まぶしい、ダブって見える…「皮質白内障」の症状と対処法は?

「ものがぼやけて見える」「目がかすむ」「光がいつもよりもまぶしい」など、気にはなりつつも、見過ごしてしまっている「目」についての悩みはないでしょうか。そんな悩みを抱えたままでは、日々の不安が募るばかりです。本連載では、白内障・緑内障・網膜剥離手術に強みをもつ、はんがい眼科・院長の板谷正紀氏が、眼病の症状やその対処法について解説します。

皮質白内障の特徴

最近、視力はいいのに「まぶしさ」や「ものが何重にも見える」という不快な症状が気になっている人は、皮質白内障が始まっているのかもしれません。

 

皮質白内障は、とても一般的な白内障の症状の1つです。水晶体の濁る場所で分類される白内障のタイプの1つで、水晶体の核の周囲にある「皮質」という部分が白く濁っていきます。

 

「白内障」という病名がついたのは、手術ができなかった時代、皮質白内障が進んだときに、瞳が真っ白に見えたことが理由です。加齢で発症することが多く、白内障のなかでは最もよく見られるタイプです。水晶体の周辺から始まるので、進行に気がつかないことが多いのです。

 

今回は、「皮質白内障」について詳しく紹介します。ぜひ参考にしてください。

 

◆水晶体の周辺部からくさび形に濁ってくる

 

白内障は、目のレンズである水晶体が濁っていく病気ですが、皮質白内障では、水晶体のなかの「皮質」という部分が、くさび形または車軸状に少しずつ濁っていきます。皮質というのは医学用語によく用いられる言葉で「表層」というニュアンスです。水晶体の核の周囲を取り巻き、表層を成す部分が水晶体皮質なのです。

 

周囲から、徐々に中央に向かって濁っていくのが特徴です。このため、皮質白内障が始まっていても、自分では気がつかないことが多いのです。何年もかけて中央部分に濁りが到達すると、その症状を自覚するようになり、視力は一気に低下します。

 

皮質白内障の目
皮質白内障の目

 

◆最も一般的な水晶体の濁り方

 

白内障の原因の多くは、加齢によるものですが、その加齢性白内障のなかでも特に見られるのが、いま述べたような、皮質が濁っていくタイプです。核白内障においては、皮質白内障も併発していることが多々ありますし、核白内障があまりなくても、皮質白内障を認めることも少なくありません。つまり、水晶体が濁る部位の分類のなかでは、最も一般的なものといえます。

 

◆濁りが瞳の中心に到達するまで自覚症状はない

 

目に入ってくる光は、虹彩(こうさい)によって量が調節されます。カメラの絞りと同じ仕組みです。光が入ってくる孔を瞳孔といいますが、瞳孔は暗いところでも5ミリ程度しか開かないので、通常は水晶体の中央部分にのみ光が通ります。

 

皮質白内障は、周辺部から水晶体が濁ってくるため、目に入ってくる光のほとんどは、何の影響も受けずに眼底の網膜に届きます。

 

そのため、初期には見えづらさなどの自覚症状がなく、視力が落ちることもありません。中央部分まで濁りが到達して初めて、見え方に異常を感じるようになります。

 

皮質白内障の濁りと網膜への影。左はまだ周辺部の濁りでおさまっているため網膜の中心に濁りの影がありません。右は濁りが中央にまで及び、網膜の中心まで濁りの影が認められます
皮質白内障の濁りと網膜への影。左はまだ周辺部の濁りでおさまっているため、網膜の中心に濁りの影がありません。右は濁りが中央にまで及び、網膜の中心まで濁りの影が認められます。 

皮質白内障の「4つの症状」

① 以前より、異様にまぶしさを感じる

 

皮質白内障は、濁りが瞳の中央部分に達するまで、ほとんど自覚症状はありません。

 

しかし、濁りが中央部に達すると、水晶体を通る光が乱反射を起こすことにより、以前より強く“まぶしさ”を感じるようになります。皮質白内障に次いで多い核白内障では、あまりまぶしくならないのと対照的です。

 

朝起きて部屋のカーテンを開けたときに、朝日が異様にまぶしく感じて外の景色が見えなかったり、太陽を背にして歩いてくる人の顔がまぶしくてまったく認識できなかったり、といった症状が多く見られます。洗濯物を干すときに、シーツの白さがまぶしすぎて苦痛に感じ、サングラスをかけるようになる人もいます。

 

また、乗車時に、対向車のライトがハイビームでもないのに見られないという症状もよく確認されます。「最近、すごくまぶしさを感じるようになった」という場合、ひょっとしたら皮質白内障かもしれません。早めに眼科を受診してください。

 

光を通常以上にまぶしく感じるようになります
光を通常以上にまぶしく感じるようになります

 

② ものがダブって見えることも

 

人によっては、ものが2重、3重にダブって見えるような症状が現れます。夜空に浮かぶ月を見上げたとき、何重にもダブって見えるようなら、皮質白内障を疑ったほうがいいかもしれません。

