大人が意図的にパターンを変えてあげる
発達障害による問題行動が起こったとき、それをやめさせようとして行きづまってしまうことがあります。言い聞かせたり、叱ったり、抑え込もうとしたり、やればやるほど問題行動が増えていくように感じることもありますね。
基本的な考え方は、「不適切な行動」の代わりとなる「適切な行動」の成功体験を重ね、スキルの獲得を目指していくことです。すぐにできることとして、視点を切り替え、パターンをくずすことを考えてみましょう。
発達障害の特性として、パターンにはまってしまうと、なかなかそこから抜け出せないという面があります。そのため、大人が意図的にパターンを変えてあげましょう。環境や大人の声かけを少し変えるだけでも、パターンをくずすことができます。そうすると、いつもと同じ行動をしなくなることもあるのです。
問題行動によって、一番困っているのは子ども自身かもしれません。大人がサポートできることとして、頭に置いておくべき考え方です。
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前述した「子どもの行動の変化を待つ」というのは、適切と思われる行動がなかなかとれず、子ども自身が葛藤しているときの対応です。「約束が果たせなかったら〇〇(楽しみなこと)ができない」という対応は、罰の意味合いを持ってしまうので、こじれてしまった子どもの行動への対処としては適しません。しかし、ここで注意しなければならないのが、感覚刺激としての強化が含まれていないか、という点です。
たとえば、感情が高じた結果起こる、壁に頭を打つ(自傷)、人をたたく(他害)、あるいはものを投げるなどの行動のすべてに感覚刺激という側面があります。つまり、周りが反応しなくても、その行為自体に感覚的な快感が生じてしまい、繰り返すことにつながってしまうのです。
ですから、言葉で注意はせずに、すぐに制止して落ち着くのを待つ必要があります。行動には、それ自体が感覚を刺激する面が多くあることを知っておきましょう。
子どもとの「お約束」は慎重に…
子どもが問題行動を起こすようになったとき、ついつい使ってしまいがちなのが、子どもと「お約束」をして行動を調整しようとすることです。
たとえば、「机に乗らないお約束」や「最後までがんばるお約束」ですが、この「お約束」は非常に曲者です。それは、本人が納得した約束でないことがしばしばあるからです。「お約束」をしたのに守れなかった、ということが繰り返されると、それはパターン化した行動になっていきます。つまり、「約束をする→それを破る」という図式ができあがってしまうのです。
そうすると、「約束をしたのにどうして守らないのか?」と叱ったり落胆したり、さらにもっと厳しくする必要があるのではないかと考えたり、悪循環に陥ります。「できなかった」という負のセルフイメージを子どもに与えてしまうことにもなります。
約束はお互いが納得してするものですので、幼い子どもには難しいことが多いです。発達障害の子どもであれば、それはなおさらでしょう。慎重に考えることが必要です。
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子どもに「これができるようになってほしい」と願うとき、大人はそのターゲットとする課題を「集中的に訓練したほうが効果的だ」と考えがちです。それは、一面としては真実であり、繰り返し試行することで、ひとつずつスキルを身に付ける方法はあります。
しかし、幼児期の発達においては、日常のなかで様々なことを見聞きし、模倣を繰り返し、大人が注目していないうちに、あるスキルを「いつの間にか身に付けていた」ということが多くあります。障害による偏りのため、自然にスキルを身に付けることが難しい子どもでも、意識的に刺激を強化して届ける方法によって、「いつの間にかできる」発達を目指すことは可能です。
私たちが行う療育では、様々な課題をテンポよく行います。ことばの刺激であったり、巧緻性のための課題であったり、見る、聞くスキルを高める取り組みであったり、歌やカードやおもちゃが魔法のように先生の手から展開されていくのです。
先生は、子どもの反応を逃さず観察しながら、子どもにいま必要なのはインプットとしての刺激なのか、アウトプットする準備ができているのか、反応に合わせて課題を行います。幼児期に最適な働きかけは、「できないことを訓練」することではなく、適切なサポートによる「できた」の積み重ねだと考えているからです。
「楽しい!」「できた!」を繰り返しながら、「いま、できるようにならなければ」とストレスをかけられることなく、子どもたちが「いつの間にか」できるようになっていくのを見守ることも「支援」なのです。
株式会社コペル 有元 真紀