ものが2重に見える…メガネで矯正できない「乱視」の原因は?

「モノがぼやけて見える」「目がかすむ」「光がいつもよりもまぶしい」など、気にはなりつつも、見過ごしてしまっている「目」についての悩みはないでしょうか。そんな悩みを抱えたままでは、日々の不安が募るばかりです。本連載では、白内障・緑内障・網膜剥離手術に強みをもつ、はんがい眼科・院長の板谷正紀氏が、眼病の症状やその対処法について解説します。

乱視の原因は2つある

“ものがダブって見える”症状を「複視」といいます。たとえ見えていても、ダブっているのは辛いことです。スマホの操作や車の運転も、気持ちが悪くてできません。複視を治すには、その原因を知ることが重要です。複視は、原因により大きく2つのパターンにわけることができます。

 

その見わけ方とは、片目だけでもダブるか、それとも片目だけならダブらないか、です。いい換えると、原因が眼球そのものにあるか、それとも両方の目の位置関係にあるのかということです。

 

片方の目を閉じればダブりが改善される場合は、両方の目の向きがずれている眼位異常(がんいいじょう)により、左右の目に映る像が大きく異なっているのです。そのため、脳に送られた左右の目の情報が、うまく1つにならず、2つにダブって見えます。

 

代表的なものは「斜視」ですが、ある方向を向いたときだけ2重に見える、眼球運動障害の場合もあります。一方、片目になっても変わらずダブって見えるという場合は「乱視」です。

 

乱視には、角膜が原因の場合と、水晶体が原因の場合があります。角膜乱視はメガネやコンタクトレンズなどで矯正できますが、水晶体乱視は矯正では治せません。水晶体に眼内レンズを入れる白内障手術が必要になります。

 

“ものがダブって見える”とひと言で表してみても、それが片目でも起こるのか、それとも両目のときに起こる症状なのかということによって、考えられる原因と治療が異なってくるのです。詳しく解説しますので、参考にしてください。

 

片目でもダブって見える複視は、乱視によって引き起こされます。その原因は、必ず角膜か水晶体のどちらかにあるのです。というのも、ものを見る仕組みのなかで、網膜にピントを結ぶために光の屈折を行う場所は、角膜と水晶体のみだからです。この2つが、光が進む方向を決めているのです。

 

光が進む方向を変えることを屈折といいますが、本来角膜や水晶体は、網膜にピントを結ぶように光を屈折させます。ところが、なんらかの異常で網膜にピントを結ぶことができなくなると、ものがぼやけて見えるようになってしまいます。この状態を屈折異常といいます。

 

近視や遠視、そして乱視が屈折異常にあたります。ではなぜ、屈折異常が起こるのでしょうか? まず、角膜乱視から説明しましょう。

角膜が原因の「角膜乱視」とは?

◆「角膜乱視」のメカニズム

 

乱視のない角膜は、虫メガネのような、きれいなドーム状です。円形のドームは、どの直径のカーブも同じですので、光は1点にフォーカスします。

 

このドームを上から少し押しつぶして、横に広がった楕円形のドームにすると、縦軸はカーブがきつくなり、光は強く屈折します。反対に、横軸はカーブが緩やかになって、屈折は弱くなります。このため、焦点が2つにわかれてしまうのです。これが2重に見える正体です。

 

この乱視は直乱視といいますが、縦に楕円なら倒乱視、斜めなら斜乱視と、押しつぶされる方向によって呼び方が変わります。いずれも、単純な円形ドームの楕円化によるものですので、総称して正乱視ともいいます。

 

それに対して、角膜の不規則な変形による乱視を、不正乱視といいます。

 

角膜が歪んでいると、光の屈折が縦軸と横軸で変わってしまい、焦点が複数生まれてしまうのが乱視のメカニズム
角膜が歪んでいると、光の屈折が縦軸と横軸で変わってしまい、焦点が複数生まれてしまうのが乱視のメカニズム

 

◆「角膜乱視」の治療は?

 

一般的に、乱視と呼ばれる症状のほとんどが、この角膜乱視によるものです。ほとんどの人は、多少の乱視を持っていますが、軽度の場合は気がついていないことも多く、治療は必要ありません。軽度の場合は、水晶体や脳がブレを修正して、クリアな像にすると考えられています。しかし、ある程度乱視が大きいと、脳による修正ができなくなりますので、矯正が必要です。

 

正乱視の人は、メガネやコンタクトレンズで矯正可能です。不正乱視の場合は、メガネやソフトコンタクトレンズによる矯正は難しいですが、ハードコンタクトレンズなら矯正できます。

 

◆「角膜乱視」の検査は?

 

乱視の検査は、まずは屈折率を詳しく測定する自動屈折度測定装置(オートレフラクトメーター)で行います。そのほかに、角膜の形状を詳しく測定する角膜形状解析装置を用いて検査します。

 

最近では、角膜や水晶体がある前眼部を3次元で撮影できる、前眼部OCTが公的保険で可能となり、角膜の前面だけではなく、後面の形状も計測して、リアルな角膜乱視を求めることが可能となりました。角膜乱視の治療は、正確に角膜の形状を把握することが重要です。

水晶体が原因の「水晶体乱視」とは?

