「頑張った」だけでも褒めよう…ゆとり世代を育てるコツ

1990年代生まれの「ゆとり世代」も30代に差し掛かる。いよいよ企業の中核を担うポジションが求められる年齢だ。「ゆとり教育」という言葉のイメージがあるものの、この世代の大学進学率は51%(2010年度)と他の世代と比較しても高く、個々のポテンシャルは十分に感じられる。彼らが管理職、役職へとステップアップしていくにあたり、企業としていかに上手くマネジメントできるかは、今後、一企業、一経営者にとってだけではなく、日本社会全体の成功のカギを握るであろう。

ゆとり世代は「褒めて伸ばす」子育てを受けてきた

褒められて育ったゆとり世代の若手社員は、どんな小さなことでもできたときには褒められるのが当然だと思っています。これは「褒めて伸ばす」子育ての功罪だと思いますが、褒められることに慣れていると、褒められなかったときに不満が出てくるようなのです。

 

逆にきつく叱られると、これにも慣れていないために、非常にショックを受けて泣き出したり、会社を休んだりする人もいます。大切に育てられて素直なのはよいのですが、一昔前の世代の常識からすると、繊細過ぎると感じることもあります。

 

なにしろ、最近の若手社員は、女性に限らず男性でもけっこうよく泣くのです。親身に相談に乗ると、感激して涙を流したりするし、厳しく叱ってもびっくりして涙を流します。本人も戸惑っているようです。これまでの人生で、真剣に人と対峙することが少なかったのではないでしょうか。

 

ともあれ、そんなゆとり世代には、よく気のつく両親の役割を、管理職が演じなければならないこともあります。仕事が終わったときには、どんな小さなことでも見つけては一言褒めておきましょう。

 

褒めるところがないときは「頑張ったね、ありがとう」だけでもかまいません。若手社員にヒアリングしたときには、成果には見るべきところがなくても、そこまでのプロセスを認めてほしいという声もありました。

 

ここでも「それは会社の上司の役割ではない」という声が聞こえてきそうですが、繰り返しになりますが、上司(管理職)の役割は、部下の士気を高めて仕事の質を上げることです。ただ褒めるだけで部下がやる気を出すのであれば、こんなに簡単なことはありません。褒めてもやる気を出さない人より、褒めるだけでやる気を出してくれる人のほうが、どんなに扱いやすいことでしょうか。

 

逆に、何かミスがあって叱責しなければならないときには、感情的にならないように注意が必要です。いわゆる「褒めて伸ばす」幼児の子育てでは、良いことだけを褒めて、良くないことは無視するようにといわれています。子どもの言動は親の注意を引くことが目的なので、良くないことに対して「怒り」で反応すると、それでもリアクションをもらえたことで目的を達成したと喜んでしまうためです。親にかまってほしくてイタズラを繰り返す子どもの姿は、誰しもどこかで思い当たるでしょう。

 

しかし会社においては、部下に悪いところがあれば、どうしても注意をしないわけにはいきません。無視をして、いつか本人が気づいて自ら改善するのを待つほど、仕事は悠長に回っていないからです。

 

そこで、何らかの改善を求めて注意をするときには、怒りなどの感情を表さないように気をつけながら、どこがどう良くなくて、次からはどのようにしてほしいかを淡々と具体的に説明します。よく「怒る」ことは感情で、「叱る」ことは理性だとする文章を見かけますが、ゆとり世代にとっては「叱る」でも十分に感情的に感じられるようです。「叱る」ことを意識しても言葉は強くなりがちなので、最初はできるだけ冷静に対応するようにしてみましょう。

「アンガーマネジメント」は管理職の必須スキルに

ところが問題なのは、淡々と具体的に注意しただけでは、いっこうに良くない点が改められない相手です。このような相手は、言葉を選ばずにいえば、上司を「なめて」いるわけです。二度、三度と言ってもまったく直らない場合は、あえて強めに「叱責」することも避けては通れないでしょう。

 

上司と部下との関係は複雑なもので、部下に対してあまり威厳を保ち過ぎると、距離を取られて必要な情報が入ってこないようになりますし、だからといってあまり近づき過ぎると、今度は馴れ馴れしくなり過ぎて、指示命令が十分に重みを持って伝わりません。つまり、管理ができなくなります。

