初期症状から2〜3ヵ月で視力低下「糖尿病性白内障」に要注意

本連載では、白内障治療に強みをもつ、アイケアクリニック院長の佐藤香氏が、白内障の基本的な症状や治療法を解説します。今回は、若いうちから発症する可能性もある「糖尿病性白内障」について見ていきます。

20~30代で発症することもある「糖尿病性白内障」

糖尿病で血糖値が上がることによって、水晶体に糖の老廃物がたまり発症する「糖尿病性白内障」。20~30代という若さで発症することも多く、発症後は進行するスピードがはやいため、早期に治療をする必要があります。

 

◆年齢に関係なく発症する糖尿病性白内障

 

糖尿病から併発する白内障を「糖尿病性白内障」といいます。糖尿病性白内障は、一般的に発症することの多い加齢性白内障より、進行するスピードがはやい傾向があります。

 

その理由は、水晶体のなかにソルビトールという糖や糖化タンパクが蓄積しやすくなることで、水晶体内の浸透圧が変わって水分量が増加し、濁りが生じやすくなるためと考えられます。長期にわたる高血糖が発症の原因となるため、年齢はあまり関係なく、20~30代でも発症することがあります。

 

◆2種類の糖尿病性白内障はどちらも油断できない

 

糖尿病性白内障は、1型糖尿病に伴って発症する「真性糖尿病性白内障」と、加齢性白内障を発症した後に合併する「仮性糖尿病性白内障」にわけられます。

 

●若くても発症しやすい真性糖尿病性白内障

 

真性糖尿病性白内障は、1型糖尿病に伴って発症するものをいいます。すい臓には、血糖値をコントロールするためのインスリンを分泌するβ細胞がありますが、1型糖尿病は、これが破壊されることで、血糖値が高まってしまう病気です。原因は生まれつきの自己免疫疾患にあることが多く、治療はインスリン注射が欠かせません。

 

加齢性白内障は40代から発症しはじめます。加齢性である可能性がほとんどない40歳以下の人で、1型糖尿病を患っていると、真性糖尿病性白内障と診断されます。

 

●仮性糖尿病性白内障では、糖尿病が加齢による白内障に影響をあたえることも

 

糖尿病を発症し、年齢も40歳を超えているとき、原因が加齢なのか、糖尿病なのか、判別の難しい場合があります。そのような症状を、仮性糖尿病性白内障といいます。

 

原因が加齢であれば、本来はゆっくり進行するはずですが、糖尿病を患っていると、加齢性白内障の進行するスピードもはやまる傾向があります。そのため、「仮性」だからといって油断せず、早期の治療を行う必要があります。

 

●糖尿病性白内障の症状

 

白内障は、水晶体の濁りの部位によって、以下の4種類にわけることができます。

 

・核白内障

・皮質白内障

・前嚢下白内障

・後嚢下白内障

 

水晶体の構造
水晶体の構造

 

糖尿病性白内障は、皮質白内障か後嚢下白内障となることが多いです。皮質白内障は、水晶体の周囲から濁っていくので、初期の段階では見え方への影響はそれほどありません。

 

 

一方、後嚢下白内障は、水晶体の膜の後ろ側がまんべんなく濁り、早期から強い見えにくさや、まぶしさを感じます。また、進行するスピードもはやいため、症状を自覚して2~3ヵ月後には、激しい視力低下に陥ることもあります。後嚢下白内障となっている場合は、早期に治療する必要があります。

 

 

糖尿病を発病していても「白内障手術」は可能

◆糖尿病性白内障は合併症のリスクが高まる

 

●糖尿病網膜症の発見や観察を妨げる

 

糖尿病性白内障の大きなリスクとして、糖尿病網膜症の扱いが難しくなることが挙げられます。この病気は、糖尿病に合併する目の病気として、糖尿病性白内障よりもよく知られています。

 

糖尿病になると、網膜に密集している多くの細い血管が、血糖値の上昇の影響で詰まったり破れたりしてしまい、網膜に栄養や酸素が行き届かなくなります。そうすると、網膜は新生血管という新しい血管を生みだして、酸素や栄養の不足を補おうとします。

 

ところが、この新生血管はとてももろく、水分がにじみでたり、破れて出血を起こしたりしてしまうほか、かさぶたのような膜を作り(増殖組織)、この膜が網膜を引っ張って網膜剥離を引き起こしてしまうようになります。進行すると、失明することもある怖い病気です。

 

糖尿病の人は、常に糖尿病網膜症が発症、進行、再発するおそれがあるため、定期的に眼底検査を受け、網膜に異常がないか診察を受けなければなりません。

 

網膜のある眼底は、水晶体の奥にあります。そのため、水晶体が濁っていると網膜が見づらく、網膜症の兆候や進行を観察することが難しくなります。白内障の症状がでてきたらすぐに手術をして、眼底が見やすい状態にしておく必要があります。

 

●医療の進歩で血糖値が高くても手術ができるように

 

手術では、内科の先生と協力して、全身状態を見ながら治療方針を決めていきます。重度の糖尿病の人は、免疫力が著しく落ちているため、感染症のリスクが高まることが知られています。手術のための切開創も治りがよくなく、化膿しやすくなる傾向があります。

 

しかし、白内障手術は進歩を続けており、極小切開術で目への侵襲を抑えることで、血糖値を気にせずに、手術をできるようになりました。もちろん、内科の先生と協力して手術のタイミングを見極めることは重要ですが、以前のように血糖値が下がるまで延期することは必要なくなりました。

 

●白内障手術後に糖尿病網膜症が急激に進行するリスクも

 

ただ、血糖値が高い人は、術後の経過に注意が必要です。

 

血糖値が高い状態で白内障手術をすると、糖尿病網膜症の症状が一気に進行してしまうことがあります。同じく糖尿病による合併症として知られる糖尿病黄斑浮腫も、急激に進行するリスクがあります。

 

これらの眼底疾患があれば、白内障手術の前にレーザー治療を施したり、ステロイド薬や抗VEGF薬(新生血管の増殖を防ぐ薬)を投薬したりすることで、網膜症や黄斑浮腫の治療を行うこともあります。

 

糖尿病性白内障の治療は、このように合併症のリスクが高くなりますので、眼底もしっかり検査し、治療計画を立てることが、とても重要になります。

 

 

佐藤 香

アイケアクリニック院長

医療法人トータルアイケア理事

アイケアクリニック銀座院副院長 医師

 

アイケアクリニック院長
医療法人トータルアイケア理事
アイケアクリニック銀座院副院長 医師

獨協医大越谷病院・眼科専門外来として、黄斑外来・緑内障外来・糖尿病レーザー外来・PDT外来・硝子体内注射外来等を担当しながら、栗原眼科にも勤務。
白内障や眼瞼、結膜疾患の手術を中心に担当。その後、八潮中央総合病院眼科医長として、白内障、眼瞼、結膜疾患だけでなく緑内障手術、網膜硝子体手術、硝子体内注射など幅広く手術も行いながら、外来診療では地域住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。

http://cataract.eye-care-clinic.jp/

著者紹介

連載40代でも発症する目の疾患「白内障」の基礎知識

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