東京・曳舟の木造住宅を稼働率7割超の旅館にリノベした事例

ここ5年で3倍もの伸びを見せている訪日外国人観光客数ですが、インバウンド需要が盛り上がる一方で、宿泊施設の不足が深刻な問題となっています。このような状況を受け、日本各地では大手不動産会社・建設会社による積極的な宿泊施設の開発が進んでいますが、個人投資家もこのマーケットに大いに注目し、参入しています。本連載は、外国人宿泊客に人気の高い古民家を再生した旅館づくりのポイントを「一棟貸切旅館」のプロデュースに多数の実績をもつ著者がわかりやすく解説します。

「一棟貸切」にすることで、ホテルと差別化

インバウンド需要が高まる日本では、訪日外国人観光客に向けた宿泊施設の建設がハイペースで進んでいます。牽引するのは大手不動産会社・建設会社ですが、この市場にチャンスを見出した個人投資家の皆さんも、続々と参入しています。

 

今回は、京都・東京を中心に「一棟貸切旅館」をプロデュースしてきた弊社の事例のひとつとして、東京・曳舟の木造住宅をリノベーションし、わずか半年でホテルとして開業後、すでに順調な滑り出しを見せているゲストハウスについてご紹介したいと思います。

 

2018年12月にオープンした「華〜HANA〜」。ここはもともと築60年の古い木造家屋でした。オープンしてまだ3ヵ月程度ですが、稼働率7~8割と、予約の埋まり具合も順調で、宿泊者のレビューも非常に高評価です。

 

この物件は、スカイツリーや浅草といった観光資源に近く、不動産取得コストも低いことから、一棟貸切旅館として高い収益性が見込めると判断しました。じつは、弊社が立地と同等かそれ以上に重視しているものに、建築物の面積があります。物件選定の条件として、4人以上泊まれる面積があるかどうかを最重視します。なぜなら、家族3世代や友人同士など、大人数での利用を想定しているからです。

 

ホテルの多くは、1部屋あたり2〜3人程度が定員となり、4人以上では別々の部屋に寝泊まりすることとなります。一方、一棟貸切旅館の場合、ひとつの建物のなかで大勢が過ごすことができるのが魅力であり、そこでホテルとの差別化ができるのです。

 

では、この曳舟の物件を例に取り上げながら、古民家再生の具体的な内容をご紹介していきましょう。

プロの手で「レトロ感」を活かし、「生活感」を排除

築60年の木造建物だけあり、外観は古びていたものの、今では滅多に見られなくなった鉄製のサッシ(写真1、外観写真2階部分)が残っているなど、レトロな趣がありました。

 

[写真1]建物の外観:ビフォー

 

AFTER

 

サッシ部分はそのまま残すことにし、外壁は「和」をイメージする、白と黒の2トーンカラーに塗り替えました。1階の雨戸はそのままだと生活感が出てしまうため、木製の格子を取り付け、宿であることがわかるように玄関に暖簾と照明を設置しました(写真2)。

 

[写真2]建物の外観:アフター

AFTER

 

照明は、夜になるとぼんやりと辺りを照らしだす提灯のような優しい灯りにしています。費用を抑えるため、大きな改修は行っていませんが、外壁の色を塗り替えるだけでもイメージをガラッと変えることができます。

 

暖簾と照明に入っているロゴは、かつて曳舟の象徴であった「曳舟川」と船をモチーフにしたデザインをご提案し、採用いただきました(写真3)。

 

[写真3]ロゴデザイン

 

1階は、2つの和室が壁と引き戸で仕切られていましたが(写真4)、それらを取り払い、クローゼットも撤去して、奥行きのある広々とした空間に生まれ変わりました。玄関を入ってすぐの和室は、畳で家族団らんができるスタイルに、奥のフローリング部分は、椅子に座って食事ができるダイニングスタイルにしています(写真5)。

 

[写真4]1階部分:ビフォー

BEFORE

 

[写真5]1階部分:アフター

AFTER

 

和と洋、両方のスタイルを取り入れることで、日本文化に慣れない海外観光客の方にとっても、和の文化を感じつつ、ストレスなく過ごせる空間になっています。

 

玄関部分の段差はあえてそのまま残し、「土間」的な空間にすることで、キャリーケースなどの大きな荷物を出し入れしやすく、車椅子の方でも入りやすいつくりになっています。「土間」は現在の日本の住宅ではあまり見られなくなってしまいましたが、昔はそこに腰掛けて近所の人たちと話をしたり、ちょっとした作業を行ったりと、外と内をゆるやかにつなぐための空間でした。近年この「土間」の魅力が見直されてきていますが、海外の方に「和」の文化を感じてもらうという意味でも、「土間」の存在にはこだわりました。

