ADHDやASDなどの発達障がいの子どもたちは、世界中で様々な教育を施されています。その効果は千差万別であるため、子どもに合った最適な教育法を見つけることが大切です。本記事では、「フラッシュカード」が発達障がい児に与える好影響について解説します。

フラッシュカードで「ことばの発達」を促す

◆発達に偏りのある子どもの療育に効果的な「フラッシュカード」

 

筆者が運営している児童発達支援スクール「コペルプラス」の取り組みで行う「フラッシュカード」は、障害児教育の権威であるグレン・ドーマン博士が開発した「ビッツカード」を参考にしています。

 

ビッツカードは、ことばを添えて、絵や写真のカードを1枚1秒以下の高速で見せることにより、百科事典的な知識を教えるためのツールとして開発されました。

 

ビッツカードには、使う写真やカードのサイズに規定があるのですが、コペルプラスで行っている「フラッシュカード」はもっと自由に、子どもたちがおもしろそう!と目を輝かせてくれる素材を、バリエーション豊かにそろえています。

 

コペルプラスでは、「フラッシュカード」を非常に重要な取り組みだと考えていますが、それには以下の理由があります。

 

●事実を事実としてシンプルに教えられる

 

子どもは理屈でなく事実を学びます。

 

それは「りんごは赤くて丸いよ。食べるとおいしいよ」と説明するよりも、りんごそのものを見せて「りんご」と教えるほうが適しているということです。

 

もちろん、りんごの匂いを嗅ぎ、味を楽しみ、木になったりんごを見てわくわくする、といった経験は非常に大切です。

 

しかしそれは、「フラッシュカード」を見たからといって阻害されるものではなく、むしろ「りんご」を知っているからこそ、豊かになるとも言えるのではないでしょうか。

 

ことばは無数にあり、広い語彙は、ことばの発達において重要であると考えます。

 

●情報を明確に伝えることができる

 

日常生活において、子どもは多くのことばを耳にします。

 

そして、その場面にあるものを目にし、それを発する大人の口の動きを観察し、ことばを獲得していきます。

 

よく考えてみると、日常の雑多な環境の中で、自然とことばを獲得することは、まさに驚くべきスキルと言えます。

 

しかし、発達に偏りのある子どもたちは、雑多な環境から適切に情報を抽出することが難しく、ことばの発達がなかなか進まないことがあります。

 

「フラッシュカード」は、ことばをシンプルに伝えながら、その事物をシンプルに見せることで、視覚的、聴覚的な情報を明確に伝えることができます。

 

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◆1回5分「フラッシュカード」で楽しく学ぶ

 

コペルプラスで「フラッシュカード」を非常に重要な取り組みだと考えている理由は、他にもまだあります。

 

●高速スピードは幼児期に適した処理速度

 

幼児は思考力が未発達であり、論理的に考えて理解することは、得意ではありません。しかし、事実を高速でインプットし、処理することは非常に得意です。そして、インプットされた事実は、思考や様々な経験とつながり、蓄積されていきます。

 

コペルプラスの「フラッシュカード」は、すぐに記憶するために行っているのではありません。

 

事実を事実として、幼児期に適したスピードで大量にインプットすることで、それが蓄積され、日常の豊かな経験の中で、ことばとして表出されることを期待しているのです。

 

「フラッシュカード」を見せることにより、子どもが無気力になるのではないか、と心配される保護者の方もいらっしゃいますが、コペルプラスで行う「フラッシュカード」の時間は、1回の療育で5分程度であり、残りの45分は、豊かに指導員と関わることを重要と考えています。

 

しかし、たった5分ですが、その中には多くの事実があり、ことばがあります。

 

繰り返しますが、その場で記憶させ、言わせるために行っているのではありません。

 

子どもが、「フラッシュカード」で見たものを、ことばとして表出してくれるのであれば、それは副産物であると考えています。可能な限り楽しく、子どもがわくわくする取り組みとなるよう、カードの内容や見せ方に工夫を凝らしています。

 

ぜひ、多くの子どもたちに、「フラッシュカード」を楽しんでほしいと願っています。

瞳がキラキラと輝く「学べモード」を引き出す

◆学べモード~脳の発達のために~

 

“学べモード”とは、脳の基本的資質が形成される幼児期において、子どもが「おもしろそう!」「なんだろう、やってみたい!」と感じた時、自ら学ぼうとし、脳の発達を促進する状態をさします。

 

脳だけでなく、からだ全体が学ぶ体制になるため、目の瞳孔が30%開き、実際に瞳がキラキラと輝きます。

 

それは、たとえ発達に困難を抱えた子どもであっても、そうなのです。

 

療育という視点に立ったときにも、この“学べモード”は、非常に重要なポイントです。

 

いまできるようになってほしいこと、生活や学習の役にたつこと、そのようなことが、実際に成果として見えることは喜ばしいことです。

 

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しかし、目の前の子供が、“学べモード”にあるのかどうか、それはすぐには見えないけれど、子どもの脳の発達に大きな意味があるのです。

 

脳の基本的資質といえる“脳の配線”は幼児期に形成されます。

 

瞳が輝いていない状態、すなわち“学べモード”でないときには、脳も発達しようと配線を伸ばす状態になりません。

 

何かができるようになることは、子どもにとって喜びですから、それによって、瞳が輝くことは考えられます。

 

しかし、単純に、目の前の課題ができることを目標にするだけでは、脳の発達という視点から見ると、あまり意味がないこともあるのです。

 

「好きこそものの上手なれ」ということばがありますが、それは真実であり、脳が著しく発達する幼児期において、大切にしなければならない視点なのです。

 

 

株式会社コペル 有元 真紀

 

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    本連載は、株式会社コペルが運営するウェブサイト「コペルプラス」の記事を転載・再編集したものです。

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