離婚したのに!?「住宅ローン破綻」で元妻にも返済の請求が…

住宅ローン破綻にいたった家庭の事情は複雑で、さまざまな要素が絡んでいるため、お金の問題だけを解決しようとしてもうまくいきません。本記事では住宅ローン破綻にいたった家族を例にあげて、具体的に問題点をピックアップし、解決策を解説していきます。

「夫の浮気が原因」で離婚にいたったのだが…

夷川(えびすがわ)さん(36歳・男性)

職業:美容師

年収:400万円

備考:職場結婚した妻と暮らしていたが、自身の浮気が原因で離婚。職場を移り収入が減る中、養育費などの負担が重く、ローン破綻にいたった。

 

≪夷川さんの元妻(38歳・女性)≫

職業:美容師

年収:400万円

備考:父親の死後、独居することになった母親を心配して、母親宅の近所にマンションを購入した。その後、夫の浮気が発覚し離婚にいたったが、連帯債務者になっていたため、元夫のローン破綻後、債務を背負うことに。

 

≪物件とローンの詳細≫

住宅のタイプ:中古マンション

購入価額:3200万円

うち住宅ローン:2800万円(金利1.0% 返済期間30年)

毎月の返済額:9万円

備考:夷川さんだけの収入ではローンを組めなかったため、夫婦の共同名義を選択。妻を連帯債務者とすることで、ローンを組むことができた。

 

賃貸住宅に住んでいた夷川さん夫婦が新居の購入を検討するようになったのは、妻の父親の死がきっかけでした。独居するようになった妻の母親を心配した夫婦は、近居できる住まいを探す中で、家賃よりも小さな負担で家を購入できることに気づいたのです。

 

そこで中古のマンションを探したところ、気に入った物件が見つかったため、ローンを組んで購入することにしました。物件価格は3200万円でしたが、妻の父親から相続したお金を頭金として400万円を支払ったので、銀行からの借入は2800万円におさまりました。返済期間30年のローンとしたので、月額の支払いは9万円となりました。

 

当時居住していた賃貸住宅の家賃は12万円もしていたので、住居費の負担を抑えて、きれいで広い家に住めるようになったと夫婦とも大喜びでした。

 

ただローンを組むにあたって、夷川さんだけの収入では審査を通しにくいということだったので、住まいを共有名義にし、ローンについては美容師として働く妻も連帯債務者になりました。「夫婦で住むのだから問題ない」と考えたのです。

 

ところが新居で暮らすようになって間もなく、夷川さんは知り合った女性と浮気をするようになりました。

 

「妻の母親がひんぱんに訪れる家では落ち着くことができず、疎外感を持つようになったせいかもしれません」。当時を振り返って夷川さんはそう語りました。

 

浮気の事実はすぐに妻の知るところとなり、激怒した彼女は一人娘を連れて家を出て行きました。夷川さんは深く悔やみ、何度も謝罪しましたが、結局夫を受け入れられないという妻の気持ちは変わらず、離婚することになりました。

 

美容師として妻と同じ店で働いていた夷川さんは離婚後、職場を去り、新たに配送の仕事に就きました。資格を活かして働いていたころとは異なり、収入は大きく減少しました。手取りは18万円程度に減ってしまい、その中から養育費や慰謝料、住宅ローンを支払うと、5万円程度しか残りません。到底生活が成り立たず、夷川さんはローンを滞納するようになってしまいました。

「なんとか妻に迷惑がかかることだけは防ぎたい」

滞納が3カ月を過ぎると、金融機関からは代位弁済や一括弁済請求の通知が届くようになります。夷川さんがあわてて銀行に確認をとったところ、「一括弁済できないのなら競売になる」というのが担当者の返答でした。

 

さらには別れた元妻にも請求が回るといわれ、初めてことの重大性に気づいた夷川さんは私の事務所にやってきました。

 

「なんとか妻に迷惑がかかることだけは防ぎたいんです」

 

夷川さんがもっとも気にかけたのは娘と2人で暮らす元妻の生活でした。

 

けれども連帯債務者になっている以上、元妻に請求が回るのは避けられません。債務をできるだけ圧縮するため、早急に自宅を任意売却するのが最良の解決策です。

 

私はそうアドバイスしました。ただし自宅を売却するためには連帯債務者である元妻の同意が必要です。夷川さんから依頼を受けて私は彼の元妻とも面談し、事情を伝えました。

 

当初、彼女は破綻したローンの返済義務が自分にあるということが信じられないようでした。

 

「銀行にも確認させてください」というので、金融機関の担当者から正確な事情説明を受けるようすすめました。

 

「離婚したのに、請求されるのはおかしいでしょう」

 

彼女はそう銀行の担当者を問い詰めました。

 

銀行側の答えは「離婚は夫婦間の都合であり、債務とは一切関係ありません。連帯債務が離婚によって解消されることはありません」というものでした。

ローンを組んで家を購入することを安易に考えていた…

このケースではもちろん銀行側の言い分に理があります。銀行は返済の確実性を増すために夷川さんの元妻を連帯債務者に設定し、お互い合意の上で契約を結んだのです。夫婦の都合で外すことが認められたら、連帯債務は何の保証にもなりません。

 

最終的には夷川さんの元妻もそのことを理解し、納得しました。その上で、債務を最小限にするための任意売却に同意してもらえたため、私はすぐ銀行との交渉に入りました。銀行側も競売申立の前に債務者が任意売却の意向を示したことを好感し、猶予期間を認めてくれました。銀行が競売申立を待ってくれたので、私としても余裕を持って販売活動に当たることができたのです。

