早ければ10〜20代でも発症…「アトピー性白内障」の恐ろしさ

「モノがぼやけて見える」「目がかすむ」「光がいつもよりもまぶしい」など、気にはなりつつも、見過ごしてしまっている「目」についての悩みはないでしょうか。そんな悩みを抱えたままでは、日々の不安が募るばかりです。本連載では、白内障・緑内障・網膜剥離手術に強みをもつ、はんがい眼科・院長の板谷正紀氏が、眼病の症状やその対処法について解説します。

「アトピー性白内障」とは?

アトピー性皮膚炎を発症している方は、いつか自分がアトピー性白内障にかかるのではないかと、不安になっているのではないでしょうか。アトピー性皮膚炎の人が、若くして白内障になりやすいのは事実です。白内障というと、高齢者がなるものだと思いがちですが、アトピー性白内障は、早ければ10〜20代でも発症することがあります。

 

また、アトピー性皮膚炎によって発症する白内障は進行が早く、数ヵ月で一気に視力が低下するほど悪化することも少なくありません。白内障だけでなく、網膜剥離(もうまくはくり)角膜炎眼瞼炎(がんけんえん)などの合併症を伴うことも少なくないのです。

 

白内障も網膜剥離も治る病気です。どちらもきちんと診断し、治せる眼科医に診てもらうことが重要です。

 

今回は、アトピー性白内障について詳しく紹介します。

 

白内障は、原因によって分類されます。もっとも一般的なタイプは、加齢とともに発症する、加齢性白内障です。そのほか、別の病気に併発して発症する併発白内障、目のけがによって発症する外傷性白内障などがあります。この併発白内障の1つが、アトピー性皮膚炎が原因となって発症するアトピー性白内障なのです。

「アトピー性白内障」4つの特徴

① 濁りやすい皮質ではなく水晶体囊(すいしょうたいのう)が濁り始める

 

白内障の多くは、濁りやすい皮質や核から濁ります。それぞれ皮質白内障、核白内障と呼びますが、アトピー性皮膚炎から発症する白内障は、水晶体の中身を包むふくろである囊(のう)から濁り始めることが多いという特徴があります。

 

囊の前の部分が濁ることを前囊下(ぜんのうか)白内障といい、後ろの部分が濁ることを後嚢下(こうのうか)白内障といいます。どちらも、アトピー性白内障でよく見られる濁り方です。

 

水晶体の構造
水晶体の構造

 

前嚢下白内障の目。アトピー性皮膚炎の方に発症することが多い
前嚢下白内障の目。アトピー性皮膚炎の方に発症することが多い白内障です。

 

② 進行が非常に早い

 

アトピーによって引き起こされる白内障は、水晶体の周りの皮質という部分が溶けやすいため、進行が早いのが特徴です。

 

加齢性の白内障は数年単位で進行しますが、アトピー性のものは数ヵ月、早い場合には数週間で、水晶体が一気に濁り、成熟白内障へと進みます。目の前にある指の本数が識別できないほど、急激に視力が低下することもあるのです。

 

症状がかなり進行した状態の成熟白内障
症状がかなり進行した状態の成熟白内障

 

③ 早ければ10代でも発症

 

10〜20代の若年性白内障で、もっとも多い原因疾患がアトピー性皮膚炎です。どうしてアトピー性皮膚炎を持つ人の発症が多いのか、仕組みはまだはっきりとはわかっていません。

 

アトピー性皮膚炎の治療に使われる、副腎皮質ステロイドホルモンが原因ともいわれますが、ステロイドを使っていない人でも、白内障を発症するケースはあります。また、ステロイドは、後嚢下白内障の要因とされることもありますが、前囊下白内障にはなりにくいことから、それだけが原因とはいい切れません。

 

ほかには、かゆさを我慢するために目のまわりを叩く癖があったり、まぶたを強くこすりすぎることによる、外傷が原因になっている可能性もあります。

 

アトピー性白内障で手術を受ける人の平均年齢は、30歳前後が多くなっています。10〜20代でも手術が必要になる場合もあるため、若いからといって油断せず、なにか気になる症状があれば、早めに眼科医に相談してください。

 

④ 網膜剥離(もうまくはくり)などの合併症を伴うことが多い

 

アトピー性皮膚炎の人は、白内障に加えて網膜剥離(もうまくはくり)を合併していることも少なくありません。網膜剥離とは、なんらかの原因で、網膜の土台(網膜色素上皮といいます)から、網膜が剥がれてしまった症状をいいます。

 

先に述べた、外傷性白内障の原因として考えられる、かゆみで目の周りを叩いたり、こすったりすることが、網膜剥離を引き起こしていると考えられます。

 

アトピー性白内障は若年層に発症が多いと説明しましたが、アトピー性の網膜剥離のおよそ7割は、15〜25歳で発症しています。またそのうち4割では、両目で網膜剥離が生じています。

 

白内障の手術では、水晶体(カメラにたとえるとレンズ機能)を人工の眼内レンズに入れ替えることで、視力は回復することができますが、網膜(カメラのフィルム機能)は替えがききません。手術が遅れて網膜が変性してしまうと、視力が取り戻せなくなってしまうのです。

 

アトピー性皮膚炎の人は、特に網膜剥離が早期発見できるよう、定期的に眼科の検診も受けるなど注意が必要です。

「アトピー性白内障」2つの症状

① まぶしさを感じたり、明るい所で見えにくい

 

前囊下白内障や後囊下白内障は、中心部分から濁り始める特徴があります。そのため、初期から自覚症状は強く感じられるようになります。

 