 

水晶体が原因で起こる乱視は、水晶体乱視と呼ばれ、角膜が原因の角膜乱視とは区別されます。皮質白内障の濁り方はくさび形であるため、濁りの強い部位と弱い部位が生じ、回折現象が生じて発生するとされています。

 

角膜乱視の場合は、ものが縦や横に2重に見えることがほとんどですが、水晶体乱視はもっと複雑で、3重以上にダブって見えることが多いです。角膜乱視はメガネやコンタクトレンズで矯正できますが、水晶体乱視は、白内障手術でしか治せません。

 

水晶体乱視では月が3つに見えるといった症状が現れます
水晶体乱視では月が3つに見えるといった症状が現れます
 

③ 薄暗いところでは、ものが見えにくい

 

皮質白内障は、周囲から水晶体が濁ってくるので、瞳孔が大きく開く薄暗いところでは、自覚症状が現れやすくなります。夜、車のヘッドライトやネオンの光を以前よりまぶしく感じるようになったら、それは皮質白内障の症状かもしれません。

 

④ ある日、急に視力が低下したように感じる

 

皮質白内障は、何年もかかって周辺から濁りが進行しますが、周辺に留まっている間、自覚症状はほとんどなく、視力も低下しません。しかし、一旦濁りが中央部分にかかると、急に症状が現れ、視力が低下していきます。

皮質白内障の治療は手術で行う

◆手術は、日常生活に不自由を感じたら行う

 

皮質白内障の進行は非常にゆっくりで、何年もかかって濁りが眼の中央部に到達します。そのため、初期は症状がほとんどなく、不自由なく過ごすことができるので、手術を急ぐ必要はありません。

 

しかし、まぶしく感じたり、ダブって見えたりして、日常生活で気になる症状が出たときには、手術という選択肢が視野に入ってきます。特に、車の運転をされる人は、事故の危険性が増すので、早めの対処が求められます。

 

仕事をしている人も、早めの手術になることが多いです。最近では、運転、スポーツ、趣味などで活発に活動している高齢の人も、症状が気になって手術を希望されます。

 

◆手術では、水晶体を人工の眼内レンズに置き換える

 

治療は、ほかのタイプの白内障と同様の白内障手術により行われます。水晶体の中身を吸引し、眼内レンズに置き換える標準的な白内障手術です。

 

核白内障は、症状が進行すると硬くなりすぎて手術が難しくなりますが、皮質白内障は、成熟白内障などになっていないかぎりは、リスクもそれほど高くならないため、かなり安全に治療できます。日帰り手術が可能で、手術時間も10分程度です。

 

◆点眼薬では根治はできないが、進行を遅らせる効果が

 

皮質白内障だと診断されたら、手術が必要となるまでは、点眼薬を処方されることが多いです。実際、初期の皮質白内障では、点眼薬である程度進行を遅らせることが可能との報告があります。根治するには手術しかありませんが、点眼薬を使うことで、手術までの期間を延ばすことができるケースもあります。

 

◆帽子やサングラスなどで紫外線予防を

 

紫外線は、白内障の進行を早める要因と考えられています。そのため、紫外線対策をすることで、ある程度、皮質白内障の予防や、進行を遅らせる効果が期待できます。

 

たとえば、帽子をかぶったり、サングラスをかけたりすることで、眼に入ってくる紫外線の量を低減することができます。春夏の紫外線量が高い時期には、積極的に紫外線対策をしましょう。

 

皮質白内障の人は、普段からまぶしさを感じることが多いので、春夏以外でも、色の薄いサングラスなどをかけると過ごしやすいかもしれません。特に、降雪量の多い地域に住んでいる人や、ウィンタースポーツをたしなむ人は、雪に反射した紫外線も大敵です。しっかり対策をして、目にやさしい生活を心がけるようにしましょう。

 

★板谷院長のひとことアドバイス

 

皮質白内障は、白内障のなかで最も多いタイプです。白内障の症状は、視力の低下だけと思いがちですが、まぶしかったり、ものが2重3重に見えたりという、不快な見え方が出ます。このような症状がひどくなったら、手術を検討してください。

 

★まとめ

●皮質白内障は、最も多いタイプの白内障です。

●水晶体の周辺から濁るので、始まっていても自覚症状がほとんどありません。

●濁りが水晶体の中央部分にかかると、急速に視力が低下したり、まぶしさを強く感じたりします。

●視力低下だけではなく、まぶしく感じたり、ダブって見えたりして、仕事や運転に支障を感じ始めたら、手術を検討する必要があります。

 

 

板谷 正紀

はんがい眼科 院長

 

はんがい眼科 院長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

https://eyeblog-hangai.com/

著者紹介

連載眼科院長がやさしく解説!「目」に関する不安を解決するための基礎知識

本連載は、「はんがい眼科 目のブログ」の記事を抜粋、一部改変したものです。

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

登録していただいた方の中から
毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
会員向けセミナーの一覧