交通事故裁判…頭を強打、記憶があいまいな「被害者」の悲劇

本記事では、信号のある交差点でのオートバイと自動車の衝突事故の事例を基に、交通事故裁判の問題点を具体的に明らかにしていく。

被害者は事故で頭を強打し、記憶があいまいなのだが…

交差点での右折に、バイクや自転車が巻き込まれるというケースは多いが、次の事例も右折自動車と直進バイクのケースである。加害者と被害者の言い分が食い違った結果どうなったのかという実例である。

 

〈事例〉

 

信号のある交差点で、直進してきたオートバイと右折する自動車が衝突事故を起こした。当初から、オートバイ運転者のGさん(30歳・男性)は青信号だったので直進していたところ、右折乗用車が衝突してきたと主張していた。

 

このケースでは、青信号で直進してきたオートバイに気づかなかった乗用車が、確認を怠ったまま右折を開始し、オートバイと衝突。乗用車の運転者の不注意による、ありがちな事故と思われた。

 

乗用車の運転者は、「交差点の中で右折待機していたところ、正面の信号が青信号から黄色に変わり、さらに赤信号に変わってから右折を開始した。すると直進してきたオートバイにぶつかった」と主張していたが、右折車両がいるのをわかっていて、しかも信号が赤であるのに直進するオートバイがあるとしたら、それは自殺行為である。Gさんは通勤途中であり、いつもの通勤経路であることからも、常識で考えて信号は青であり、右折車両の方がオートバイを見落としていたと考えるのが自然な状況だ。

 

そういう判断で裁判に臨んだのである。おそらくこの状況を説明し、被害者の尋問を行えば、裁判所もこちらの主張を認めてくれると考えたのであるが、少し甘かったようだ。被害者は、事故によってアスファルトに投げ出されたりするわけだから、頭部の打撲やその他のショックなどによって記憶があいまいになっている場合も多い。すると、裁判所での尋問はなかなか厳しく細かい内容のため、被害者の証言がどうしても揺らいだりするものなのである。

 

例えば、被害者の前にいた車のことなどを訊かれるが、憶えているわけがない。

 

[図表]

 

こうなると、Gさんの証言は信用できないというレッテルを貼られてしまい、記憶のはっきりしている加害者の意見を頼りにしてしまいがちになる。

 

また決着までに3年半かかったことも災いしている。一般の人々でも、3年半も前の記憶などどんどん風化していくのは当たり前である。しかもGさんは、当初から頭を打って記憶が不鮮明なのである。そこで3年半も経過すると、細かい状況を忘れてしまってもおかしくない。

「主張にブレがない」と加害者の証言が信用された

結局この争いでは被害者は信号が青であったと主張し、加害者は赤であると主張して、真っ向から対立したのである。いろいろなやり取りがあった結果、結局裁判所が信用したのは加害者側の主張であった。主張にブレがないということで加害者の証言に重きを置いたのだろうが、状況を常識的に考えれば、加害者の主張に無理があることもわかるはずである。

 

結局、この一連の争いではGさんの過失割合は80%と大きく逆転し、加害者側の車両破損とレッカー代に対する80%相当の額、17万2800円とそれに対する遅延損害金の支払いを要求されたのである。

 

交通事故においては頭を強打したりして被害者の記憶があいまいだということはよくあるのである。多少の主張のブレが生じることもあるのだが、裁判所がそのようなことを考慮せず、加害者の主張だけを信用するのはフェアとはいえないのではないだろうか。

 

 

谷 清司

弁護士法人サリュ 前代表/弁護士

 

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弁護士法人サリュ 前代表/弁護士

昭和40年、大阪市生まれ。府立天王寺高校、京都大学法学部卒業。平成9年、大阪で弁護士登録。当時問題となっていた弁護士偏在解決の先駆けとして、平成10年より弁護士過疎地であった山口県萩市に赴任、独立開業。平成16年、弁護士法人サリュ設立。平成27年、法律事務所を全国7カ所に構え、大阪にて執務する。平成20年より同志社大学法科大学院講師。

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ブラック・トライアングル[改訂版] 温存された大手損保、闇の構造

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谷 清司

幻冬舎メディアコンサルティング

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