日本の景気は絶好調なのに、国民にはサッパリ実感できない理由

現在の日本の景気は絶好調です。企業収益は史上最高に近く、失業率もバブル期並み。しかし、そう聞いて首をかしげる人も多いはず。なぜ人々は好景気を実感できないのでしょうか? 将来の経済不安には、正しい経済学の知識で対抗を。塚崎公義教授の目からウロコの経済談義、連載第9回目です。

数字で見る限り、日本の景気は絶好調だが…

現在の日本の景気は絶好調といっていいでしょう。昨年末頃から少し陰りも見えていますが、それでも好景気といっていいと思います。企業収益は史上最高に近い水準ですし、失業率もバブル期並みの低水準となっています。

 

経済成長率は低いですが、これは景気が悪いからではなく、むしろ労働力不足でこれ以上成長できないから・・・と考えたほうがよさそうです。経済成長率が低いのに労働力不足となっているのは少子高齢化が主因ですが、これについては別の機会に論じます。

 

一方で、景気ウォッチャー調査などを見ると、世の中の人々は景気がいいとは思っていない模様です。今回は、なぜそのような落差が生じるのか、その原因について考えてみたいと思います。

長期低迷の後遺症で、悪い所ばかりに目が行ってしまう

バブル崩壊後の長期低迷期、日本経済はずっと低迷していました。少し景気が回復したかと思うと、再び奈落の底に突き落とされる・・・といったことが続きましたから、人々は「今はいいかもしれないが、どうせ遠からず事態は悪化するに違いない。浮かれた考え方は危険だ」と思うようになったのです。

 

世の中には、例外が必ずあります。どんなに景気がいいときでも、悪い点を探せばいくらでも見つかります。「デフレマインド」が染みついた人々は、悪い所ばかりに目が行くようになってしまっているのです。

 

評論家やマスコミが問題点の指摘やリスクシナリオを語りたがることも、人々のデフレマインドを育ててきましたし、いまでも育てている、という点も問題です。

 

評論家は、問題点を指摘すると賢そうに見えます。リスクシナリオを語れば面白い話ができます。マスコミも、顧客が悲観論のほうを好みますから、そちらを流したがります。また、バブル崩壊後の長期低迷期には、それらが当たったため、評論家やマスコミの悲観論を信じる人が増えたのでしょう。

 

その間、楽観的な人が表舞台から去ったことも大きかったと思います。楽観的な人は、予測が外れ続けたので、だれも話を聞いてくれなくなりましたし、企業内では失脚してしまったでしょう。したがって、世の中で影響力を持っている人の多くは、デフレマインドに染まった悲観論者だ、ということになるわけです。

自分の給料が上がらないから、景気回復を実感しにくい

身近な問題点としては、「自分の給料が上がらないと景気回復が実感できない」ということも大きいようです。マクロの経済統計を見ながら景気を考える人は少ないでしょうから(笑)。

 

正社員の給料は、あまり上がっていません。その主因は、正社員が給料を上げなくても辞めないからです。企業としては「釣った魚にエサはやらない」と考えているのでしょう。

 

バブルの頃までは、日本企業は従業員の共同体でしたから、儲かったら従業員に分配していましたが、最近は「企業は株主のものだから、儲かったら賃上げせずに配当」という考え方が流行です。

 

非正規労働者の時給は、労働力不足を反映して上昇していますが、労働力需給が非常にタイトである割には、上がり方がマイルドです。それはおそらく、

 

企業が過当競争をしているため、売値が上げられない

従って、労働者に支払う時給もあまり上げられない

だからこそ、労働力不足がいつまでも解消しない

 

ということが起きているのだと思います。

普通は「就職できたのは好景気のおかげ」とは考えない

景気回復で失業率が下がっているということは、「景気が回復しなかったら失業していただろう人々も、無事に仕事にありつけいてる」ということです。問題は、そうした人々が「自分が仕事にありついているのは、景気がいいからだ」とは思っていない、という点です。

 

もしも理科の実験のように、〈景気が悪いときの失業者〉と〈景気がいいときの失業者〉を集めて閉じ込めて観察したなら、「あなたは景気が悪かったら失業していました。景気がよくてラッキーでしたね!」などと分析できるのかもしれませんが、あいにく経済の世界では、そんなことはできません。

 

定年後の再就職についても、同様のことがいえます。「景気が悪ければ、定年後は仕事が見つからなかったはずなのに、景気がいいから仕事が見つかった」という人も多いはずですが、そうした人は「景気がいいから仕事が見つかってありがたい」と思うのではなく、「以前より大幅に安い給料で昔の部下に命令されて、不愉快だ」としか思っていないかもしれません(笑)。

自分の老後が不安すぎて、好景気を感じられないのかも

「今の景気はどうですか」と聞かれても、「これから悪いことが起こりそうだ」と考えていると、今の景気がいいようには感じられず、「ダメです」と答えてしまう人も多いようです。

 

なかには、自分の老後が心配だから、景気のよさを実感できない、といった人もいるかもしれません。「景気が悪いから給料が低く、自分の老後の資金が貯められないのだ」というわけですね。本当は、平均寿命が延びているから老後に必要とされる金額が増えているだけかもしれないのですが(笑)。

景気は「気」から! 正しい認識で好景気を感じてみよう

人々の景気認識は、選挙のときの与党の支持率に影響するといわれていますが、経済の世界でも「景気は気から」ですから、人々の景気認識は重要です。

 

景気が悪いと思えば、企業は設備投資を手控えるでしょうから、本当に景気が悪くなるかもしれません。サラリーマンも勤務先の倒産やリストラを心配して財布の紐を締めるでしょうから、個人消費が減って本当に景気が悪くなるかもしれません。

 

本当は景気がいいのに、人々が「景気が悪い」と誤解しているために、本当に景気が悪くなってしまうとしたら、それは大変に残念なことです。

 

そうしたことが起きないよう、ぜひ人々に景気のよさを認識してほしいものです。
 

今回は、以上です。

 

 

塚崎 公義

久留米大学教授

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久留米大学商学部 教授

1981年東京大学法学部卒、日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。主に経済調査関連の仕事に従事したのち、2005年に退職して久留米大学へ。
著書に、『老後破産しないためのお金の教科書―年金・資産運用・相続の基礎知識』『初心者のための経済指標の見方・読み方 景気の先を読む力が身につく』(以上、東洋経済新報社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)、『退職金貧乏 定年後の「お金」の話』『なぜ、バブルは繰り返されるか?』(以上、祥伝社)、『経済暴論』『一番わかりやすい日本経済入門』(以上、河出書房新社)など多数。
趣味はFacebookとブログ。

著者紹介

連載塚崎公義教授の目からウロコの経済談義

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