手技から機械へ…「白内障手術」を発展させた手術機器の数々

本連載では、白内障治療に強みをもつ、アイケアクリニック院長の佐藤香氏が、白内障の基本的な症状や治療法を解説します。今回は、「白内障手術」を発展させた手術機器について見ていきます。

適切な切開位置をガイドする手術機器「ベリオン」

かつての白内障手術では、医師のやりやすい方向に合わせて、角膜を切開する位置決めていました。その結果、乱視が強くなったり、逆に弱まったりすることもありましたが、当時、その程度は誤差の範囲ということで、問題になりませんでした。

 

しかし、VERION(以下、ベリオンと表記)の登場によって、乱視を矯正するための切開を、正確に行えるようになりました。

 

今回は、切開創や、眼内レンズの位置を正確に測定する機器ベリオンについて紹介します。

 

◆目の情報を計測し、手術中にガイドしてくれる

 

 

ベリオンは、白内障手術の際、目の切開位置や、眼内レンズの位置を決めたりするのに非常に役立つ機器です。起立中や着座中のときと、横たわったときで変化する目の状態を的確に捉え、その変化を計測した上で、ガイドしてくれる点が特に優れています。

 

人の目は、体を起こして検査をする状態と、手術のために横になっている状態では、わずかに回旋(ねじれ)による変化が生じてしまいます。それらの変化を考慮せずに、予定した通りに、切開したり眼内レンズを入れたりすると、計画していた結果にならない可能性が高まるのです。

 

乱視矯正のレンズを使っているにも関わらず、逆に乱視を悪化させるような切開をしたり、レンズの位置ズレを起こしたりしかねません。これらの予防策として、目に医療用のペンで印をつけているクリニックもあります。

 

べリオンは手術中、常に計測を行って切開の位置や眼内レンズの位置をガイドしてくれます。
べリオンは、手術中に常時計測を行い、切開の位置や眼内レンズの位置をガイドしてくれます。

 

その点ベリオンは、目の情報(結膜の血管や虹彩の特徴など)を記録・追跡します。手術中における軸のズレを補正し、正しい切開位置やレンズの位置をガイドしてくれるのです。

 

多焦点レンズの挿入や、乱視矯正など、高度な技術が求められる白内障手術では、なくてはならない機器です。

 

◆LenSx(レンズエックス)やORA(オラ)との連携で、非常に精度の高い白内障手術を実現

 

ベリオンは、手術機器や眼内レンズの開発業者・アルコン社が提供する、高精度な白内障手術を実現するシステム「The Cataract Refractive Suite」の機器の1つです。同システムを構成する、LenSx(以下、レンズエックスと表記)やORA(オラ)と連携すると、よりよい手術結果をもたらすことができます。

 

当院では、高精度の白内障手術を実現するため、国内第1号として、2015年6月にベリオンを導入しました。当時は、レーザー白内障手術をする機器・レンズエックスを導入する前だったので、ベリオンのデータをもとに、医師の手で切開していました。それでも、手術がとても平易になったことを覚えています。

 

レンズエックス導入後は、手術の精度がグンとアップしました。術前の目の状態をベリオンで把握し、検査結果の解析データをレンズエックスへ送れば、全自動で切開できるようになったからです。手術の精度は見え方に直結しますので、いち早く導入して正解でした。

 

最適なレンズ度数を術中に分析してくれる「オラ」

高精度な白内障手術を実現させる手術システム「The Cataract Refractive Suite」。複数の機器を連動することで、切開位置から眼内レンズの固定位置まで、最適なガイドをしてくれます。

 

ORAシステム(以下、オラと表記)は、術中の目の状態をリアルタイムで計測し、適正なレンズ度数や、レンズの固定位置をガイドしてくれます。本項では、オラについて紹介します。

 

◆オラが解決した、白内障手術における2つの問題

 

オラが登場した背景には、白内障手術でなかなか解決できない2つの問題がありました。

 

 

●手術前に計算した度数とズレてしまう

 

1つは、術前の検査で導き出された眼内レンズ度数にズレが生じ、当初計画していたような見え方にならない点です。

 

ほとんどの場合は、検査で得られた数値に適切な計算式を当てはめることで、最適な度数が導き出されます。しかし、角膜のカーブや目の長さが平均から大きくはみ出ていたり、不正乱視があったりすることで、計算にズレが生じてることがありました。たとえば、レーシック手術を行った目は、平均と比べ、角膜のカーブがかなり変化しています。そのため、特別な計算式が必要になり、思うような手術結果が得られませんでした。

 

●手術中に屈折率が変化してしまう

 

もう1つの問題は、手術中に屈折率が変化してしまうことです。角膜の切開位置によって屈折率は変わりますし、水晶体の中身を取り除いたあとにも変化します。

 

また、施術の過程は手術ごとに異なるため、その分、屈折率の変化には差が生じてします。それらは微々たるものですから、単焦点眼内レンズを使用した手術では、大きな問題になりません。しかし、高精度の多焦点眼内レンズや乱視矯正レンズを使用する場合には、小さな差異が見え方に影響してしまうのです。

 

オラは、手術中に目の屈折率を再計測し、これらの問題を高い精度で解決します。さらにこの機器は、オンラインで世界中の手術データとリンクしています。計測変数の最適化やアップデートを常にしているので、最新のデータで計算をしてくれるのです。

 

 手術中のオラの画面。常に目の状態を計測して、最適なレンズの度数やレンズの固定位置を示してくれます。

手術中のオラの画面。常に目の状態を計測して、最適なレンズの度数やレンズの固定位置を示してくれます。

 

◆高い手術結果を求めるなら、なくてはならない機器

 

平均とは異なる数値の目を手術する場合や、高度な多焦点眼内レンズを使用する場合、オラはなくてはならない手術機器といえるでしょう。逆に、平均的な目の手術でも、手術前の検査と同じ結果になるかを試すことができます。安心して手術を進められる便利な機器です。

 

オラは、レンズエックスやベリオンなど、「The Cataract Refractive Suite」のほかの機器と連動して手術をサポートする、とても重要な手術機器の1つです。当院では、患者さんの満足度をさらにアップするため導入し、ご好評いただいています。

 

 

佐藤 香

アイケアクリニック院長

医療法人トータルアイケア理事

アイケアクリニック銀座院副院長 医師

 

アイケアクリニック院長
医療法人トータルアイケア理事
アイケアクリニック銀座院副院長 医師

獨協医大越谷病院・眼科専門外来として、黄斑外来・緑内障外来・糖尿病レーザー外来・PDT外来・硝子体内注射外来等を担当しながら、栗原眼科にも勤務。
白内障や眼瞼、結膜疾患の手術を中心に担当。その後、八潮中央総合病院眼科医長として、白内障、眼瞼、結膜疾患だけでなく緑内障手術、網膜硝子体手術、硝子体内注射など幅広く手術も行いながら、外来診療では地域住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。

http://cataract.eye-care-clinic.jp/

著者紹介

連載40代でも発症する目の疾患「白内障」の基礎知識

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