ADHDやASDなどの発達障がいの子どもたちは、世界中で様々な教育を施されています。その効果は千差万別であるため、子どもに合った最適な教育法を見つけることが大切です。本記事では、全国50ヵ所で児童発達支援スクールを運営する大坪信之氏が、発達障がいの子を「ひとり遊び好き」と決めつけてはいけない理由を解説します。

コミュニケーション欲の向上が「ことばの発達」を促す

ことばの発達において、コミュニケーション意欲を高めることは、非常に重要なポイントです。

 

ことばを使用することができるから、コミュニケーションできるのではなく、コミュニケーション意欲の先にことばがある、と考えます。

 

ことばの前におこるコミュニケーション行動にはどんなものがあるでしょう。

 

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●アイコンタクト

 

いわゆる目が合う、ということです。

 

最初は焦点の合わなかった赤ちゃんが、次第に大人の顔をじっと見るようになり、大人から笑顔を返すことを繰り返すうちに、赤ちゃんは身近な人の顔を見分け、自ら笑顔を見せるようになります。

 

コミュニケーションの第一歩です。

 

●共同注意

 

指さしや目線を交わすことにより、他者とある対象を共有する行為です。

 

たとえば新しい何かを発見したとき。おもしろそうなものを見つけたとき。こわいものを見たとき。

 

最初は大人が指さした方を見る行為から始まり、自ら対象を指さして、相手に伝えようというコミュニケーション行動へつながっていきます。

 

●見返し行動

 

世界をひろげていく過程で、子どもは探索行動を繰り返していきます。

 

それに伴い、発見や喜びを表現しようと、身近な大人を見返す行動が多く見られるようになります。

 

それは明らかな感情の共有です。

 

自分の感情が揺れ動いたことを、他者に伝えようとしているわけです。

 

このような過程を経ながら、耳から取り入れたことばという音声、目で観察した口の形、相手の表情、そのような様々な情報を適切に処理し、子どもはことばを獲得していくのです。

 

出てくることばだけに気を取られるのではなく、ことば以前のコミュニケーションを豊かにすることに着目し、その方法を工夫していきましょう。

あきらめず、繰り返しによる「パターン遊び」を

子どもの自発的なコミュニケーション行動は、ことばを獲得する前に自然と見られるものです。

 

しかし発達障がいの子どもたちにおいては、環境からの刺激をうまく受け取ることができず、コミュニケーション意欲をうまく発揮できないことがあります。

 

それは、コミュニケーション意欲がないのではなく、まわりからの刺激が強いストレスであるために、適切なやり取りの機会を失っているだけなのではないでしょうか。

 

意欲がないように見えるのは、表面的な姿なのです。

 

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では、表面的には他者との関わりを拒むように見える子どもたちに、どうすれば自発的なやり取りを促すことができるのでしょうか。

 

それには、遊びの中に繰り返しのパターンをつくり、大人の行動への期待感を持たせることがポイントになります。

 

日常の場面で、気に入ったおもちゃで繰り返す遊ぶ姿を目にしますね。子どもは学習することが好きですから、気になるおもちゃを見つけると色々な方法で遊ぼうとします。

 

例えばボールであれば、最初は口に入れてみる、両手を使って持ち替える、次には放ってみたり、隠してみたり。そのようにして学習を重ねていきます。

 

そこに大人が介入することで、自分・もの・他者という三項関係を築き、それがコミュニケーション意欲ともつながっていきます。

 

しかし発達障がいの子どもたちは、遊んでいる場面に大人が介入することを嫌がり、自分のやり方で遊ぶことだけを好むように見えることがあります。そうすると大人は、この子はひとりで遊ぶのが好きなのだな、とあきらめてしまいます。

 

しかしそこであきらめず、コミュニケーション意欲を外へ向かわせるための方法が、繰り返しによるパターン遊びです。

 

例えば先述のボールを使った遊び。

 

繰り返し転がして遊んでいるところへ、ひょいっとボールをつかんで背中に隠し「あれ、ない」と声をかけてみます。

 

子どもはボールに注意を向けていますから、急にボールを取られてボールを探します。

 

そこですかさず「あ、あった」とボールを渡す。

 

しかし大人へは見向きもせず、また自分のやり方で遊びだすでしょう。

 

そこでまた同じようにボールを隠し、すぐに取り出して見せる。

 

このような行動を繰り返すうちに、最初は見向きもしなかった子どもが、次第に大人の行動にパターンを見出し、ついには大人がボールを隠すことを待つような様子さえ見せるようになります。

 

その時子どもの中には、ボールへの興味より大人の行動への期待感が増しているのではないでしょうか。まさしく他者と関わりたいという意欲の兆しです。

 

このような遊びを通じ、自ら関わろうとしないように見える子どもにも、他者とやり取りする喜びを体験させることができます。そして、他者と関わる喜びの体験を重ねることにより、コミュニケーションへの意欲を高めることができるのです。

 


株式会社コペル 有元 真紀

 

本連載は、株式会社コペルが運営するウェブサイト「コペルプラス」の記事を転載・再編集したものです。

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