 

酒の席では無礼講で楽しくやるのもいいのですが、仕事はあくまでも仕事であり、上司は友達ではなく、仕事上の命令はほぼ絶対のものであることは理解してほしいものです。部下に対しては、気軽に相談できるけれども怒ると怖いという面を一度くらいは見せておいて、締めるところはきちんと締めていきたいものです。

 

感情的に怒るのがなぜいけないのかといえば、そうなると部下は感情をやり過ごすことにしか意識が向かず、今後の具体的な改善策に向ける注意がおろそかになるからです。また、怒られ慣れていない部下の場合は、怒られたということを逆恨みして、上司を感情的に避けるようになります。部下から避けられるようになることを意図していないのであれば、アンガーマネジメントは必須です。

 

若手社員にヒアリングをしたときに「おじさんはなんであんなに怒るんでしょう?」と言われて、苦笑せざるを得ませんでした。話をよく聞くと、別に自分が叱られたわけではなくても、上司が不機嫌であるとか、イライラしているといったことが部下にはすぐに伝わって、それが気になって仕事どころではなくなるのだそうです。上司は常に部下から見られています。そのため、会社にいる間はいつでも管理職の自覚を持って、自分を律する必要があります。

 

たとえば、「分からないことがあったら何でも訊いて」とゆとり世代の部下に対して声をかけたところで、心優しい彼らはなかなか訊いてきません。その理由はまず、忙しい上司の時間を奪うことに気が引けること、次に仕事中の上司に話しかけることへの気後れがあることなどです。そのため、上司はただ言葉で「何でも訊いて」と伝えるだけでなく、いつでも話しかけやすい雰囲気を醸し出すとともに、「今どうなっている?」と訊ねるなど、積極的にフォローしていかねばなりません。

 

なんだかんだ言っても、部下は上司のことを尊敬しています。いや、尊敬したいと思っています。そして、キャリアのロールモデルとして、あるいは仕事の目標としてじっくりと上司を観察するのですが、そうすると理想の上司のイメージとのギャップに気づいて、失望するのです。

 

もちろん、上司(管理職)といっても、部下よりもちょっと長く生きているだけのただの人間です。その長く生きている分、仕事の経験が豊富な分をきちんと表に出していかなければ、部下のロールモデルにはなり得ません。管理職になったのであれば、少なくともリーダーシップの面では人格を磨いて、成長していかなければならないと思っています。

 

注意点としては、部下に好かれようと思わないことです。好かれようと思うと、それがどこかで媚になって出てきます。そうなると、変に部下に気を遣って、マネジメント(管理)がやりにくくなりますし、判断や意思決定にブレが出て、部下の失望を買ってしまいます。部下との人間関係がいいにこしたことはないのですが、変に部下に好かれようとするよりは、部下に嫌われても正しいことは正しいと毅然と対応できる上司のほうが頼りになります。なんといっても、会社は仕事をする場所です。優しいだけの上司よりも、怖くても仕事のできる上司のほうが、部署の成績を上げることができるし、職場に活気をもたらすことができるのです。

 

好かれようが好かれまいが上司という立場は変わらないのですから、むやみに嫌われる ことは避けるけれども、好かれなくてもかまわないと開き直って、自分が正しいと思うことをやっていきましょう。

 

 

西村 直哉

株式会社キャリアネットワーク代表取締役社長

人材育成・組織行動調査のコンサルタント

 

株式会社キャリアネットワーク代表取締役社長
人材育成・組織行動調査のコンサルタント 

1961年生まれ。大学院卒業後、人材育成・経営コンサルティング会社を立ち上げ、「人材アセスメント」「組織行動調査」などの各種調査と、その結果に基づく人材育成コンサルティングに約30年以上従事。2012年、株式会社キャリアネットワークが人材教育を基幹事業としたことをきっかけに代表取締役に就任。 キャリアデザイン研修、ダイバーシティマネジメント研修、働き方改革研修など多数の講師実績を持つ。

著者紹介

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