どんなにがんばっても「日本の財政赤字」が解消しない理由

膨張が止まらない日本の財税赤字。国民は一生懸命働き、企業の業績も決して悪くないのに、まったく減少する気配を見せません。なぜでしょうか? 今回は、財政赤字が減りにくい理由を考察します。将来の経済不安には、正しい経済学の知識で対抗を。塚崎公義教授の目からウロコの経済談義、連載第15回目です。

「財政赤字の主因は公共事業」と思われていた昭和時代

昭和の頃は、「財政赤字の主因は政治家が選挙区に橋や道路を作るために予算を付けることが財政赤字の原因だ」と考える人も多かったでしょうし、実際にそうした面も大きかったと思います。

 

しかし、いまはまったく違います。国の平成31年度の一般会計予算を見ると、歳出と歳入がいずれも101兆円という規模に対し、公共事業は7兆円しかありません。税収等で賄えないため国債を発行して調達している資金が33兆円もあるのに、です。

 

ちなみに、公共事業費、文教予算、防衛費、食料安定供給関連予算、エネルギー対策費、等々の「普通の歳出」を全部合計しても、28兆円程度に過ぎません。

社会保障等削れない項目74兆円、一方税収等は62兆円

最大の歳出項目は、社会保障の34兆円です。年金や健康保険等への歳出ですから、簡単には減らせません。理論的には減らせるのでしょうが、シルバー民主主義ですから、政治的には難しいでしょうね。

 

ちなみに、シルバー民主主義というのは、高齢者が望む政策を政治家が採用しがちである、ということです。高齢者が人数も多く投票率も高い現状を考えれば、それは仕方のないことなのかもしれませんが、それを避けるために、ぜひとも若い人たちに投票に行ってもらいたいものです。

 

次に大きな歳出項目は、国債費の24兆円です。これは、過去に発行した国債の償還や利払いの費用ですから、絶対に削れません。

 

3番目に大きいのが「地方交付税交付金等」の16兆円です。これは、地方公共団体によって地方税収入の多い所と少ない所があるため、税収の少ない地方公共団体に政府が資金を配分する、というものです。

 

これも、理屈の上では削れないわけではありませんが、削ると地方公共団体が困るので、なかなか簡単には削れないでしょうね。

 

以上の3つを合計しただけで、74兆円になります。一方で、税収等(借金に頼らない歳入)は62兆円しかありませんから、極端な話、公共事業や防衛費等々を全部ゼロにしても財政は黒字にならないのです。

財政収支の黒字化は、増税しか手がないのだが…

上記の結論は、歳出を削って財政を黒字にするのは極めて困難だ、ということになりそうです。それならば、財政収支を黒字にするためには増税するしかありません。

 

しかし、増税は容易ではありません。もちろん、「政治家が人気取りのために増税を避けたがる」ということもありますが、それだけではありません。「増税をして景気が悪化したら大変だ」と考えると、怖くて増税に踏み切れないのです。

 

増税をして景気が悪化したら、失業者が増えてしまいます。そうなると、失業対策の予算が必要になりますし、一方で不景気で税収が落ち込みます。そして、困ったことに、景気は一度悪化をはじめると、そのまま悪化を続ける力が働きかねないのです。

 

景気が悪くて物が売れないと、企業は生産を減らすので、雇用も減らします。そうなると、失業した人が「所得が無いから物が買えない」ということで、消費が減り、一層物が売れなくなります。

 

生産が減ると、企業の設備投資が減ります。今の工場の稼働率が低いのに、新しい工場を建てる必要は無いからです。既存の工場の一部が古くなって壊れても、そのまま放置されるかもしれません。壊れた機械を新しい物に置き換えなくても、生産能力が間に合ってしまうからです。

 

そうなると、金融を緩和しても、景気は良くなりません。金利がゼロでも、不要な設備投資は行わないからです。

 

そうした悪循環に陥ると、財政支出を大幅に増やして景気の回復を図る必要がでてくるので、かえって財政は悪化するかもしれません。そう考えると、増税も容易ではないのです。

 

今回は、以上です。
 

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塚崎 公義

久留米大学教授

 

久留米大学商学部 教授

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。
著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。
趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載塚崎公義教授の目からウロコの経済談義

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