負担軽減、合併症予防…「レーザー白内障手術」のメリット

本連載では、白内障治療に強みをもつ、アイケアクリニック院長の佐藤香氏が、白内障の基本的な症状や治療法を解説します。今回は、「レーザー白内障手術」のメリットについて見ていきます。

レーザー白内障手術で可能となった高度な治療とは?

2000年代初頭に眼科手術で使われるようになったレーザーメスの一種・フェムトセカンドレーザー。このレーザーを利用した白内障手術が行われるようになり、手術の安全性・安定性が著しく向上しました。その理由は、角膜や前嚢の切開などを自動的かつ正確に行えることにあります。

 

◆フェムトセカンドレーザーは目の組織に余計なダメージを与えない

 

白内障手術に使用されるフェムトセカンドレーザー。「フェムト」は1000兆分の1を、「セカンド」は秒を意味しています。つまりフェムトセカンドレーザーとは、1000兆分の1秒という短い間隔で照射できるレーザーのことです。

 

非常に短い時間で分子結合を切断することができるため、熱を発生することなく施術でき、周囲の組織に影響を与えないのが大きな特徴です。

 

フェムトセカンドレーザーを手術工程の一部に使った白内障手術をFLACS(Femtosecond Laser-Assisted Cataract Surgery)といいます。日本では、アルコン社のLenSx(レンズエックス)という機械がFLACSの国内承認を最初に得て、発売が開始されました。当院では、2014年1月に発売開始されたこの機械を日本で最初に導入し、高精度な白内障手術をいち早く実現しています。

 

 

◆角膜の切開~水晶体の粉砕を自動で、正確に行うことができる

 

白内障の手術において、フェムトセカンドレーザーによって以下の施術を行うことができます。

 

① 角膜を切開する(乱視矯正のための角膜切開も可能)

 

レーザーによって正しい位置、大きさ、深さの切開創を作ります。

 

 

② 水晶体を包む嚢を切り開く

 

レーザーによって真円に近い形で、また適切な大きさに前嚢を切開します。

 

 

③水晶体を細かく分割する

 

水晶体の中身を細かく分割して破砕します。乳化吸引する際に、超音波のパワーを抑えることができるので、目の組織への影響を軽減することができます。

 

 

従来、角膜を切開し、水晶体を包む嚢(のう:袋のこと)に穴を開け、水晶体を砕くという一連の作業は、人の手で行われていました。これを、非常に短い時間かつ、自動で行えるというのが最大のメリットです。

 

切開創を作る場所、大きさ、形などの指定がすべて自動で行えるだけでなく、人の手では難しい角度で切開創を作ったり、水晶体を2000以上に分割するなど細かく砕いて取り出しやすくしたりと、さまざまなことが可能になります。

 

人の手を使うと、誤差が生じる可能性もありますが、フェムトセカンドレーザーを使った場合は、手術前のプランをそのまま、完璧に落とし込むことができます。

 

たとえば、前嚢の切開の大きさは、使用する眼内レンズによって異なります。眼内レンズによっては、直径5.7㎜がベストだったり、あるいは6㎜がベストだったりするのです。医師の手で行う場合、誤差が生じやすいので、必ずしもベストな大きさになるとは限りません。ところが、フェムトセカンドレーザーを使うと、自動で指定した通りの大きさに切開することができるのです。

「目の組織へのダメージ」を最小限に抑えることが可能

◆誤差なく施術できるため、細菌感染などの合併症リスクも軽減する

 

また、レーザーが予定した通りに、自動かつ正確な施術をしてくれるので、目の組織へのダメージを最小限に抑えることができ、合併症が起こるリスクを軽減できるというメリットもあります。

 

人の体は、内部に手術器具が侵入することや、切開による傷(切開創)が外の空間とつながることで、外界にある菌が体内に侵入するリスクにさらされます。手術後に、医師が傷の治り具合を気にするのはそのためです。傷の治りが早いほど、細菌感染のリスクは軽減し、遅いほどリスクが高まります。

 

白内障の手術の切開創もなるべく早くふさがることが望ましいですが、それを可能にするのがフェムトセカンドレーザーです。皮膚に対して垂直に入った傷は治りにくく、斜めに入った傷は治りやすいと感じたことはありませんか? それと同じことが、白内障手術の切開創にもいえます。

 

医師の手で切開創を作る場合、メスを入れる角度に制限が生じますが、フェムトセカンドレーザーなら切開の角度を自由自在に指定できます。傷のふさがりやすい角度での切開が可能なので、細菌感染のリスクが大幅に軽減できるのです。

 

 

佐藤 香

アイケアクリニック院長

医療法人トータルアイケア理事

アイケアクリニック銀座院副院長 医師

 

多焦点眼内レンズの先進医療保険適応は2020年3月までとなります 

アイケアクリニック 院長
アイケアクリニック銀座院 院長 

集中力を要する緻密な作業を得意とし、特に最先端の白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。そのほか、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。
まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。
日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケアー「トータルアイケア」の提供を目指す。
現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌などさまざまなメディアに取り上げられている。

http://cataract.eye-care-clinic.jp/

著者紹介

連載40代でも発症する目の疾患「白内障」の基礎知識