取引履歴ではない!? 税務調査官が「通帳の写真」を撮る目的は?

岡野雄志税理士事務所所長・岡野雄志氏の著書『相続税専門税理士が教える相続税の税務調査完全マニュアル』より一部を抜粋し、「税務調査の実態」について取り上げる。

税務調査官が印鑑を「カラ押し」する理由

調査官2人の内、上官が家の状態をよくチェックしています。

 

そして、

 

「金庫を見せてください」

「通帳の保管場所はどこですか?」

「印鑑の保管場所はどこですか?」

「貸金庫はありますか?」

 

といった質問を投げかけてきます。特に、金庫のなか、通帳と印鑑の保管場所は必ず確認します。貸金庫があれば、銀行まで相続人と一緒に見に行くことも多いです。

 

プライベートなたんすはあまり調査対象とはならないのですが、金庫でめぼしいものが見つからなかったときに、「たんすを開けてください」といわれることがたまにあります。調査官としては通帳や印鑑、はたまた現金など、金庫にあるべきものの保管場所を知りたいわけで、金庫にないのなら、どこに保管しているのですか、ということを聞きたいのです。

 

もし金庫のなかに現金があれば調査官としてはしめたものです。「この現金は相続財産なのではないですか?」と追及してくるでしょう。一方で相続人は「自分自身のお金です」と主張することになります。

 

当事務所が立ち会った調査でも、金庫のなかに600万円が置いてあったことがありました。私自身も相続人から現金の存在を全く聞かされていなかったものですから、非常に驚きました。結局その600万円に関しては、被相続人の相続財産なのか、それとも相続人の固有財産なのかわからなかったため、税務署との交渉で最終的には半分の300万円は相続財産、もう半分は相続人の固有財産となり、痛み分けのような形で決着がつきました。

 

また、被相続人の印鑑に関しては、最近使われたかどうかを確認するために調査官がカラ押しすることがあります。被相続人の死亡後、長らく使われていないはずですから、もしカラ押しして、朱肉の赤がついたりすれば、それは最近相続人の誰かが使った、つまり被相続人の預金を引き出した可能性が出てくるのです。日頃からよくふいておけばあまり意味のあることではないと思うのですが、税務署の伝統なのかもしれません。

税務調査当日に気をつけるべきこととは

税務調査で一番大事なのは、嘘をつかないことです。仮装や、隠ぺいがあったと判断されると、重加算税を課せられてしまうからです。重加算税とは、故意の仮装や隠ぺいに課せられる重い追徴課税です。

 

税務署にとって重加算税は非常に魅力的な追徴課税です。重加算税の課税対象者には、時効までの7年間、35%~最大で50%という高額な加算税が延々とかかり続けるからです(延滞税は最長1年で打ち止めです)。

 

そもそも、嘘はすぐにばれます。調査官はわかっていることをあえて聞いてきているのですから。金融機関の取引履歴を押さえ、申告されていない口座があることもわかったうえで、「このほかに預金はないですか? どうですか?」と聞いてきます。大きな出金がされていることもわかったうえで、「このお金はどこへ行ったのでしょう? わかりますか?」と聞いてきます。

わからないことに即答する必要はない

答えられない、わからないことがあれば、変にごまかしたりせず、正直に「わからない」と答えればいいのです。即答する必要はありません。

 

そもそも、被相続人の預金口座に関して質問されたとしても、相続人はわからなくて当然です。現実的に考えれば、いい年をした大人がいちいち出金するたびに、親族に報告なんてしないでしょう。

 

わからなければ正直に、「もう数年前のことですし、亡くなった父親のことなので、調べてみなければわかりません。あとで調べて回答します」といえばいいのです。

 

調査官が「100万円という大きな金額なのにわからないのですか?」と追及してきた場合には、たとえば相続人が10億円の財産を持つ資産家であれば、「100万円なんて、財産の0.1%です。0.1%の財産の行方なんて覚えていません」と答えればいいのです。

 

何はともあれ、不確かなことはその場で答えないのが一番です。準備すべきことは準備しておき、それ以外のことを尋ねられたら、「あとから返答します」と答えましょう。

税務調査官から聞かれたことだけに答える

調査当日は、できるだけ調査官に聞かれたことにだけ答えるようにしてください。聞かれたこと以外は、雑談を含めて自分から話したりしないほうが良いでしょう。

 

