出世には影響なく、取締役にもなれる!?「自己破産」の真実

スルガ銀行、レオパレス21……。名だたる企業が今ニュースに登場し、惨憺たる不動産業界の現状が露呈しています。しかし、これらは不動産業界において公表されていなかった氷山の一角に過ぎません。本連載では、全ての不動産投資家がこれらを対岸の火事として受け止めず、自らが融資地獄への一途を辿らぬよう、事件の発端を振り返りながら、万が一の際の救済方法を伝授します。※ 本連載は2019年4月、幻冬舎より発売予定の書籍『融資地獄「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ不動産投資ローンの罠と救済策 』の内容を一部抜粋・改編したものです

破産宣告は責められることのない、事務的な手続き

融資地獄に陥ったローン破綻者にとって、「自己破産したらどうなるのか」は気になるところでしょう。

 

誰かから怒られたり、非難されたり、文句を言われたり、犯罪者の如く扱われる……というネガティブなイメージを破産宣告にお持ちかもしれません。

 

しかし、破産宣告というのは、「目の前の破産申立人の方が現状の資産、収入、債務、支出を考えると、債務が到底払えない状態にありますね」ということを、公的な第三者が確認して、この確認した内容を表明する。それだけです。

 

なぜ、こんな手続きが存在するのかというと、ある経済主体(人間であったり、企業であったり)の「経済的な状態」というのは、第三者には全くわからないからです(本人すらよくわかっていないケースもあります)。

 

ある人が経済的に健全な状態か、それとも破綻状態なのか、というのは一見して判別できるものではありません。経済状態を確実に把握して明確化するには、公的機関の確認プロセスを経由しないと判断できないのです。

 

「この申立人は、第三者による確認調査をしたところ、たしかに経済的に立ち行かなくなったので債権を弁済できない状態にある」ことを公的に確認して宣言するという、非難や懲罰の要素もない単純な事務手続きが、今後の処遇を検討する上で必要になります。

 

そこで「破産宣告」という手続きを国家として整備したのです。

 

ですから破産宣告自体、非常に事務的な手続きとして行われますので、緊張する必要も恐れる必要もありません。

 

焼きゴテも、足につける鎖も、収容所での強制労働も、一切ありませんのでご安心を。

現代版「徳政令(免責)」で、経済的再スタートが可能

このように破産宣告自体にはあまり意味がないのですが、その後の「免責」には、非常に大きな意義と価値があります。

 

破産宣告の後、次に破産申立人の負っている債務をチャラにするか、チャラにしないか、という「徳政令発布」の手続きが行われますが、これが「免責」ないし「免責審尋」と言われるものです。

 

債権者平等原則に違反して身内への依怙贔屓弁済をしていないか、ギャンブルで作った借金はないか、財産を隠すなどの不正行為していないか、などのチェックを行い、やましいことがなければ「免責決定」。

 

すなわち徳政令が出され、晴れて債権が全額チャラとなり経済的再スタートが切れる、という仕組みです。

 

破産手続きが開始されると、基本的には残っているすべての財産は裁判所が指定した第三者の管理下に置かれた上で、これらはすべて破産手続費用に使われ、さらに残りがあれば債権者に平等に配当されることになります。

 

この破産申立人の財産を管理する「裁判所が指定した第三者」は、「財」産を「管」理する人、すなわち破産管財人と呼ばれます。

 

これは、ほぼ例外なく弁護士(破産申立をする弁護士とは別の弁護士)が就任します。

 

もちろん、この破産管財人の弁護士の先生にも活動するための報酬が必要です。これを事前に用意しないと、破産手続きは進められません。

 

これは「予納金」と呼ばれるもので、破産申立に際して破産手続きの規模感によって定められるお金として、納付が義務付けられるものです。

 

言ってみれば、破産管財人である弁護士先生のギャランティーと思ってもらえればいいでしょう。

 

そして破産者の財産は、破産管財人によって一旦財産プール(これを破産財団といいます)に入れられます。さらにお金以外の財産は片っ端から換金処理されていき、最終的に財産プールにはお金しかない、という状態になります。

