経験や出会いから、筆者の会社である株式会社ソーシャルインベストメントを立ち上げ、投資を通じて「ひとりで生きる力」を身に着けていただくべく、個人投資家の支援事業を行うに至った。

 

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