卵の白身と同じ原理?目の「水晶体」が濁る仕組みと治療方法

本連載では、白内障治療に強みをもつ、アイケアクリニック院長の佐藤香氏が、白内障の基本的な症状や治療法を解説します。今回は、「白内障」を発症する仕組みとその治療方法について見ていきます。

「カメラのレンズ」と同じ役割を果たす水晶体

白内障は、目のなかの水晶体という組織が濁る病気です。一度濁ってしまった水晶体は、もとのように透明にすることはできず、白内障を治療するには、手術をして水晶体の中身を人工の眼内レンズに置き換えるほかありません。では、なぜ水晶体を透明にすることができないのでしょうか? 今回は、水晶体が濁る仕組みを紹介します。

 

◆ピントを合わせる役割をする水晶体

 

水晶体がどのように濁るかという話をする前に、水晶体がものを見る上で果たしている役割について、簡単に説明します。

 

●ものを見るためのプロセス

 

私たちがものを見るとき、それらのすべては「光」として目に入ってきます。目に入った光が網膜で像を結ぶには、以下のプロセスをたどります。

 

1 角膜で入ってくる光を屈折させます。

 

角膜には光を一点に集中させて焦点(ピント)を合わせるために、光を屈折させる働きがあります。

 

2 光の量を瞳孔で調節してとらえます。

 

瞳孔は、虹彩の中心にある黒い空洞のことです。虹彩は、暗いときには多くの光を取り入れるために広がり、明るすぎるときは、光の量を少なくするために狭まります。そうして光の量を調節し、ものを見やすくします。

 

3 水晶体でピント調節が行われます。

 

水晶体は直径約9㎜、厚さ約4㎜ほどの透明な組織です。角膜と同じく光を屈折する働きがありますが、厚みを変えることによって屈折を調節することができます。この調節機能によって、遠くの光でも、近くの光でも、うまく焦点を合わせることができます。

 

4 水晶体で屈折を調節した光が、網膜の中心にある黄斑で焦点を結び、像として映しだされます。

 

網膜の視細胞は光の情報を電気信号に変え、視神経を通して脳に伝達します。網膜の中心にある黄斑には、視細胞が特に集まっており、目に入る光は、黄斑に向けて焦点を結ぶようにできているため、ここで視力のほとんどが生みだされています。

 

◆目はカメラの機能にたとえることができる

 

水晶体は見たいものにピントを合わせるために厚みを調節し、外から入ってくる光を屈折させる役割を果たしているわけです。このプロセスは、カメラの機能と似ています。角膜と水晶体はレンズ、虹彩は絞り、網膜はフィルムにたとえることができます。

 

目とカメラは、構造上とてもよく似ています。光を屈折させる角膜と水晶体はレンズ、光の情報を結像する網膜はフィルムに例えることができます。
目とカメラは、構造がとてもよく似ています。光を屈折させる角膜と水晶体はレンズ、光の情報を結像する網膜はフィルムにたとえることができます。

 

水晶体は無色透明であればこそ、外界からの光をまっすぐに通すことができるため、本来のピント調整の役割を果たすことができます。

 

しかし、濁りがあると、光をうまく通すことができなかったり、光を乱反射させたりするため、網膜に鮮明な像を結ぶことができません。この「水晶体に濁りのある状態」が、白内障です。

水晶体が濁る原因は「クリスタリンタンパク」の変性

◆水晶体が濁るのは、卵の白身が熱で白くなるのと同じ

 

水晶体は、タンパク質と水で構成されています。水晶体のなかにあるタンパク質は、クリスタリンタンパクと呼ばれます。このタンパク質が無色透明であるために、水晶体はレンズの役割を果たすことができます。

 

しかしクリスタリンタンパクは、加齢、紫外線の影響、外傷性ショックなどさまざまな要因によって、変性して濁ってしまいます。そして、水晶体から通過するはずの光の邪魔するようになっていくのです。このタンパク質の変性が、白内障の原因です。

 

 

目玉焼きをイメージするとわかりやすいかもしれません。火が通っていない白身は透明ですが、フライパンにかけて熱を加えると白くなります。タンパク質が変性して白くなった卵の白身は、二度と透明に戻ることはありません。

 

それと同様のことが、水晶体のなかで起こっているのです。卵の白身と同じで、濁った水晶体を、透明な状態に戻すことはできません。

 

水晶体は透明であることではじめて、ものを見るための大事な役割を果たすことができます。それが濁ってしまうと、うまくものを見ることができなくなってしまい、とても不便になります。

 

濁った水晶体を、薬や食事療法などで、もとの透明な組織に戻せないものかと考える人がいますが、卵の白身を思い浮かべれば、それがとても困難であることがわかります。唯一の有効な治療手段が、水晶体を人工眼内レンズに置き換える白内障手術なのです。

 

 

佐藤 香

アイケアクリニック院長

医療法人トータルアイケア理事

アイケアクリニック銀座院副院長 医師

 

アイケアクリニック院長
医療法人トータルアイケア理事
アイケアクリニック銀座院副院長 医師

獨協医大越谷病院・眼科専門外来として、黄斑外来・緑内障外来・糖尿病レーザー外来・PDT外来・硝子体内注射外来等を担当しながら、栗原眼科にも勤務。
白内障や眼瞼、結膜疾患の手術を中心に担当。その後、八潮中央総合病院眼科医長として、白内障、眼瞼、結膜疾患だけでなく緑内障手術、網膜硝子体手術、硝子体内注射など幅広く手術も行いながら、外来診療では地域住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。

http://cataract.eye-care-clinic.jp/

著者紹介

連載40代でも発症する目の疾患「白内障」の基礎知識

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