ベッド・布団の両方を取り入れ、くつろげる空間に

古めかしかった2階は(写真6)、寝室としてベッドを3つ、敷布団を3つ敷ける空間をつくりました(写真7)。1階同様「和」と「洋」の両方を取り入れることで、6人が好きなスタイルでゆっくりと眠ることができるようにという意図があります。

 

[写真6]2階部分:ビフォー

BEFORE

 

[写真7]2階部分:アフター

AFTER

 

柱がむき出しになった「真壁(しんかべ)」はそのまま残しています。「真壁」とは、古くから日本の建築に用いられてきた壁のつくりで、柱や梁が表面に見えている壁のことをいいます。一方、大壁(おおかべ)は、柱や梁がパネルなどで覆い隠されて表面に見えないフラットな壁のことをいい、現在ほとんどの住宅では大壁が主流となっています。真壁の良さは、木のぬくもりが感じられることと、壁や柱が呼吸することで室内の湿度調節の役割を果たしてくれることです。

 

今回、1階は大壁、2階は真壁にして、「今風の和」と「昔風の和」の両方を演出しました。1階で使われていた木の引き戸もそのまま2階に持ってきて、再利用しています。柱も引き戸も古びて木の色が濃くなっていたため、脱色して優しい色合いを出し、全体になじむテイストにしました。

 

特徴的な2階の丸い窓を残すことで、建物の持っているオリジナリティを空間の中に生かしました。「既存のものを活かす」と言葉で言うのは簡単ですが、実際には難しい部分もあります。というのは、古い木材は経年劣化により多少斜めに曲がっていたりするため、真っ直ぐな新しい木材と組み合わせるためには木を削るなど調整の必要が生じます。今回、柱や引き戸など使えるものは極力残す方針にしたので、大工さんたちは苦労をしたと思います。

吹き抜けは「子どもの声が届いて安心」と宿泊客に好評

2階部分で特にこだわったのが「吹き抜け」です。元々はなかった「吹き抜け」をつくることで、床面積は狭くなってしまいましたが、1階と2階で別々に過ごしていてもお互いの気配を感じられるというメリットが生まれました。この吹き抜けは宿泊者の方にとても好評で、「子どもが上の階で遊んでいても、声が聞こえるので安心できて良かった」などのお声をいただいています。

 

既存のものを活かしたり、新しい空間を演出したりできるのが、リノベーションの奥深さであり、良さでもあります。完全に一新してしまうのではなく、建物がもつ個性を残すことで、世界にたった一つの旅館をつくることができます。

対話を通じ、オーナーに旅館づくりを楽しんでもらう

宿づくりにおいて最も大切なのは、オーナーさんとの対話です。基本的には弊社でプランニングを行い、オーナーさんに提案するというスタイルで進めていきますが、オーナーさんの意向はできる限り取り入れるようにしています。たくさん対話を重ねることで、オーナーさんにとっても旅館づくりの過程を楽しんでいただくことができますし、宿への愛着を持っていただくこともできます。

 

投資的観点でも、賃貸投資の実質利回りが3~5%と言われるのに対し、中・大型ホテルでは5~6%、一棟貸切旅館は6~9%になっており、現在、宿泊施設投資は非常にホットな事業であるといえます。

 

日本各地で問題になっている空き家ですが、放置してしまえば、取り壊し、ゴミとして廃棄するしかありません。しかし、プロの手でリノベーションを行えば「収益を生み出す物件」へと蘇らせることが可能です。このような取り組みは、社会的にも非常に意義の高いものであると考えています。

 

 

浅見清夏

ハウスバード株式会社 代表取締役

 

鈴木結人

マーケティングチームリーダー

 

竹内康浩

建築デザインチームマネージャー

 

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ハウスバード株式会社 代表取締役社長

●青山学院大学 卒(在学中、上海・復旦大学に留学)
●アクセンチュア(株)戦略コンサルティング本部勤務
●中国・上海にて、幼児教育事業 レインボーバード幼児教室を起業後、ヤマトキャピタルパートナーズに売却
●政府系VC・産業革新機構にて投資サイドで勤務

著者紹介

ハウスバード株式会社 マーケティングチーム リーダー

早稲田大学卒
ハウスバード株式会社でのインターンシップを経て、新卒第1期生として同社に参画。
近隣住民対応や運営対応を経て、現在マーケティングチームのリーダーに就任。

著者紹介

ハウスバード株式会社 建築デザインチーム マネージャー

日本工業大学建築学科修士号。
株式会社アーキディアックに入社し、公共施設の設計・施工管理に従事。
2017年、ハウスバードへ建築デザインチーム マネージャーとして参画。

著者紹介

連載木造住宅をレトロモダンな「一棟貸切旅館」に…古民家再生投資のノウハウ

  • 【第1回】 東京・曳舟の木造住宅を稼働率7割超の旅館にリノベした事例

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