水晶体乱視は、白内障の初期から見られることがある白内障の症状のひとつです。2重とは限らず、何重にもダブって見えることがあります。水晶体の強い濁りの部位と弱い濁りの部位ができると、光が小さい穴を通った際に後方で広がってしまう回折現象が生じて、複視の症状が発生すると考えられています。

 

水晶体乱視はランダムで規則性がなく、水晶体乱視を測定する方法もないため、メガネやコンタクトレンズで矯正することはできません。ただし、水晶体乱視は白内障手術で治すことができます。

 

(左)通常の月。(中央)正乱視<左から直乱視、倒乱視>の方の見え方。(右)不正乱視の方の見え方。
(左)通常の月 (中央)正乱視<左から直乱視、倒乱視>の人の見え方 (右)不正乱視の人の見え方

白内障による乱視や不正乱視はメガネで矯正できない

くりかえしになりますが、メガネで矯正できるのは角膜乱視のなかでも正乱視だけです。角膜が不規則な曲面状になることで起こる不正乱視の場合は、ハードコンタクトレンズなら、矯正することは可能です。白内障の症状である水晶体乱視は、手術以外に治す方法はありません。

 

また、角膜に濁りができる角膜混濁などによって、ものがダブって見えることもあります。この場合も、メガネやコンタクトレンズで矯正できません。慣れることができないものであれば、角膜の移植治療を検討することになります。

脳神経か筋肉に原因があることも!急な複視は要注意

◆眼位異常とは?

 

眼位とは、左右の目が向いている方向をいいます。正常では、その向いている方向は同じなのですが、方向にズレがでることを眼位異常といい、複視の原因となることがあるのです。この場合は、必ず2重で3重に見えるわけではありません。眼位異常には、「斜位」と「斜視」があります。

 

◆斜位とは?

 

斜位とは、普段は眼位のズレがなく、両方の目で見ている状態(融像といいます)に邪魔が入った際、左右の眼位がズレてしまうことをいいます。もともと人の目は多少眼位のズレが潜在しているのですが、ものを見ようとすると矯正され、正常になるのです。

 

ところが、疲れたり、考えごとをしたりして、ものを見るための集中力がなくなるとズレてしまい、2重に見えることがあります。大人ではどちらかの目が外を向く外斜位が多いです。治療の必要はありません。

 

◆斜視とは?

 

常に眼位がズレている状態を斜視といいます。もともとある斜視の場合は、脳がどちらかの目の像を抑制をかけて見えなくしてしまいますので、2重に見えることはありません。問題は急にでてきたときです。

 

年齢とともに外斜位の眼位のズレが大きくなって、矯正しきれずに斜視になってしまうケースでは、そうなる途中で2重に見えて困ることがあります。斜視手術の適応になります。

 

常に眼位がズレている「斜視」
常に眼位がズレている「斜視」

 

◆眼球運動の異常:急に起こる複視は要注意!

 

目の動きがおかしくなって起こる複視は問題です。目のまわりにある、眼球を動かしている6つの外眼筋のどれかが動きにくくなって斜視になったり、動きにくくなったほうを見たときだけ2重に見えるのです。

 

外眼筋そのものか、筋肉と神経の接合部分に異常が起きる場合と、外眼筋を動かす中枢神経に異常がある場合が考えられます。

 

前者で有名なのは、体を動かすとすぐに疲れてしまう重症筋無力症で、午後になると症状が悪化する特徴があります。一般的には、糖尿病や高血圧がある人で外眼筋への血流が滞って起こることが多いのです。

 

後者の場合、神経の麻痺で起こることが多いです。眼球運動に関わる神経が麻痺する動眼神経麻痺や、眼球を外側に動かす神経が麻痺する外転神経麻痺、目を下に動かす神経が麻痺する滑車神経麻痺が有名です。特に、動眼神経麻痺は、目は外斜視となりまぶたが垂れますので気がつきやすいのですが、動脈瘤の圧迫による場合があり、破裂のリスクがあるため緊急を要する状態です。

 

いずれにせよ、急に起こる複視は、脳や身体の異常と関係がある場合が多く、すみやかに眼科を受診し、詳しく検査を受け、その日のうちに適切な専門の診療科へ紹介を受けましょう。

 

★板谷院長のひとことアドバイス

 

ものがダブって見える原因は多様です。片目でも起きたら角膜乱視か水晶体乱視、両方の目で見たときだけ起きるなら、2つの目の向きが同調しておらず、外眼筋やその神経の異常を疑います。原因がわかれば、治療への道が開けます。

 

★まとめ

●片方の目でダブるのは乱視、両目で見たときだけダブって見えるのは眼位異常です。

●乱視には、角膜乱視と水晶体乱視があります。

●急に2重に見えるようになったら要注意。脳や身体の病気の可能性も考えられます。

 

 

板谷 正紀

はんがい眼科 院長

 

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はんがい眼科 院長 

京都大学眼科で網膜と緑内障の研究と臨床に従事。白内障手術、緑内障手術、硝子体手術などを駆使する術者として技術練磨に勤む。
埼玉医大眼科教授、日本眼科手術学会総会長、埼玉県眼科医会理事、埼玉腎・アイバンク専務理事などを歴任。

https://eyeblog-hangai.com/

著者紹介

連載眼科院長がやさしく解説!「目」に関する不安を解決するための基礎知識

本連載は、「はんがい眼科 目のブログ」の記事を抜粋、一部改変したものです。

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