日本の財政破綻が危惧される一方で「国債」が売れ続ける理由

積み上がる巨額の財政赤字を前に「日本政府の破綻」を予期する投資家は少なくありません。しかし、そんな彼らも実は日本国債を買っていたりします。なぜでしょうか? 今回は、その理由を考察します。将来の経済不安には、正しい経済学の知識で対抗を。塚崎公義教授の目からウロコの経済談義、連載第16回目です。

政府が破産するときは、日銀も破産するわけだが…

日本政府の財政赤字は巨額で、毎年の赤字を借金で賄っていることから、借金の残高も巨額です。民間企業なら間違いなく倒産しているレベルです。そこで、日本政府の財政は将来破綻する(=日本政府は破産する)と考えている人は少なくありません。投資家のなかにも、財政破綻を心配している人は多数います。

 

しかし、そうした投資家も、日本国債を喜んで買っています。普通なら、破綻しそうな会社の社債は買わないはずですし、まして金利がゼロの社債は買わないでしょう。なぜ彼らは社債を買わないのに、日本国債は買うのでしょうか。

 

「国債は、売りたくなったら日銀に売りに行けば買ってくれるから安心だ」と考えているとしたら、それは間違いです。日銀は政府の子会社ですから、政府が破産するときには日銀も破産するのです。

 

そして、日銀に国債を売って代金を受け取っても、代金は日本銀行券で支払われるわけですから、「破産した銀行の印刷した紙切れ」が手に入るだけなのです。

国債は「ほかの選択肢がないから買わざるを得ない」

金庫に現金があったとしても、危険な社債を買う必要はありません。現金のまま持っているか優良企業の社債を買えばいいからです。

 

しかし、巨額の現金を持っているためには巨大な金庫を買う必要があるので、それよりは国債を買ったほうが得です。優良企業の社債も低金利なのであれば、社債より国債を買ったほうがマシかもしれません。

 

つまり、社債は「ほかの選択肢があるから買わない」一方で、国債には「ほかの選択肢がないから買わざるを得ない」のです。

米国債と比べると、日本国債のほうが有利かも

米国債を買うという選択肢はありますが、その場合には円をドルに替える必要があるので、為替リスクを負うことになります。投資家としては、それと日本政府破産のリスクの兼ね合いを考えるわけです。

 

日本政府が明日までに破産する可能性は極めて小さいですから、「とりあえず、日本国債を購入して今晩を過ごそう。明日のことは、明日になってから考えよう」という投資家は合理的でしょう。米国債を買えば明日までにドル安円高になって損をするリスクがある一方で、日本国債を買えばリスクがほとんどないからです。

 

そうなると、その投資家は、明日もまったく同じことを考えるでしょうから、明後日までは日本国債を持っているでしょう。そして、その後についても同様でしょう。

 

もちろん、米国債の方が日本国債より金利が高いですし、ドル高円安になって為替差益が稼げるチャンスもありますから、それを考えて米国債を買う投資家もいるでしょうし、彼等もまた合理的ではありますが。

「みんなが買う」ものは安心⁉

金融の世界では「ほかの投資家が何を考えているか」が重要です。株価は美人投票だ、といわれるのは「ほかの投資家が値上がりすると思っている銘柄は、ほかの投資家が買い注文を出すので値上がりする」ということですね。

 

それが極端なのは、バブル期です。企業の実態からかけ離れて株価が高騰し、バブルが崩壊すると企業の実態が変わらないのに株価は暴落します。

 

銀行の取り付け騒ぎも同様ですね。銀行自体には何の変化もないのに、「あの銀行は倒産するらしい」という噂が流れると、預金者が預金の引き出しに殺到して金庫が空になり、本当に倒産してしまうかもしれません。こちらの方が影響は深刻ですね。株価が暴落しても、その会社が倒産するわけではありませんから。

 

社債と国債についても、同様のことが影響しています。国債は、上記のメカニズムで多くの投資家が買います。したがって、日本政府が資金繰りに困ることはなさそうです。それなら、安心して国債を買っても大丈夫でしょう。投資家同士が互いに「ほかの投資家が買うから、私も安心して買おう」と思っているわけですね。

 

一方で、社債はほかの投資家が買うとは限りません。したがって、社債を発行している会社は資金繰りに困って社債が償還できなくなるかもしれません。

 

それなら、社債より国債の方が安心だ、と多くの投資家が考えるので、ますます多くの投資家が国債を買うようになり、ますます日本政府が破産する可能性が小さくなる、というわけですね。

 

今回は、以上です。

 

 

塚崎 公義

久留米大学教授

 

→毎日読むのが楽しみ!「幻冬舎ゴールドオンライン」無料メルマガ登録はこちら​

 

 

幻冬舎ゴールドオンラインの主催・共催・協賛セミナーをいち早くお届けする、

LINE@アカウントを始めました!お友達登録はこちらからお願いします。

 

友だち追加

 

久留米大学商学部 教授

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。
著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。
趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載塚崎公義教授の目からウロコの経済談義

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