まぶしさで苦痛を感じたり、明るい所に出ると見えにくいことが多くなります。今まではなんともなかったのに、車のライトがまぶしくて耐えられないなどの症状もよく見られます。

 

通常の光がまぶしく見える症状
通常の光がまぶしく見える症状

 

② 急激な視力の低下が起きる

 

アトピー性白内障は症状の進行が急激なため、視力が一気に低下していく特徴があります。自覚症状が出始めてから、数ヵ月で白内障が進行し、成熟白内障となってしまうためです。見えにくさを感じたらすぐに眼科を受診し、治療を始める必要があります。

アトピー性皮膚炎と併発しやすい目の病気

◆アトピー性角膜炎・結膜炎

 

アトピー性皮膚炎は白内障だけでなく、別の眼病も併発することがあります。特に、アレルギー性の角膜炎や結膜炎はアトピー性皮膚炎に伴うことも多く、アトピー性角結膜炎といいます。

 

症状として、ひどいかゆみ、涙、結膜の肥厚・充血・濁りなどがあげられます。また、特に春から夏にかけて症状がひどくなるアレルギー性の結膜炎を春季カタルといいますが、この病気を発症した人の7割にアトピー性皮膚炎が確認できます。治療としては、主にアレルギーを抑える薬が処方されます。

 

春季カタル
春季カタル

 

◆アトピー性眼瞼炎(がんけんえん)

 

目の周囲の皮膚に、赤いまだらや湿疹、むくみ、ただれ、かさつきなどの症状が現れ、かゆみも伴います。アトピー性皮膚炎特有の皮膚症状が、目の周囲の皮膚にも現れるとイメージすると、わかりやすいかもしれません。症状がひどくなると、上下のまぶたの皮膚が固く厚くなります。

 

かゆいからと掻いたり、叩いたりすると、白内障や網膜剥離などの合併症が生じるリスクが高まります。医師に処方された薬でかゆみをやわらげて、掻いたり叩いたりするのはできるだけ減らしましょう。

急激に病状が進行している場合は、早期に手術を受ける

◆進行が早い場合は、早期に手術をすることが必要

 

アトピー性白内障の治療は、ほかのタイプの白内障と同じく、白内障手術により行われます。アトピー性白内障は、数ヵ月、早い場合は数週間で急激に視力が低下するケースもあるため、早急に手術が必要になることがあります。

 

手術を受けるのをためらって時期を遅らせると、水晶体が膨張(膨化白内障)してしまい、手術の難易度が高くなります。医師にすすめられたら、膨化する前に手術を受けることをおすすめします。

 

手術を受けたあとの管理も重要です。アトピー性皮膚炎の人は、まぶたの皮膚に雑菌が住みやすく、細菌感染のリスクはより高いと考えるべきです。抗菌剤点眼と術後経過観察が重要です。

 

また、術後に眼内レンズを入れた水晶体のふくろ(水晶体嚢)が収縮して、眼内レンズの位置がずれるリスクがあるため、目を叩くこともできるだけ避けましょう。

 

◆網膜剥離(もうまくはくり)を併発している場合は、眼底の治療も行う

 

網膜剥離は治療が遅れると、失明に至りかねません。網膜剥離を併発している場合には、眼底の治療も並行して行う必要があります。

アトピー性皮膚炎の人が日常生活で気をつけたいこと

できる限り目をこすったり、叩いたりしないでください。これらの行為は、網膜が剥がれる網膜剥離の原因にもなるので、注意が必要です。

 

また、目を強くこすると、水晶体を支えている“チン小帯(しょうたい)”という組織が弱って切れてしまうことがあります。チン小帯は、トランポリンのマットを支えているスプリングをイメージするとわかりやすいでしょうか。

 

チン小帯が弱ると、白内障の手術を受けるときに、水晶体の代わりになる人工の眼内レンズを移植しても、眼内レンズを支えられずに眼内レンズが傾いてしまったり、硝子体のなかに落ちてしまったりする合併症を引き起こすこともあります。チン小帯は再生しないのです。

 

皮膚科医と相談し、かゆみのコントロールをしていくことが、目の併発症を減らしていく道でしょう。

 

水晶体を支えている「チン小帯」
水晶体を支えている「チン小帯」

 

チン小帯を人工的に作ることはできませんので、かゆい場合には患部を冷やしたり、医師に処方されるかゆみ止め薬を使用したりして、極力目をこすったり、叩いたりしないようにしてください。

 

★板谷院長のひとことアドバイス

 

白内障で視力がどれほど下がっても、手術で治せば、もとの視力を取り戻せますので安心してください。アトピー性皮膚炎の人は、若くして白内障になりやすいため、術後の老眼が問題になりますが、多焦点眼内レンズで防ぐことができます。網膜剥離が隠れていることもあるため、術後の眼底検査が大切です。

 

★まとめ

●早ければ10〜20代でも発症します。

●病気の進行が早いことが多く、急速に視力が低下するケースも。

●進行が早いと、早期に手術をする必要があります。

●網膜剥離などを合併することが多いです。

●目の周囲のかゆみのコントロールが、目の併発症のリスクを減らしてくれます。

 

 

板谷 正紀

はんがい眼科 院長

 

はんがい眼科 院長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

https://eyeblog-hangai.com/
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著者紹介

連載眼科院長がやさしく解説!「目」に関する不安を解決するための基礎知識

本連載は、「はんがい眼科 目のブログ」の記事を抜粋、一部改変したものです。

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