 

とはいえタンスや服、冷蔵庫やテレビといった生活家財などは、そのまま持っていて差し支えありません。この種の生活家財は、破産管財人弁護士からみれば資産価値はなく、換金の手間の方がかかるからです。

 

十年近く乗り回した車であっても「ゴミ」になる可能性があるので、管財人によって財産管理されたからといって、生活にはほとんど影響ありません。

 

加えて、この財産プールに貯められたお金のほとんどは、債権者に分配されるはるか手前で、弁護士の追加ギャランティー(管財人報酬)になります。

 

このような事情もあり、破産管財人の報酬を払っても、そこから先は不足があって到底債権者に分配できない、というときは、「もうやっても意味がない。破産管財人の活動費用を考えたら無駄。よって破産手続きを廃止します」という宣言(破産廃止決定)が行われ、そこで強制終了です。

自己破産をするリスクやデメリットとは?

もちろん、破産宣告を受けた場合にデメリットが全くないわけではありません。

 

破産宣告を受けた場合のデメリットといえば、「一定の資格制限」も挙げられるでしょう。保険の営業マンや警備員などは免責されるまでの間、仕事ができません。

 

ちなみに弁護士の先生でも、現実に自己破産をした方はいます。弁護士が破産すると一旦は資格剥奪になりますが、そのあと免責復権を受けたら資格は復帰する形になり、業務停止と同じ扱いです。

 

つまり「資格剥奪」といっても、免許を取り直さなくてはならないわけではありません。

 

また、破産してしまうと「支払いがされなかった」ということで、ブラックリストに5〜10年の間は情報が載ります(銀行で10年、クレジットカードは5年)。その結果、クレジットカードが作れなくなったり、ローンが組めなくなります。

 

その他でいえば、自己破産したことは官報に掲載されます。官報とは国が発行する新聞のような役割をしており、政府や各省庁の決定事項が掲載されています。その官報において、自己破産や個人再生をした人の名前や住所が掲載されます。

 

官報は非常にマイナーな媒体であり、そのなかの破産者の欄を毎回隅々まで見ている人はまずいないかと思います(ちなみに最近は金融円滑化法の影響もあり、破産者の数自体減っています)。銀行に勤めていれば官報を見ている人が周りにいるかもしれませんが、通常の会社であれば、まず知られることはありません。

 

実際、破産をしたことを会社に知られずに働いている人は、意外といるものです。

 

もし会社に知られたとしても、破産を理由に解雇をするのは不当解雇です。また出世に関しては、破産者であっても取締役にはなれます。

 

一昔前まで破産者は、破産者というだけで欠格事由に該当(取締役になるには差し障りがある)する、つまり「犯罪者」と同様の扱いをされていたわけですが、新会社法から、欠格事由には該当しないものとされました。したがって、今や破産することそのものは、法的にも何ら問題はありません。

 

 

 

小島 拓

一般社団法人首都圏小規模住宅協会 代表理事

 

【執筆協力】
畑中 鐵丸

 

【法律監修】
弁護士法人畑中鐵丸法律事務所

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一般社団法人首都圏小規模住宅協会 代表理事

1983年、東京都生まれ、埼玉県出身。大学卒業後、不動産投資会社勤務を経て、2012年に独立し起業。2018年1月には業界の健全化を図る目的で、一般社団法人首都圏小規模住宅協会を発足。代表理事に就任。『「融資地獄」行き予防サロン』を設置して投資家の無料相談を受け付けるなど、あくまで公平・中立な立場から各方面に提言を行い、業界の健全化にむけて活動している。主な著書に『不動産会社が書けない「有名大家」の裏話』(幻冬舎メディアコンサルティング)がある。

■一般社団法人首都圏小規模住宅協会運営サイト「不動産投資塾
 (https://ft-school.com/

著者紹介

連載融資地獄「かぼちゃの馬車事件」に学ぶ不動産投資ローンの罠と救済策

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