ましてや、調査官に挑発的なことをいうなんてもってのほかです。

 

以前、終了予定の午後4時頃になっても帰ろうとしない調査官に対して、相続人が「そろそろ帰る時間じゃないの?」と挑発するような言葉を投げかけたことがありました。すると、調査官はかえって意地になったのか、午後6時半頃まで調査を引き延ばしていきました。調査官とて人間ですから、神経を逆なでするような言動は慎みましょう。

税務調査官の「除外」という言葉に注意すべきワケ

午前のヒアリングの際に気をつける言葉に、「除外」というものがあります。調査官に「この預金の申告がされていませんが、これは『除外』したということでよいですか?」などといわれたら決して「そうです」などと肯定してはいけません。

 

「除外」には、「脱税のために意図的に申告しなかった」という意味合いが込められているからです。

 

調査官のそういった誘導尋問ともいえる質問にはきっぱりと、「『除外』ではなく、単に『うっかり申告漏れしていただけです』」と答えることが重要です。

午前の調査と午後の調査で矛盾を起こさないように

午前のヒアリングと午後の現物確認の間に矛盾が起きると、必ず調査官に指摘されます。たとえば、よくあるケースとして午前に「贈与はありましたか?」と尋ねて相続人から「贈与はありませんでした」という言質を取り、午後に実際の取引明細を見ながら「ここから預金が移動していますね。贈与ではないのですか?」と、あたかも隠ぺいしたかのように誘導する、ということがあります。

 

その場合は、「被相続人のやったことだからわからない」「何年も前のことなので忘れてしまった」など、正直に答えるのが良いでしょう。

質問応答記録書の作成にあたっての協力要請には…

調査官から「質問応答記録書の作成に協力してください」と頼まれることがありますが、安易に応じないほうが良いです。一般的な感覚としては、要請に応じて協力したほうが反省したものとみなされて処分が軽くなりそうなものですが、実際には全く逆で、この「質問応答記録書」は自白の証拠として使われてしまうのです。

 

この「質問応答記録書」には決まったフォーマットがあるわけではありません。若手調査官がその場で調書を書き、「ここにサイン、もしくは捺印してください」といってくることがほとんどです。なので、若手調査官が何やら書類を書きはじめたら、「質問応答記録書を作っているな」と推測することができます。

 

この「質問応答記録書」に署名してしまうと、不正を認めた証拠になり、重加算税を追徴されてしまうこともあります。

 

相続税の税務調査で、この「質問応答記録書」作成への協力を要請される割合は、約%とわりかし多いので、当事務所では、「書類に一筆書いてくれといわれても、書かないほうが良いです」と事前にレクチャーしています。

税務調査官が「写真を撮る」目的とは?

被相続人の取引履歴に関しては、すでに金融機関から取り寄せて持っているはずなのに、調査官はわざわざ「通帳を写真で撮らせてください」といいます。

 

その目的は、被相続人の手書きのメモを証拠として撮ることにあります。出金金額の横に名前が書いてあれば、その名前の人のところへ預金を移したのだとわかります。お孫さんの名前や、相続人の名前が書いてある原本を押さえたいのです。

 

さらには、金庫のなか、保険証券(保険証書)なども写真を撮られます。

 

当事務所が調査に立ち会うときには、調査官に写真を撮られたものをすべてメモして、控えておきます。そうすることで、調査後にどこを指摘されるのか予想ができるからです。調査官が写真を撮らない=証拠を持っていかない以上は、その件について指摘されることもないでしょう。

税務調査官がしてはいけないこと

質問検査権があるとはいえあくまでも任意調査ですので、調査対象者に全くプライバシーがないわけではありません。調査官は金庫のなかに手を突っ込むことはできませんし、たんすのなかを勝手に探ることもできません。

 

たとえ、金庫のなかに現金があったとしても、数えるのは相続人・税理士側です。

岡野雄志税理士事務所 所長 税理士

相続税専門の税理士。早稲田大学商学部卒業。2005年、横浜市に事務所を設立。開業以来、相続税還付や申告、対策など相続税関連の案件を600件以上手がける。全国各地で332件以上の相続税還付に成功。2014年12月『納めてしまった相続税が驚くほど戻ってくる本』(あさ出版)を出版。2015年2月に新横浜駅の事務所に移転。

著者紹介

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