 

その結果、マンションは2500万円で売却でき、元夫婦が背負う残債は200万円あまりに軽減されました。

 

ただしそれでもなお、夷川さん本人は自己破産を申請することになりました。離婚後は生活を維持するため消費者金融などから借金を重ねており、返済の目処が立たなかったためです。

 

一方、彼の元妻は月々1万円という少額ながら、返済を続けることを選びました。

 

「恥ずかしながら、離婚後は連帯債務者であることを完全に忘れていました。ローンを組んで家を購入することを安易に考えていた自分にも、今回の破綻について責任があると思っています」

 

決済終了後、彼女はそう語ってくれました。家を購入したほうが賃貸より安くすむのでお得、というのはものごとの表面しか見ない評価です。そのお得感の裏側には住宅ローンの支払いを継続しなければいけないというリスクが隠れていることを忘れてはなりません。

共有名義は変えられるが、連帯債務は外せない

共働きの夫婦では2人の収入を合わせて住宅ローンを組むことから、購入した住まいを共有名義とし、ローンも連帯債務とするケースがよく見られます。末長く仲良く暮らせるのであれば問題ないのですが、離婚する場合には大きなリスクを抱えることとなります。

 

離婚に際して、「他人になるので共有名義も連帯債務も解消したい」と考える人は少なくありません。たしかにそれができれば連帯債務から外れた人のリスクは解消しますが、実現するのは非常に困難です。

 

共有名義と連帯債務については分けて考える必要があります。名義の登記を変更するのはあくまで法律上は自由です。連帯債務については、連帯債務者が減ると債権回収のリスクが高まるため、契約の解除には応じてくれません。一度連帯債務者になると、基本的にはローンを完済するまでは、外れられないことをしっかり認識しておく必要があります。

離婚に伴って任意売却をすることで関係を清算する

日本では近年、3組に1組の夫婦が離婚する時代となっており、夷川さんのようなケースが急増しています。私のところにやってくる相談者の約3割は離婚を原因とする任意売却の依頼です。

 

離婚を決意する年齢層でもっとも多いのは30〜40代です。マイホームの購入層は大半が30代以上なので、家を買って10年もたたないうちに離婚する夫婦が多いということになります。

 

住まいを購入して年程度では、ローン残債はほとんど減っていません。一方、新築の住まいは誰かが住んだ瞬間に中古住宅となるため、購入直後から大きく価値が下落します。そのため離婚が多い年代では、大半が残債が住まいの価値を上回るオーバーローン状態なのです。

 

家族で暮らすことを前提に購入した住まいですから、離婚するのであれば、保有していても仕方がありません。売却してやり直すことが夫・妻双方にとって望ましい場合が多いのですが、オーバーローンの状態では売りたくても売ることができません。そのため通常は二つの選択肢のいずれかを選ぶことになります。

 

① 残債を支払い、抵当権を外してもらって物件を通常売却する

② ローンを支払い続ける

 

よほどの資産がある人以外、①を選択することはできません。したがってほとんどの場合、夫婦のいずれかが単独でローンを支払い続けることになるのですが、夷川さんのように夫婦の収入ありきでローンを組んでいた場合には、経済的に非常に厳しい状態に陥ります。しばらくは生活を切り詰め、貯金を切り崩したり、親兄弟などから借金を重ねたりしてしのげるかもしれませんが、いずれは破綻してしまうケースが多いのです。

 

経済的な問題だけでなく、心理的な問題を解決する意味でも、「金融機関と交渉を行い、任意売却で自宅を手放す」という第三の選択肢を早めに検討することが、もっとも賢明な婚姻関係の締めくくり方だと思われます。

離婚後に生じる問題を予防するために公正証書を

夷川さんの元妻は連帯債務についてすっかり忘れていたため、思わぬ債務を背負うことになってしまいましたが、そもそもこの問題を予防するのは非常に困難です。連帯債務は銀行と個人との契約であり、夫婦関係が破綻しても継続されます。銀行と契約を解除する方法はありません。

 

したがってこの問題を予防するためには、離婚する際、夫である夷川さんと「ローン返済不能になった場合はどうするのか」ということについて、取り決めを行っておく必要があります。「ローン返済不能に陥った場合には親(あるいは兄弟姉妹)に支払ってもらう」などの対応を決め、夫の親族に保証人になってもらうのです。さらにはその取り決めを公正証書として残しておけば、しっかりとした拘束力が生まれ、万一夫がローン返済に行き詰まった場合にも、妻に返済の負担が及ぶのを防ぐことができます。

 

公正証書は公証人に依頼して作成する文書で、法的拘束力が強い上、公証人役場で保管してもらえるため紛失のリスクがありません。

 

 

矢田 倫基

烏丸リアルマネジメント株式会社

代表取締役

 

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烏丸リアルマネジメント株式会社 代表取締役

1974年生まれ。大阪府出身。
大学を卒業後、大手ゼネコンで技術者として従事。その後、不動産コンサルティング会社に転向し、実績が認められ代表取締役に就任。そこでの経験を生かし、日本で初となる法律業務も扱う任意売却専門会社「烏丸リアルマネジメント」を設立し、現在に至る。金融機関や士業者からの信頼も厚く、任意売却の専門家として各地で講師も務める。多くのローン困窮者を救ってきた面談は「心のカウンセリング」と呼ばれ、関西圏だけでなく全国からも相談者が後を絶たない。
任意売却コンサルタント、宅地建物取引士、日本アドラー心理学会会員。

著者紹介

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