眼科医が「レーザー白内障手術」をすすめる本当のワケ

本連載では、白内障治療に強みをもつ、アイケアクリニック院長の佐藤香氏が、白内障の基本的な症状や治療法を解説します。今回は、医師自身の手で行う「マニュアル手術」と「レーザー白内障手術」の違いについて見ていきます。

医師自身の手で行う「マニュアル手術」が一般的だが…

角膜に切開創を作り、そこから器具を挿入、水晶体のふくろの前面を円形に切り取って、中身を粉砕し吸引する・・・という白内障手術の一連の作業を、医師自身の手で行うマニュアル手術。現在でも一般的に行われている手術ですが、レーザー白内障手術に比べて精度が劣るのは否めません。

 

マニュアル手術とは、「人(医師)の手で行う手術」という意味で使われている言葉です。白内障治療では、健康保険適用の場合、もしくは先進医療や自由診療の対象の「多焦点眼内レンズ」を使用する手術で、レーザー機器を使わない場合に、行われている方法です。

 

◆白内障手術の流れ

 

白内障の標準的な手術である超音波乳化吸引術は、以下の流れで行います。

 

① 点眼で麻酔をします。
① 点眼で麻酔をします。
② メスで角膜に1.8~2.4㎜の切開創を作ります。
② メスで角膜に1.8~2.4㎜の切開創を作ります。
③ メスや鑷子(せっし)などを使って水晶体のふくろの前面(前嚢[ぜんのう]といいます)を円形に切り取ります。
③ メスや鑷子(せっし)などを使って水晶体のふくろの前面(前嚢[ぜんのう]といいます)を円形に切り取ります。
④ 水晶体の中身を超音波で砕きながら吸引します。
④ 水晶体の中身を超音波で砕きながら吸引します。
⑤ 水晶体のふくろに眼内レンズを挿入します。
⑤ 水晶体のふくろに眼内レンズを挿入します。
⑥ 眼内にレンズが固定されていれば無事に手術は終了です。
⑥ 眼内にレンズが固定されていれば、手術は無事終了です。

 

これら一連の流れを、医師の手ですべて行うのがマニュアル手術です。LenSx(レンズエックス)をはじめとするフェムトセカンドレーザーを用いた高度な手術機器では、④の「水晶体の中身を砕く」までを、正確に行うことができます。

 

◆マニュアル手術のメリットは手術時間が短いこと

 

マニュアル手術のメリットは、手術時間が短く済むことにあります。意外かもしれませんが、レーザー白内障手術のほうが、マニュアル手術よりも余計に時間がかかるのです。

 

なぜならば、レーザー白内障手術では、「角膜切開→前嚢の切り取り→水晶体の粉砕」までの作業と、そこから「水晶体の吸引→眼内レンズを挿入」する作業は別々に行われるため、移動の時間が必要になるのです。およそ5分程度ではありますが、余分に時間がかかってしまうのは避けられません。

 

一方で、マニュアル手術の場合、同じ場所ですべての作業を終えられるため、時間が短縮できます。

専門分野の細分化が進み、手術経験のない医師も

◆術者の手技に頼るため、ミスの可能性がある

 

マニュアル手術のデメリットとしては、術者である医師次第で、ミスや誤差が起こりやすいことが挙げられます。

 

水晶体の前嚢を切開するとき、レーザーを使えば、一瞬で患者さんの目に合った大きさの穴を開けられます。しかし、同じことを医師の手で行うと、メスが予定していた方向とは違った向きに流れてしまうことが起こり得るのです。メスが流れ、うまく円がつなげられずに、水晶体のふくろに亀裂が入ってしまうと、眼内レンズを固定できなくなることもあります。

 

◆前嚢切開をきれいにできないと、別の手術が必要に

 

前嚢に亀裂が入ってしまい、眼内レンズが水晶体のふくろに固定できなくなった場合、目の強膜という部分(白目の部分)に眼内レンズを固定させる「眼内レンズ強膜内固定術」という手術が必要になります。

 

その場合、強膜内固定術ができる眼内レンズを使わなければなりません。用意していた眼内レンズが使えない場合は、その日には手術を終えられずに「また後日」ということになってしまいます。

 

そもそも白内障の執刀医に、強膜内固定術の手術経験がない可能性すらあります。眼科領域では、専門分野の細分化が進んでいるため、白内障の手術以外したことがない医師もいます。その場合、患者さんは別の施設に送られることになります。

 

◆より安全な白内障手術をするなら、レーザー白内障手術を

 

白内障手術は、医療の進歩によってとても安全になっており、マニュアルだからといって失敗することは、ほとんどないといえます。しかし、術者の手技に頼るため、熟練していない新米医師が手術を行うと、どうしてもミスが発生する可能性があります。

 

その点、レーザー白内障手術を選択すれば、医師の手技が熟練していなくても、最良の結果をもたらすことができます。安全な白内障手術を、さらに安全にする技術といえるのです。

 

 

佐藤 香

アイケアクリニック院長

医療法人トータルアイケア理事

アイケアクリニック銀座院副院長 医師

 

多焦点眼内レンズの先進医療保険適応は2020年3月までとなります 

アイケアクリニック 院長
アイケアクリニック銀座院 院長 

集中力を要する緻密な作業を得意とし、特に最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。
まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。
日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケアー「トータルアイケア」の提供を目指す。
現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌などさまざまなメディアに取り上げられている。

http://cataract.eye-care-clinic.jp/

著者紹介

連載40代でも発症する目の疾患「白内障」の基礎知識